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#380 キラポエに騙されないためのトレーニング。批判的思考能力を教える教育トレンドから大人が学ぶこと
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
今日は、のもきょうさんの話を聞いて考えたことについて、まとめてみたいと思います。
どのようなお話かと言うと、次のような趣旨でした。
・キラポエ=キラキラしたポエムと言われるような「知的だけど中身が実態が伴っていないような美辞麗句」の危険性を教える教育トレンドは世界的にも広がってきている
・なぜなら、批判的思考能力=「ホントとウソを見抜く能力」は、生成AIやSNS広告の普及により、ますます必要になっているから
・批判的思考能力の有無は、学歴や偏差値とは関係ない。むしろ、受験勉強のような「意味があるかどうか分からないことをゲーム感覚でやれてしまう」人の方が、事務遂行能力やできるだけ早く正解を求める能力は高いかもしれないが、批判的思考能力が低い可能性すらある
これまで批判的思考能力は、ビジネスにおける課題設定力という文脈での「オフェンス能力」という理解を持っていました。社会の現状や顧客の業務フローを理解して「そもそもこの業務ってやる意味あるの?」みたいな無駄を見つけて、効率化していくようなイメージです。
しかし、現在の教育で課題視しているのは、「ウソに騙されない能力」という文脈での「ディフェンス能力」だということ。いわゆる「お金のリテラシー」のように全員が学校で学ぶべき能力になっており、中学や高校などで具体的なトレーニングプログラムが提供されているところも増えてきていると聞いて、良い傾向だと感じました。
生成AI、SNSの発展により、嫌でも多くの「ホントか嘘か分からない情報」に触れてしまいがちな現代において、批判的思考能力は大人も持つべきだし、むしろそんな教育を受けてこなかった私たち大人の方が意識的にトレーニングする必要があります。
今年金融庁が公表している「不正送金発生状況」では、2023年2月以降、フィッシング詐欺の被害件数が急増しているとのこと。これは、銀行を騙ったメールやSMSを用いて、不正にネットバンキング利用者のID、パスワードを盗み、預金を不正送金するケースということで、「有名な銀行が言っているのであれば大丈夫だろう」という権威に弱い人をターゲットにした被害が急増しているということです。
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https://www.fsa.go.jp/ordinary/internet-bank_2.html
もちろん悪いのは騙す側ではあるものの、これまで以上に「自分で判断する能力」「他人が言っていることに違和感を感じる能力」がないと、被害者になってしまいますから、のもきょうさんがご紹介している具体的な情報の疑いポイントにも触れながら、考えていきたいと思います。
キラポエテクニックを知ること
学校教育で実際に取り入れられているのが、実際の広告やキラポエ記事を題材にして、具体的な手法を知り、違和感がある箇所について議論したりすることのようです。具体的な手法については、特に「感情」を動かすような言葉には注意すべしとのこと。
擬人化
具体例としてご紹介されているのが「地球が泣いている」とか「森が泣いている」みたいな、モノを人に例えているものです。感情に訴えてくる表現で、場合によっては「上手なキャッチコピー」だと称賛すらされそうな言葉ですが、こういうのを目にした時に制作者側の意図を考えることが大事です。
「いやいや、地球は泣かんやろ」とか冷静に突っ込める人はいいかもしれませんが、こういうのを見て「その通り!」と感じてしまう人や、強すぎる正義感とセットで何かを訴えてくる人には要注意です。
曖昧表現(Vague Language)
わかったようでわからない、耳障りだけが良い言葉にも注意が必要です。よくあるのは形容詞の多用で、「美しい自然を守りましょう」とか「あなたの生活を素晴らしいものにしましょう」みたいなものです。形容詞でなくとも「子どもたちのために」とか「みんなが笑顔になれる」みたいなのもこれに該当します。
中村淳彦さんが以前指摘していた、リーマンショック後に溢れた失業者を介護職に誘導するために使われていたという「感謝感激感動の3K!」、「介護に夢と誇りを乗せて」みたいなのもこの分類になりますね。
このような情報の発信源には、厚労省や経産省、社会福祉協議会が主催とか協賛になっているケースも当時多かったとのことで、発信源にそれなりのオーソリティがあったとしても、「美辞麗句を並べる意図は何か?どこに誘導しようとしているのか?」を考えるトレーニングが大事です。
ビジョンとの見極めが難しい
ここまで聞いて難しいと感じたのは、いわゆる「共感」を集めることが目的であるビジョンとの違いです。
企業の「ビジョン・ミッション・バリュー」は、会社の存在意義を定義して、自分たちの仕事における判断基準や優先順位、価値観を示すために存在します。
これがないと組織がバラバラになり、組織としてのパフォーマンスを最大化できないこともまた事実。会社の企業理念や自治体の総合計画は、個別の現場の具体的な取り組みにも合致できるようにある程度抽象化されています。だから「曖昧表現」と「抽象化されたビジョン」の差をいかに見極めるのかが大切。
例えば、東京都の総合計画「未来の東京」では、「世界で一番の都市・東京を目指し、希望あふれる明るい未来を都民とともに切り拓く」とあります。
「希望あふれる」とは具体的にどんな状態?「明るい未来」ってどうなっていればいいの?というように、いわゆるVague Languageと思えるようなものばかりです。
オリエンタルランドの企業理念は、「自由でみずみずしい発想を原動力に すばらしい夢と感動 ひととしての喜び そしてやすらぎを提供します」とあります。(https://www.olc.co.jp/ja/company/philosophy.htmlより)
「みずみずしい発想?」「すばらしい夢と感動?」と、企業の企業理念も各現場の行動指針に適用できるよう、どうしても抽象的なビジョンになります。多くの顧客(県民や市民)や従業員の共感を得て惹きつけることも必要なので、総合計画や企業理念が曖昧さを含んでしまうのは、そういうものと理解しておかないとなと。
具体の行動・事実を客観的に見ること
のもきょうさんが指摘しているように、キラポエ対策の批判的思考能力がより求められているのは大人の方だと考えます。なぜなら、批判的思考能力を鍛えるトレーニングを受ける機会からすり抜けてきているからです。
そんな私たちが、日々どのように批判的思考能力を養うのが良いか。私は「言っていることではなく、やっていることを見ること」、これに尽きるかなと思います。
会社としては「グリーンだ、サステナビリティだ!」と言いながら、打ち合わせのたびに大量の紙を印刷している企業。寛容性の高い地域をつくる!ことを謳いながら、忖度ばかりで風通しの悪い行政組織。多様な働き方が大事!と言いながら、実質的に副業・兼業がしにくい雰囲気や、時短勤務に配慮のない管理職の存在・・・
などなど、言動不一致な組織というのは、身の回りに溢れています。
だから、誰かが言っている「一見素晴らしそうなこと」に目を眩まされずに、淡々とその組織・人は何をしているのか?という行動を冷静に見ること。
様々な技術が発達すればするほどに、「自分で考える・判断する力」が求められますね。
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![林 裕也@IT企業管理職 ×「グローバル・情報・探究」](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/121599222/profile_832031554689af3c15ba9a288bceadf9.png?width=600&crop=1:1,smart)