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生成AIの「業務への組み込み方マニュアル」

生成AI利活用の最前線はどこにある?と尋ねられたら、何と答えるでしょう?

RAGではありません。
LLMのモデルでもありません。
プロンプトエンジニアリングでもありません。

では何なのかと言えば、業務への適用方法です。

AIの能力が、しきい値を超えて「使えるもの」になった結果、一番得をしたのは、OpenAIでもGoogleでもなく、アクセンチュアだった、という話。
笑い話ではありません。

アクセンチュアの数字は(「関連」といえば何でも関連になるので)それほど信用に値するわけではないと思いますが、それでも変わらないのは、主戦場が「技術」から「仕事への適用」になったという点です。

なぜならば、生成AIの適用は、個人で趣味で使う分にはそれほど難しくないですが、「仕事で」推進するには、いくつかのハードルが存在しているからです。

そこで本稿では、生成AIを業務利用する際に、どのような考え方で、どのように進めると良いのかについて、いくつかの原則を書きたいと思います。

原則1 「目指すアウトプット」を明確にする

まず原則です。何より重要なのは、アウトプットを明確にすることです。

「生成AIで何を出力したいか」をざっくり思い描いてみてください。
たとえば
「プレスリリース」
「資料のドラフト」
「事業アイデア」
「議事録」
といった具体的なアウトプットを設定します。

なぜ先にアウトプットをを決める必要があるかというと、生成AIを使う際に「何が欲しいか」を明確にしないと、ただの“おもしろツール”に終わりがちだからです。

そもそも、生成AIのアウトプットの精度は、「アウトプットを記述する精度」に大きく依存するため、多少面倒であっても、アウトプットがどのようなものかを記述する方に時間を割いたほうが、結果的に生産性が向上します。

ただ、それをすべて人間がやる必要はありません。「まだゴールが明確にわからない」という場合でも大丈夫です。
なにせ、それすら、生成AIと相談すればいいのですから。

原則2.「業務の手順」をイメージする

アウトプットを設定したら、その次は、「どのような作業をすれば、上のようなアウトプットが上手く作れるか」を考えてみます。
ここで重要なのは、「作業イメージを詳細化すること」です。

これは、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、トヨタ自動車が「トヨタ生産方式」の中で、これをうまく言語化してくれています。

https://global.toyota/jp/company/vision-and-philosophy/production-system/

説明ページには、こうあります。

トヨタ生産方式における「自働化」は、いわゆる「自動化=オートメーション」に「人間の知恵」をつけた「ニンベンのついた自働化」です。(中略)

このような機械をつくるためには、まず機械を使わず手作業で正しくスムーズにできること、作業の異常を判断できること、そしてそれらを機械に置き換えられることが重要になります。つまり、最初から機械ありきではなく、「機械をつくる前に、徹底して手作業でやってみて作業を改善」し、ムダを省き、ムリやムラのない状態にし、誰でもできるようにする。さらに、作業の異常を見つけられるようにして、それらを実際に機械にビルトインする。この積み重ねが「品質良く、安く、フレキシブルで、メンテナンスしやすい」生産ラインにつながります。

こういった「作業改善」こそが、自働化の原点です。

この文章の部分を「AI」に置き換えてみてください。
生成AIに仕事を任せるためには

・まずAIを使わず、手作業で正しくスムーズにできること
・作業の異常を判断できること

が条件となっており、それがかなって初めて、

・AIに置き換えられることが重要となる

わけです。

たとえば、以下のようなケースを考えてみてください。

◎定型メールの作成
例:毎週決まった取引先に送る「進捗報告メール」や、「請求書送付のお知らせメール」など。

◎プレゼン資料のたたき台づくり
例:新商品の提案書、社内向けの業務改善アイデア説明用スライドなど。

◎長い文書の要約
例:新しい規約や契約書、業務マニュアルなどが数十ページある場合。

◎企画書づくり
例:商品キャンペーンのネーミングやキャッチコピー、顧客向けのイベントアイデアなど。

◎社内研修やマニュアルの「ちょっとした演習問題」づくり
例:新人研修の穴埋め問題や、学習定着度を確認するクイズなど。

これらのアウトプットをつくる「手作業」を、イメージできるでしょうか?

例えば、プレゼン資料であれば、まず参考資料を集めて、構成を作って、ページごとに「伝えたい事」と「読後のお客さんの予想される反応」を想定し……
といった、「手作業で資料を作りこんでいく」ステップがあると思います。そして、まずAI化が可能なのは、このような業務となります。


しかし例えば、「面白い小説」がアウトプットだった場合、これはAI化が可能でしょうか?
できませんよね。

なぜかと言えば、「面白い小説」をアウトプットするためのステップが、明確ではないからです。

それを作成するためのステップが明確でない場合、例えば「面白い小説を作って」とAIに投げても、大して面白いものは作れません。

これが現在の生成AIの能力的な限界なのです。
丸投げはできません。

生成AIをうまく扱うための本質は、「具体的なステップと、インプット、アウトプットを精緻に規定する」ことです。つまり、通常のソフトウェアを扱うのと同じ。
「これくらいは大丈夫だろう」と思って曖昧なリクエストを送ると、生成AIも曖昧な結果しか返せません。

だから「次の製品キャンペーンのアイデアを出して」という要望を出すだけでは、あまりピントの合わない提案が返ってきます。

一方で「ターゲットは30〜40代の働く女性。予算はあまりかけられないけど手軽にSNSで拡散できるアイデアを出したい、まずは企画に必要なキーワードを拾ってほしい」というように、あらかじめ条件や前提を整理して伝えると、より使えるアイデアが返ってきやすいです。

生成AIに要求する際は、「誰向け?」「目的は?」「制約は?」など、最低限の要素を整理してから投げかけるようにしてみてください。そうすることで、「これなら使えそう!」と感じるアウトプットが得られやすくなります。

原則3.とりあえず試して「微調整」する

3つ目の原則は、「完璧を求めすぎず、とりあえず試してみる」ということです。生成AIのアウトプットは、初回から完全なものが出てくることはあまり期待しないほうがいいです。

むしろ最初の生成結果を見ながら、「ここはちょっと違うな」「もう少し専門用語を増やそうかな」と微調整するのが当たり前、くらいの気持ちでOKです。

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インターネット上における 「生成AIの利活用」 「ライティング」 「webマーケティング」のためのノウハウを発信します。 詳細かつテクニカルな話が多いので、一般の方向けではありません。

ビジネスマガジン「Books&Apps」の創設者兼ライターの安達裕哉が、生成AIの利用、webメディア運営、マーケティング、SNS利活用の…

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