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『シン・ゴジラ』に剣道部の先輩が出ていた

【雑記】

『シン・ゴジラ』を観にいったら、高校剣道部の先輩が出演していた。序盤でそこそこセリフもある役だった。おおー、懐かしい。

偏差値の低い都立にやっとひっかかり、さて部活、どうすっかな、体育に良い思い出はひとつもなく、運動部は論外、と敵視していたわたしは、鉄下駄でガラゴロガラゴロと歩く竹刀を担いだ剣道着姿の男を見た。二年生、剣道部の部長であった。その無骨な雰囲気、時代錯誤感に惹かれ、入部を決めた15歳の春。間違った、間違いだ、と後悔しつつ最初の稽古に参加。

運動部なんて蹴られる殴られる水ぶっかけられるもんだと思っていた。が、部員は少なく、男女一緒に練習するこじんまりとした剣道部。最初は先輩後輩関係なく全員で雑巾掛け。それから素振り。それから少しずつ、基本を教えられ、練習稽古。先輩たちは丁寧に教えてくれた。少しずつ楽しくなった。

そんなある日、突然部長の怒りを買った。

「いい加減にしろ! 俺と30分掛かり稽古だ。来い!」

掛かり稽古とは、ただひたすら攻撃を続ける。休んではならない。面! 面! 胴、お小手、と30分。水なんか飲ませてもらえない。部長にぶつかっていっては何度も床に叩きつけられ、もうだめだ、というとき、同輩、先輩全員が「がんばれ! もう少しだ、がんばれ!」と叫び始めた。面の向こうの部長も汗まみれ、目は真剣だ。部長だってクソ暑い冷房もない講堂で、しんどくないわけがない。がんばった。最後までヨレヨレの面を打ち続け、終わり! と声が上がったとき、床に倒れた。みんなが駆けよって、汗と涙でぐちゃぐちゃのわたしの面をはずし、男子の先輩が水とタオルを持ってきてくれた。部長はぶっきらぼうに「よくがんばったな」と一言。

運動部に堅固な偏見を持っていた自分が、30分の掛かり稽古をやり遂げた。これは、将来つらいことがあったとき、強い力になる、と目覚めた瞬間だった。青春だな、きっと。

その後真面目に稽古をして、女子の二段まで取得し、受験のため、三年になる前に退部した。

数十年の時が流れ、部長が小劇場の役者をやっていると聞いた。当時の同期の女子が、部長が舞台をやるよ、と誘ってくれて、3人で一緒に行った。終演後、先輩に差し入れを渡しながら話をした。懐かしい話で盛り上がった。先輩、わたし、あの30分の掛かり稽古、いまでもいい思い出なんです、成長しました。ありがとうございました、先輩は頭をかいて、こう言った。

「もなか、すまん、あれ、いじめだったんだ。あんとき俺、なんかいろいろイライラしててな。お前気に食わなかったからやっちゃったんだ」


運動部なんてろくなもんじゃねえよ。




でも、部長、テレビや映画で見るの、楽しみにしてるよ。このご時世、なんとかのりきってね。

#部活の思い出

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