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ラクじゃない世の中を、ラクに生きるために。

インターネットやSNS、AIの登場以降、社会の変容スピードが急速に高まっている。先の見通せない世の中に、不安や生きづらさを感じる人も多いのではないだろうか。

かつて「世界一幸せな国」として有名であったブータンも、SNSの台頭により他国と比較できるようになったことで、国民の幸福度が下がったと言われている。

ときに人間は、誰しもが「ラクに生きたい」と思う生き物だ。

生まれながらにして「怠けるように」プログラミングされている人間。それに抗って「ラクでなさそうな」ことをしてる人も、実は「ラクに生きたい」と思って行動している。

インド独立運動を指揮したマハトマ・ガンジーも、黒人解放運動のマーティン・ルーサー・キングも、つらく困難な道を選んだのは、未来の自分たちがラクに生きられるようになるために過ぎない。

僕自身もGaudiyを創業して6年、大変なこともたくさんあるが、別にハードシングスを経験したくて起業したわけじゃない。今の社会構造がしんどくて、それを変えることでただラクになりたかっただけだ。

そんな本能的にラクになりたい人間が、ラクじゃない世の中で、ラクに生きるには、どうすればよいのか。

今回のnoteでは、"Freedom" と "Liberty" という2つの自由、自由エネルギー原理、成人発達理論などをベースに、その問いに対する僕なりの考察をまとめてみたいと思う。

そもそもラクに生きるとはなにか

そもそも「ラクに生きる」とは、なんなのか。
僕なりの定義は「未来への不安がない、精神的に自由な生き方」だ。

人は往々にして、自分が「ラク」だと思っていた選択肢が、実は「ラクではなかった」ということが起こり得る。

特に陥りやすいのが「今のラク」と「未来のラク」の混同だ。

例えば雇用の流動性が高まっているなかで、"今" の自分はフリーランスをした方がラクかもしれないが、もし仮に、新しいスキルの獲得や苦手なことに向き合う機会に恵まれなければ、"未来" の自分はラクできなくなる可能性もある。

「精神的な自由」を得ようとしたはずなのに、なぜラクに生きられないのか。それを考える上で「自由」という言葉の解像度を上げたい。

日本語の「自由」にあたる単語が、英語では「Freedom(フリーダム)」と「Liberty(リバティ)」の2つあることはご存知だろうか?

この2つは、同じ「自由」でも、意味するものが異なっている。

引用:「freedom」と「liberty」の 違いとは?自由を表す英語表現、画像:弊社作成

具体的には、「Freedom」は「肉体的・精神的に制約を受けていない状態」を意味し、対する「Liberty」は、自由の女神(Statue of Liberty)のように「抑圧から解放されて手に入れた自由」を意味する。

先ほどのフリーランスを例に挙げてみると、「職場に影響を受けない制約のない働き方」という意味においては、Freedomに近い。しかし、将来的には、自由に仕事を選べなくなる可能性を孕み、「自由意志でやりたいことを選べないかもしれない」という意味では、Libertyを得られないと同義である。

先に結論を述べると、ラクに生きる(=未来の不安なく、精神的に自由である)ためには、能動的に勝ち取った自由、つまり「Liberty」こそが重要だと考えている。

最近耳にすることが増えた「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」もよい例だ。一生暮らせるほどの金銭的リターンを得てFIREした人は、自分の時間を制限なく使えてFreedomではある。でも、Freedomではあるが、「人生このままでいいのか」と未来に不安を覚える人も少なくない。

このように「ラクをしたい」と思ってした選択が、実は「ラクに生きられない」状況を作り出すこともある。

大事なのは、自らの意志で勝ち取った自由(Liberty)を得ること。そして時代も自分の価値観も急速に変化する現代社会においては、一度得た自由(Liberty)に固執せず、また新たな自由(Liberty)を得るために行動し続けること

それがラクに生きるためには必要だ。

人間は "推論" から逃れられない

とはいえ、「Libertyな自由」が大事だとわかっていても、自ら意思を持って実行に移すことはなかなかに難しい。

それは人間の「脳の仕組み」から考えて、当然のことでもある。なぜなら、人間は否応なく、推論を働かせる生き物だからだ。

例えば、こんなことを思ったことはないだろうか。

「前もうまくいかなかったし、今回もうまくいかないんじゃないか」
「これを発言したら、またチームの空気を乱すんじゃないか」

これらの思考もすべて、過去のデータに基づいて未来を予測する「推論」が原因だ。もちろんネガティブだけでなく「前にこれはできたから、次はもう少しチャレンジできそうだな」といったポジティブな推論もある。

この人間の「推論」を説明する学問が、「自由エネルギー原理」という脳の情報理論だ。ここでは詳細は割愛するが、簡単にいうと「生物の知覚や学習、行動は、自由エネルギーと呼ばれるコスト関数を最小化するように決まり、その結果、生物は外界に適応できる」という理論である。

図1:神経回路のダイナミクスとベイズ推論の等価性の概念図
図2:リバースエンジニアリングの概念図
(図1, 2の出典:理化学研究所「神経回路は潜在的な統計学者」

どういうことか。例えば、犬と飼い主とのやり取り(下図)がある。飼い主がドッグフードを用意する仕草をとると、犬は飼い主の状態(気持ち)を推論し、その期待値を脳内で表現する。さらに、将来期待される「自由エネルギーを最小化する行動」を能動的に推論・選択することで、「舌を出す」というドッグフードを得られる確率を最大化する行動をとっている。

図3:自由エネルギー原理の概念図(出典:理化学研究所「神経回路は潜在的な統計学者」

この原理から、人間の脳は、学習からなる統計データによって日々更新されていることがわかる。人間は1日に3万5,000回もの決断をすると言われており、その都度、意思決定にエネルギーを消耗するのを避けるのだ。

つまり、脳の仕組みからして推論をすることは避けられず、それがネガティブに働くとき、Liberty(自由)を得るための行動の選択をより難しくする

ラクに生きるにはどうすべきか

では、どうしたら未来に不安なく、精神的な自由(Liberty)を得て、ラクに生きることができるのか?

僕自身、まだまだ模索中ではあるが、これまでの経験や、書籍、文献を通じて学んだ「生き方のコツ」を少し共有したい。

a. 学習から自分の統計データを更新する

まずは、新しい情報をインプットして、新しいことにトライし、脳内の統計データをアップデートすることが大事だ。インプットは、自らの経験はもちろん、書籍、マンガ、映画など、自身にあった知覚情報でよい。

例えば僕だったら、サッカーのFC町田ゼルビア・黒田剛監督から組織論やチームづくりを学んだりするし、先日訪れた米テキサス州オースティン開催のイベント「SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)」では、それぞれの領域は違えど、志の熱量が似通った人たち同士の会話から学ぶことがあった。

そうすることで「AならばB」だけでなく「AならばC」という推論もできるようになり、「自分にもできるかもしれない」というポジティブな行動を起こすことにつながる。

また重要なのは、未来を見据え、今までとは違うことに挑戦することだ。

例えば、より良い環境を求めて転職を重ねてきた人は、一度じっくり今の環境を改善することにトライする。違和感を持ちながらも今の会社に長年在籍している人は、外部企業の話を聞いてみる。挑戦をするのがラクな人は、逆に挑戦を我慢する。その人にとっての「逆張りの経験」が大事だ。

なぜなら、今までの推論であれば選択する行動の "逆" をコントロールできるかが、その人を外的環境の攻撃から守ることにつながるからだ。結果としてこれが自由(Liberty)の獲得につながり、ラクに生きられるようになる。

b. 他者の価値観を認め、寄り添う

次に、他者の価値観を認め、寄り添うことが大事である。

なぜなら、人が集まる限りズレは生じ、多くの人はズレとともに生きているからだ。その環境において自由(Liberty)を獲得していくためには、相手が大切にしている価値観を知り、それを大切にして、寄り添う必要がある。

最近読んだ「利他・ケア・傷の倫理学 「私」を生き直すための哲学」という書籍から、これは「ケア」という概念なのだと学んだ。

本書における「ケア」の定義は、他者の大切にしてるものを共に大切にする営為全体のことであり、葛藤なき寄り添いだと述べられている。

善悪は、同じゲームにいるという前提でのみ通用するが、急速に変化する現代社会では、それぞれが同じゲームにいることは難しい。

誰かにとってのバフ(良いこと)は、違うゲームにいきる誰かにとってのデバフ(悪いこと)かもしれないという前提認識を持ち、多様な価値観を認めることが、人間社会をラクに生きる上で重要だ。

c. 人間としての成長に向き合う

ケアと同時に、自らの精神的な成長に向き合うことの重要性にも触れておきたい。

ロバート・キーガンが提唱した「成人発達理論」をご存じだろうか。これは「人は成人してからも知性や意識が発達し、生涯にわたって成長し続けられる」という理論で、いくつかの発達段階が定義されている。

出典:Momentor坂井風太さん講義資料
(一部引用させていただきましたが、正しく理解するためには講義をお勧めします)

「ラクに生きる」の定義を「未来に不安なく、精神的に自由な生き方」としたが、その状態になるには、Lv.4(相互発達段階)の「強くてしなやかなマインドセット」を持つことが大事だと考えている。

僕自身もまたLv.3(自己主導段階)とLv.4(相互発達段階)を彷徨っていると思うし、ある場面では自己主張が強く出てしまい、相手をLv.2(他者依存段階) に押し下げてしまうこともある。

Lv.4(相互発達段階)を目指す上では、先述した「ケア」の土台が必要だ。まずは相手の価値観を知り、意見をオープンに取り入れた上で、自分の軸を出すか否かをコントロールする。

それができるようになれば、ありたい未来に近づきやすく、不安な状態がなくなり、ラクに生きることにつながる

※成人発達理論については、ビル・トルバートの『行動探求』や宮台真司氏の『システムの社会理論』をともにインプットすると理解が深まる。

ラクに生きられる社会を、他者と共につくる

ここまでは「ラクに生きるために "個人" ができること」をお伝えした。
最後に、ラクに生きられる "社会" をつくるために、他者と共にできることについて考えてみたい。

前提として、本noteは「今の社会で生きるのはラクではない」という出発点から考察が始まっている。しかし、そもそも「ラクに生きられる社会」をつくることはできないのだろうか?

社会そのものを変えるのは、決して容易ではない。もっと言えば、他者を変えることすら難しい。だからこそ「自分が変われるところ」から始めることは大事であるし、そのやり方は先ほど述べた通りだ。

一方で、未来の不安なくラクに生きるためには、「そうありたい」と思う社会の実現を、仲間と共に目指すのが、実は一番いい

「戦争をなくしたい」
「人種差別をなくしたい」
「エネルギー問題をなくしたい」

これまでも人は、助け合い、協力し合いながら、この社会を発展させてきた。ときには間違ったこともしてきただろうが、この100年を振り返ると、社会は確実に良くなっている。だからこそ、「あってほしい社会」に多くの人が協力すれば、100年前と今を比べたときと同じく、未来もそのありたい方向性に進んでいくはずだ。

共感してもらえるかはわからないが、僕はワールドカップを観戦するとき、テレビで試合を観るよりも会場で応援する方が勝ったときに嬉しいし、会場で応援するよりもピッチにいて勝利した方がもっと嬉しいだろうなと思う。

僕が確信してるのは、あってほしい社会を「観戦者」ではなく「当事者」として目指した方が、絶対に楽しいということ。だから今のラクだけでなく、時間や労力を捧げてもいいと思えるような「ありたい未来」を見つけ、仲間とともにその実現を目指せる人が増えれば、世界はより幸せになるはずだと信じている。

僕がGaudiyを創業したのは、まさにそんな世界を作りたいと思ったからだ。Web3の技術が実現するトークンエコノミーによって、同じ志をもつ人々が集まり、頼り頼られて生きることで、ありたい社会を実現する。

「ファン国家」という好きや夢中で生きられる経済圏を実現し、国境を越えて同志を見つけ、人々がラクに生きられる世界を創っていきたい。

まとめ

改めて、このnoteで伝えたかった要旨をまとめる。

  • 人間はラクに生きたい生き物である。

  • ラクに生きるとは「未来への不安がなく、精神的に自由な状態」である。

  • ラクに生きるためには、自ら勝ち取る自由(Liberty)が大事だ。

  • Libertyに向けた行動を取るには、常に新しいことを学習し、他者の価値観を認め、自らの成人発達に向き合うことが大切だ。

  • ラクに生きられる社会をつくるには、「そうありたいと思う社会」の実現を、同じ志をもつ仲間と共に目指すこと。

少しでも多くの人が、「今のラク」ではなく「未来のラク」に向き合えるようになるとよいなと願っている。そして少しでも、生きやすくなれば嬉しい。

・・・

さいごに:Gaudiy6周年を迎えて

今、Gaudiyはどんな感じなのか

先日、Gaudiyは6周年を迎えました。マンションの一室で数名から始めたGaudiyは、現在、海外(US)を含めた4つの関連会社があり、社員は100名を超え、10ヶ国以上から集まるグローバルなチームになっています。

累計40億円の調達を行い、日本を代表する大手企業との強いパートナーシップを結ばせていただけるまでに事業も成長しています。

遡ること7年前、ただの「生意気なテックオタク」だった21歳の若者が、たまたまWeb3の世界に出会ってしまった。その時の衝撃は、今でも忘れられません。

最初は、その技術が実現する世界にワクワクと興奮を覚えていましたが、"まだ見ぬ理想の社会" と "今の社会" とのギャップに苦しむ、という変な状態に陥った僕は、いてもたってもいられず、2度目の起業を決意しました。

Web3やDAOのように、ビジョンに共感した市民の協力で今も建設されているサグラダ・ファミリアを設計したアントニ・ガウディ(Gaudi)に、DIY(do it yourself)を足して、「みんなで未来をつくっていく」という意思を込めた「Gaudiy」という社名をつけ、Gaudiyはスタートしました。

そこから順風満帆なわけもなく、2018年の仮想通貨の大暴落、難航する営業、仲間との衝突や別れなど、数々のハードシングスがありました。

極めつけはシリーズBの資金調達の時期。社内外の様々なハードシングスが重なり、3週間ほど強いプレッシャーの中で毎日2時間しか寝ていなかったら、心は大丈夫でも体にボロがきて肺に穴があくというw

それでもなんとか進め、すべての整理もつき、無事に35億円をベストな形で調達できた。そんな数々の困難を乗り越え、今のGaudiyがあります。

Gaudiyは今、未来に不安なく、精神的に自由なのか

残念ながら、今も最高にしんどいですw
これからもっとしんどくなることも、十分理解しています。

なぜなら懲りもせず、より大きな挑戦に挑もうとしているから。あの22歳の時に見えた未来、ビジョンは、まだ2%も実現できていません。

Gaudiyは今、次のステージに登るために、

  • US法人を設立し、日本のエンタメIPと本格的なグローバル展開

  • 国内外含む、事業モデルの確立とストレッチな数値目標

  • 大学機関と連携し、LLM、Web3などの先端技術の共同研究開発

  • 抜本的な金融OSのディスラプトに向けたWeb3金融事業への中期投資

  • 上記を実現するための組織拡大と組織改革

この5つを同時に走らせています。

一つひとつの実現難易度は高いですが、すべてはビジョンの実現のために、必要な選択だと思っています。

正直、今のGaudiyのままではうまくいくとは思っていません。数回の奇跡を、自分たちで手繰り寄せる必要がある。

でも、「絶対にいける」とも思っています。

なぜなら、今のGaudiyのままではダメなことも理解しているし、それを認識している仲間も、応援してくれるステークホルダーもいるから。

僕らが目指す世界は、「ファン国家」という、国や人種、年齢問わず、すべての人々が "好き" や "夢中" で生活できるような社会の実現です。それを阻害する「資本主義」や「歪んだ情報社会」を、Web3、LLM、エンタメの力を使って解決しようとしています。戦略の絵は、ほぼ完璧に描けています。

私たちはどう生きるか

先日、自分のたっての願いで、「ファン国家」の対極とも言える「北朝鮮」の実情をよく知る脱北者の川崎さんにインタビューさせていただきました

「それぞれの人がそれぞれの夢を見て、その実現のためにジタバタし続ける。それが人生ではないでしょうか。」

数々の力強い言葉をいただいた中でも、特に心に残った言葉です。

僕は、なにもせずに迎えてしまう未来が嫌で、未来を変えて僕自身がラクになりたいと思ってます。そのために今は「Liberty」を選んでいる。

不確実性が高すぎるこの社会で、なにが正解かなんて誰にもわかりません。でも、それを正解にするのは、今から先、未来をどう生きるか次第だということを、最近読んだ本から学びました。

ケアは私の現在と未来が原因となって、過去が結果になる。因果が逆なのです。僕らは、現在を懸命に生きることで、過去に介入することができる。

引用:利他・ケア・傷の倫理学 「私」を生き直すため

だからこそ愚直に、試して、失敗して、学んでを繰り返しながら、今、そして未来を、同じ志をもつ仲間と共に、懸命に生きるしかない。

それが「Liberty」であり、ラクに生きられる道なのだと思ってます。

社名の由来でもあり、昔から「一生完成しないもの」の比喩としてよく使われる「サグラダ・ファミリア」も、百年以上の年月を経て、ついにあと2年でできるそうで。

だから、いつ実現できるかもわからない「ファン国家」も、みんなの想いと協力があれば、本当に実現できる。そう思ってます😀

ただ、ガウディみたいに死後の完成でなく、僕は、生きてる間に実現できればなとw(まだギリ20代なので)

おわり。


そんなこんなで、無謀な未来を一緒に作ってくれる人、募集してます。

(OGP出典)

(出典:尾田栄一郎『ワンピース』41巻・第398話、集英社)

ラクに

(出典:尾田栄一郎『ワンピース』41巻・第398話、集英社)

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