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#455 会社員の「厚利少売」戦略。時間ではなく、価値にこだわれ!

木下斉さんのジブン株式会社ビジネススクール2月号のテーマは、「弱者のための厚利少売戦略」です。

自分が提供するサービスにおいても、自分という商品においても、「単価を下げて大量販売」という「薄利多売」的な発想ではなく、「単価を上げて少量を販売する」という戦略を取っていくべし、との考え方です。

これ、自分が提供中の探究支援サービスでもよく考えないといけないところだし、自分自身のキャリア戦略そのものでも適用すべき考え方ですね。

色々と適用領域は考えられますが、今日は会社員として働く自分が意識している「厚利少売」戦略について、まとめてみようと思います。

「厚利少売」戦略のポイント

「薄利多売」戦略と「厚利少売」戦略の大きな違いは、次の通りです。

人口増加局面で、作れば作れるほど売れる時代においては、規模の経済をはたらかせる戦略が優位となります。大量に売れる前提で大量に作り、ロット生産で1製品あたり製造コストを下げ、価格競争に持ち込み強者一強の形を取ることが勝ち筋でした。

しかし、日本のように成熟フェーズに入り、作れば作るほど売れる時代はとうに終わった。ましてや、そもそも大量生産・大量販売という強者の戦略が取れない小規模事業者や個人にとっては、いかに少量生産・少量販売でも持続的な価値提供と生活していくうえでの利益幅を最大化できるか、が非常に大きなポイントになってきます。

私のように大企業で働く個人にとっても同じです。
会社としては巨大な資本力があったとしても、個人の話とは全く別ですからね。
あくまで自分自身という一人の人間が主語であり、会社との雇用契約の中で、いかに利益率を上げていくかを考えていかないと、短い人生、他人のために時間を差し出していたら終わってしまった、ということになりかねません。

私は、「個人の利益率=時間あたり幸福度」と捉えています。時間あたり収入ではないの?と感じる方もいるかもしれませんが、収入はまず最初は業界で決まります。個人の能力の大小が必ずしも年収と比例しているわけではない。そして、年収の大小と幸福度も必ずしも相関があるものではありません。

収入の上げ方については、こちらの記事で詳しく触れていますが、私が周囲で転職している人たちを見ていると、正直「年収を上げる」ことだけが目的であれば、既に転職してると思います。

同じような仕事をしながら、年収を2倍にしている同期も何人もいたし、ぶっちゃけ彼らが自分の2倍の能力があったかと言われると全くそんなことないと感じています。(ぶっちゃけすぎ?)

しかし、年収上げてても、自分が求める幸福度とはちょっと違って見えたんですよね。例えばその分働く時間も長くなったとか、仕事内容が「やった感」出すためのブルシットジョブではないか?みたいな感じです。

だから、「時間あたり幸福度」の追究こそが、個人の「厚利少売」戦略としては、極めて大事だと考えています。

どこから攻めていくか

「厚利少売」戦略の要素である「利益率」、「販売数」、「コスト」、「差別化ポイント」のうち、会社員としての「個人」の戦略として、具体的にどこから攻めていくか?というのが大切です。

そして、私の考えでは、まずは「販売数」を減らすところが出発点になります。
個人の労働戦略における「販売数」とは何か?
それは、「働く時間」です。

仕事なんて、やろうと思えばどこまででも出来てしまうんですよね。実質的に何の価値も生まないブルシットジョブなんて山ほどあるし、大量のスライド、長時間の打ち合わせ、無駄なメールのやり取りなど、過剰品質なものなんてたくさんある。
そして、問題が解決されたと思ったら、「問題解決そのものが仕事」であるということで、誰かが新たな「問題」(と呼ぶこともできること)を持ってくるのです。

優先順位が高いトラブル対応などで、平時のルーティンの仕事がスキップされることがあるじゃないですか。本来であれば、他の対応でスキップされるくらいの仕事であれば、そもそもそんな頻度で取り組む必要がないと言ってもいいと思ってます。でも、平時の時に「これ無駄だからやめませんか?」と言ってもなかなか無くならないですよね。その理由は、それがなくなると存在価値がなくなってしまう(ように見える)人が出てきてしまうからだと考えてます。

ということは、個人が「働く時間」がどれだけ本質的な価値に繋がっているか、というのは、かなり大小の幅がある話なんですね。

「厚利少売」を目指して「販売数を減らす」ということは、働く時間を制限することです。定時がある会社であれば、定時を超えて毎日2時間、3時間と当たり前に時間外をするのをやめて「毎日定時に帰る」ということ。
毎日終電まで仕事する、みたいな身体への負担が大きい働き方でなくとも、17時が来たら仕事を切り上げる。あと19時までやればもう一つ仕事が終えられる・・・みたいな欲望が出てきても、バッサリ17時で終わるということですね。もちろん繁忙日や急なトラブル対応でやむを得ない時はありますが、平時においても時間外が前提になっている職場の話をしています。

なぜ「時間を減らす」ところから始めるか

当たり前ですが、「働く時間を減らす」ことで、物理的に全ての仕事がやり切れなくなります。だから「自分が真にやるべき仕事」を選択するようになります。
特に、30歳を超えた自分のような世代にとっては、「自分がやっても出来るけど、他人にお願いしても出来る」みたいな仕事が増えてきます。各職場で事情はあれど、私はこのような仕事は自分にとって成長の余地がないこと、管理職としての仕事として、チーム全体で出来る仕事を増やしていくことから、他のメンバーにお願いするようにしています(もちろん、各メンバーの能力や希望に応じて、メンバーの成長を促す仕事のアサインは意識する必要はあります)。

メンバーにお願いして空けた時間は、「自分が得意で、自分だからこそやるべき仕事」に集中させます。私にとっては、これまでにやったことがない仕事を開拓していくことが好きで得意なので、こういう仕事に自分のリソースを集中させます。
先日紹介した企業向けの「生成AIワークショップ」などは典型的な例です。過去と現在の直線上にこの仕事は出てきませんが、未来からバックキャスト的に考えて、新しいテクノロジーを実装する気運を今のうちから作っておくことが重要だと考えたのです。

逆説的なのは、今やっていること+αのことをやるには、「時間を増やす(=労働供給を増やす)」方向で対処しがちなのですが、「時間を減らす(=労働供給を減らす」ことで、実現できるということです。
新しいこと、自分にしか出来ないことをやるためには、かなりの集中力を伴います。既存の延長にはないことをやるので、外の世界を見ることが不可欠になってきます。だから、毎日残業して会社と往復・・・みたいな生活を営むままでは、とても新しいことなんてできません。

ここに「大量販売→価格競争(=他の人よりも、長い時間働くことで社内でポジショニングする)」やり方から、「少量販売→価値競争(=他の人より働く時間を短くすることで、社内で他の人はやらないユニークな価値を提供する)」やり方の転換が起こります。

「こういう仕事は、こいつしかできない」という社内で認知されることは、まさしく価値競争によるポジショニング戦略です。自分を安売りしないことにも繋がりますし、自分が好き・得意な仕事に集中できるので成果も出やすく、「利益率=時間あたり幸福度」も自ずと高くなります。

注意点としては、個人における「厚利少売」戦略には、フェーズの考え方もあるということです。私も、20代の時には「薄利多売」的な仕事も含め、色々と「量」をこなしてきたからこそ、30代に入った今、「厚利少売」型に大きく転換できているという面もあります。

ただ、30代になっても「薄利多売」型を続けていくと、いずれ限界が来ます。
30代以降では「時間」ではなく「自分ならでは」の組織への「提供価値」を追求することで好循環を作っていけるはずですから、しっかり仕事を取捨選択し続けていこうと思います!

---音声でも補足的に話しました---

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林 裕也@IT企業管理職 ×「グローバル・情報・探究」
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