スタートアップでのストックオプションに関する具体的なお話 〜受け取る側編〜
いきなり俗な切り口となりますが、スタートアップ・ベンチャーに勤めていると「ストックオプションで金持ちになった!」という話を耳にした方も多いのではないかと思います。
しかし、「法人側がストックオプションをどう扱うべきか」という記事を前回書いたのですが、付与する法人側より被付与者の方が知識不足である場合がほとんどだと思います。
そこで本投稿では、ストックオプション(SO(エスオー)とも呼ばれる)を受け取るにあたって必要であろう知識の基礎的なところを書いていきます。
前回と重複する部分もありますが企業側の思惑も理解しておいた方が把握しやすいと思うので、ぜひ法人編も併せてご覧ください。
※過去記事のカテゴリ別まとめはこちら。
ストックオプションとは
大辞林での記載は以下です。
"あらかじめ決めた価格で自社株式を購入する権利。会社に貢献した特定の個人や機関に報酬として会社が認める"
これだと分かりづらいと思うのでざっくり書くと、"給与とは別個の金銭的報酬として、将来現金化できる可能性のある自社株の購入権"です。
もっとざっくり書くと"会社が成長して上場やバイアウトなどのイグジットを果たした際、現金を手に入れられる権利"ということです。
ちなみにストックオプションには「無償」「有償」「株式報酬型」の3タイプがありますが、ここでは主に最も利用されているであろう無償ストックオプションについて書いていきます。
どのような位置づけで考えるべきか
ストックオプションを一言で説明すると、金銭的報酬の一種です。
例えばあなたが現在勤務している企業では年収1,000万円もらっているとして、興味のあるスタートアップを見つけてそこに転職したいと考えたとします。
しかし、特にシード期のスタートアップであればその給与水準を維持することは正直かなり難しいです。
あなたとしても、どんなにその企業・事業が魅力的であっても、例えば年収が500万になってしまうならば転職しない、と考えるかもしれません。
しかし、ストックオプションを受け取りそれが5年後に2億円の価値となったとすれば、年収は実質4,500万円になります。
つまり、一種の成果報酬としてストックオプションを受け取ることで、将来得られる報酬の期待値を大幅に上げることが可能となります。(税率などは無視して単純化しています。)
個人的には金銭的見返りをメインの目的としてスタートアップに入社することは、それが実現しない可能性もおおいにあることからお勧めしませんが、スタートアップへの転職を検討するにあたってストックオプションは大きなプラスの材料となります。
どのタイミングでもらえるのか
随時もらえるチャンスはありますが、その企業の方針次第です。
ただ、ストックオプションを付与した際には登記情報を更新する必要が法人にはあるので、資金調達前などなんらかの節目となるタイミングでの付与、もしくは入社時などに行われることが多いです。
基本的にはそのタイミングでの株価でのストックオプションを受け取ることになるため、できるだけ株価が安い早期のタイミングで受け取った方が将来の旨味は大きくなりやすいです。
しかし法人編でも書きましたがストックオプションの設計・発行には少なくとも数十万円は必要になり立ち上げ期の法人においては金銭・時間コスト的うに発行が難しいことも多いです。
なので、少なくとも数千万の資金調達時やビジネスが軌道に乗り出したタイミングを目処に最初の発行を考えておいた方がいいです。
先にストックオプションを貰える確約をしておきたいという場合には、「◯◯のフェーズでストックオプションを設計し、その際は◯%を受け取る」などの覚書を交わしておくことも考えられます。
しかし、ストックオプションは事業がうまくいかなければなんの意味も持たないことなので、そこの交渉ではなくまずは事業立ち上げに皆が集中できる状況にしていった方が結果的には良いものになると考えます。
どれくらいもらえるのか
こちらのリンク先にとある調査結果が示されているのでご参照ください。
結果部分だけ書き出してみると、創業メンバーと思われる人を除く各社の従業員持株比率上位10名の1人あたりの平均値と中央値を算出したところ、平均値は0.34%、中央値で0.185%だそうです。
また、こちらも前編でも示しましたが企業が報酬として用意することができるストックオプションは付与した合計で全体の10%程度です。
なので、あなたが特別なスキルを持っていたり、ごく初期からその会社で役割を果たしていない限り、1%を超えることはあまり起こり得ません。
しかし、例えば同じ0.1%の保有量であったとしても時価総額100億円で上場する場合と1,000億円で上場する場合は、当然のことながら得られるキャピタルゲインは10倍違います。
そのため、受け取る割合ばかりを気にするのではなく、どういった事業計画、イグジット戦略で進めているのかも気にしましょう。
スタートアップで働くのであれば、上場狙いなのかバイアウト(セルアウト)狙いなのかなどについては、付与時というよりもそもそも採用面接時に聞いておいた方が良いと思ってます。
どちらが良いというわけではなく、それぞれの人生においてどう優先度を置くかによって、採るべき行動は変わってくるので。
受け取る時に注意すべき点について
まず気にすべきなのは、(会社側が用心すべきことではありますが)税制適格条件を満たしているかどうかです。
そちらを満たしているかによって、キャピタルゲインにかかる税率が30%以上変わってくるので、自分でもちゃんと確認すべきです。
普通に勤務していて受け取る場合ではプロが設計したものであれば問題が生じることはほぼないと思いますが、外部から手伝っている場合などは雇用契約さえ結べばOK!というものではないので、そこもきちんと確認した方が良いです。
あとは、バイアウト時の対応についてもきちんと確認した方がいいです。
そもそもストックオプションは「上場時に行使できる」と定義されていることが多く、売却時には無効になってしまうこともあります。
現在、日本のスタートアップにおいても売却によるイグジットが増えていることもありますので、お互いにとって良い形にするために売却時も行使できる、もしくは買い取ってもらえるよう盛り込んでもらいましょう。
ちなみに無償ストックオプションの場合は受け取ること自体にリスクは特にありません。
有償ストックオプションや生株を持つのであれば含み損が発生することはありますが、無償ストックオプションを受け取る際にはなんら金銭のやり取りは発生しないためです。
もし生株の譲渡を受ける際には、110万/年を超える金額である場合贈与税が発生するため気をつけましょう。
どのように現金化できるのか
上場して、かつ税制適格で合った場合は証券会社にストックオプション用の口座を開設した後、もろもろの書類等の手続きを行います。
ここについてはルールがあるものなので、それに従いましょう。
考えるべきは、行使可能期間に余裕がある場合は、どれくらいの量をいつ売るのかということで、ストックオプション保有者の方がその会社の時価総額推移をどのように考えるかによって戦略は大きく異なります。
バイアウト時については上記のように売却した場合でも行使できるようにする、もしくはその権利を買い取ってもらえるよう契約書で定めておきましょう。
まとめ
ストックオプションをうまく使うことで、法人側にとっても被雇用者側にとっても、大きなメリットを生むことができます。
被雇用者の方にとっては、比較的リスクを取る必要がない上に数億円以上のキャピタルゲインを得られる可能性も大いにあるので、しっかりと知識を深めて人生プランに盛り込んでみてはいかがでしょうか。
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ITベンチャーに新卒入社後2012年創業 複数回エクイティ・デッドでの資金調達を行い各種事業を行う 2015年に既存事業譲渡と訪日旅行者向けWebメディア立ち上げを並行しつつ、 2016年にフジメディアホールディングスグループに数億円でバイアウト 2019年から福岡で2度目の創業