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#429 アクセルよりもブレーキが大切!キャリア特急列車から自分で下車する重要性
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
木下斉さんと精神科医Kagshun先生の対談を聞いて、メンタルヘルスやキャリア戦略として感じたことがあるので、話をしようと思います。
以下の記事でもご紹介したのですが、現在「管理職」の立場で仕事の中で問われる責任が増し、プライベートでは3歳と1歳の子育て中。あと数年で40代に入っていく今の自分は、注意していないとメンタル不調を起こしやすい状況にあります。
Kagshunさんの精神科医の視点は、メンタル不調を起こさないようにするにもとても重要な示唆に溢れているのですが、特に豊かなキャリアを形成していく上で非常に重要だと感じた点を取り上げます。
「ポスト トラウマティック グロース」
Kagshunさんが指摘されていた話の中で最も印象的だったのが、「ポストトラウマティックグロース(心的外傷後成長)」の話です。
PTG(Posttraumatic Growth;心的外傷後成長)は、「トラウマティック」な出来事、すなわち心的外傷をもたらすような非常につらく苦しい出来事をきっかけとした人間としてのこころの成長。(中略)
PTGで扱うのは、必ずしも私たちが通常イメージする「トラウマ」とは限りません。例えば、自分が心の底から信頼していた人に裏切られること、資格試験や不合格通知を受け取ること、秘密が暴露されること、家族が障がいをもつこと、などは、狭義のトラウマには含まれませんが、PTGのきっかけにはなりえます。
https://jwu-psychology.jp/column/ptg.html
「トラウマ」とイメージするほどではないようなことでも、何かしら心的外傷を得ることをきっかけとして、成長に繋げられるという考え方です。
Kagshun先生は、うつ病を発症してしまったり、何らか体調不良を起こしてしまう、というのは、ある意味それまでの生き方を変えるチャンスとも捉えられる、というように話されていました。
比較的真面目に頑張ってきて、何らかのレールの上を歩んできた人は、それまでその道に費やしたサンクコストが大きすぎて、自分自身でそれを止めるのは相当難易度が高い、という指摘です。
まるで、何となく乗ってしまった特急電車で、なかなか途中下車できない状態にあるような状態だと感じました。そして、このような人は少なくないだろうし、まさしく自分自身にも当てはまるなと。
以前も少し話したのですが、幼少時代から比較的勉強は苦手ではなく、地元の進学校に進み、「お金がかかるから」という理由で、塾に通ったりすることもなく大学まで進学。就職活動の時期になり、知っている企業を何社か受けて、東京の大企業に就職した自分。
企業に就職してからは、周囲に期待されるまま「多少無理してでも、期待に応えたい!」という気持ちで、20代前半〜30代前半くらいまでフルスロットルで駆け抜けてきました。
「いい大学に進んだ方が将来の選択肢が広がる」とよく言われます。確かに選択肢としては広がるのは事実ではあるけれども、「選択肢はあっても、実質的に選べない」という見えないレールがあるんですよね。人生のそれぞれのステージで、それぞれの「常識」があって、同じようなステージにいる人たちにとって「現実的な」選択肢が並びます。
私の場合、就職するときに「外資系に行くか、日系に行くか」みたいな選択肢はあれど、2〜3年インターンしてから本格的に就職するとか、起業するとか、中小企業に勤めるというのは、あまりリアリティある選択肢にはなりませんでした。基本的には、周囲も含めて「大企業」前提でしたね。
就職してからも仕事で高いレベルが求められ続け、何度かメンタル不調を起こしそうになりながらも、たまたま自分は局面で持ち直して、今まで来れているだけです。40代以降、これまでバリバリやっていた人が突然メンタル不調に陥るケースが多いそうですが、特に管理職などで、周囲になかなか相談できず、自分で何とかしないとと追い詰められる人は要注意とのことでした。
アクセルはもう十分、ブレーキを自分で踏めるか
メンタル不調をきっかけとして、自分の意思ではなかなか止められなかったキャリアに緊急停止ボタンを押す、という考え方を知り、メンタル不調は身体からのSOSなんだと改めて理解しました。これまで自分で自分を止めることができずに来たけれど、さすがに体調崩したら止まらざるを得ません。止まることで、自分は本当は何がやりたいのか考えたり、キャリアを大きく変更するきっかけにできます。
一方で、一旦不調に陥ってしまうと、回復までに時間がかかるのも事実です。だから、出来れば不調で大きく落ち込んでしまう前に、自分自身でブレーキを踏む練習をしておくことが大切だなと。特に私のような人の場合、これまで一度もブレーキを使ったことがなく、「自分のブレーキが効くかどうか、よく分からない」と言う方も少なくないのではないでしょうか。
私の場合、2人の子どもが生まれた時に育休を取得しましたが、それぞれ1〜2ヶ月弱で、当時は 子どもの世話で一杯一杯だったので、多少スピードを緩めた、くらいの感覚でした。しかし、子どもが生まれたことで、自分の中で「仕事の位置付け」が変わったのは事実です。自分に「どのようなブレーキの踏み方があるのか」を自覚して、戦略的に選択することをしていかないと、特急列車に乗った自分を止められないまま40代、50代・・・と進み、どこかで自律神経がバグってしまう危険性があります。
ブレーキを踏んで途中下車する楽しさを知ること
ブレーキを踏むには「休む」ということが必要なのですが、私の場合は、目的なく「休む」のが苦手です。ブレーキを踏む重要性は感じつつも、実際にはなかなか踏めないところが、この問題の厄介なところですよね。
じゃあどうするの?となるのですが、やはり「ブレーキを踏むからこそ見える景色を知る」ことに尽きると考えており、私なりに取り組んでいることを2つ、ご紹介します。
1つは、毎年行っている2週間の海外旅行があります。海外にいると、日本で日々直面する問題は、大抵些細なことばかりだと感じられます。昨年シドニーに行った時も、夕方4時ごろには店を閉めてしまって、公園でバスケしたりしている人がたくさんいるのを見て、色んな生き方があるんだなぁということを実感しました。
もう一つは、シングルキャリアではなく、複数の役割を持つことです。
外山滋比古さんの「思考の整理学」で出てくる「1つでは多すぎる」という話は、言い得て妙です。「私にはこの人しかいない」とパートナーに依存していると、その関係性の良し悪しにその人の心の安定度が定められてしまうように、複数の世界を持って、一定の距離感を意図的に作ることが大切。
私が今年起業したいと考えているのも、職場以外の人間関係・世界を持ちたいというのが1つの理由です。これまで培ってきたIT関連の専門性をベースに、「教育事業」や「人材育成事業」を掛け算することを考えています。
両足突っ込んでいるからこそ、見える世界があるはずです。行き先が一ヶ所だけの特急列車から「えいっ!」と降りてみて、普段は降りない駅の周りをぶらぶら歩いてみることで気付ける発見、みたいなのを楽しむイメージです。
複数のことをパラレルで進めていると、当然1つの世界でアクセル踏みっぱなしが出来なくなりますから、自然とアクセルから足を離さざるを得ません。ブレーキがなかなか踏めない私のようなタイプにはオススメです。
以上、私なりのアクセルの緩め方のご紹介でした。どなたかのご参考になれば幸いです!
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