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死んじゃった父を継ごうかと。そしてnoteを書こうかと。

小さい頃、リカちゃんもどきのエセ人形がウチにやってきた。

理由はどうしてもリカちゃん人形を買ってほしいと私が父にせがんだから。
娘のためになんとか用意してあげたいと思ったのか、その人形は、私が父に訴えた2日後くらいにウチにやってきた。


……。



やけに目がデカくてギラギラしていて、
子ども心に

「コレじゃねえ」

という気持ちになった。



小学校では、みんなが流行りのものを買ってもらえていることにいつも唇をわなわなさせていた。
自分はなぜかいつも本家の商品ではなく、
なんか違うやつだった。


そう、ウチはビンボ〜だったのである。


小学生の頃なら、欲しいものが買ってもらえない。くらいの悩みだったが、
中学校、高校と成長するにつれ、悩みが変わっていく。

友達とショッピングに行っても、お小遣いが私だけ小銭。とか、バス代をうかせる為に自転車をこぎまくり、競輪選手みたいに太ももがモキモキになる。とか。


思春期の私は、遊びに行く友達の、
大きくて立派なおウチや、素敵な食卓が心底羨ましく

おいおい、神様や、

世の中はなぜこうも不公平なのか。
○○ちゃんの家のお皿はなんかスッゴォイ高級そうなやつだったよ。
金箔みたいなやつ皿に練り込んであったよ。

なのにうちは、どうしてヤマザキ春のパン祭りの景品のお皿なの。

クソぉぉぉぉー!

と、やさぐれ中学生になりかけていた。


♦︎



けれど、そんな幼少期、思春期を過ごした私が、やさぐれなりに、のびのびスクスク育ったのは、
我が家の真ん中には「笑い」があったからではないかと思う。

その日、
『手作りバレンタイン材料って、買うよりお金かかるんじゃね問題』
にウンウン悩んでいた思春期中学生の私の横で、
父親はちびまる子ちゃんの漫画を読んでゲラゲラ笑っているのである。

おい親父、

今昼の14時なんだから働いてくれ。



しかしそんな私のナイーブな心境に全く気づかない父は、
笑いすぎてヒーヒー苦しがっている。


私が呆れた顔をしていると、
「コレ読んだほうがいいよ」とすすめてくる。


いや、それ私の漫画だし。


そして父親の隣で同じくゲラゲラ笑ってしまうのであった。
そう、我が家の笑いの発症元は主に父だった。



私が学校で嫌なことがあって、ベッドでうずくまっていた時、家電が鳴った。
父が電話に出ると、兄の友達からのようだった。

父は2階にいる兄の名前を呼ぼうとしたが、
間違えて、

「もしもぉーーーし!」



と大声で叫んでいた。

私はベッドの中で笑ってしまった。
また父が馬鹿なことをしている。
なんてアホなんだ。と。


またある日は、父が兄に鏡の前でネクタイの絞め方を教えていた。

父は
「ちがうちがう!」
と言って鏡の中の兄のネクタイを直そうとし、
鏡に手をぶつけて「うぅ!」と痛がっていた。

え?うそでしょ?
そんな間違いする?
と私は爆笑した。

またある日は、
「ハワイ旅行が当たった」
と、キランキランした瞳で2階から降りてきた父。

ワンクリック詐欺であった。


私がどんなに嫌なことがあっても、辛くても、
父はいつもアホだった。
そしてそのことは私を救った。




あの父親のアホさがなかったら、
私は誰かのことをカツアゲしていたかもしれない。
またはスーパーの万引き常習犯になっていたかも。

ウチはビンボ〜だったけれど、「貧しい家」ではなかった。
いつも笑いがあったのである。

貧しさとは、豊かさとは、
お金があるとかないとか、
そういうことじゃないと教えてくれたのは父だったのかもしれない。


そんな父は2年前に亡くなった。
もうアホな話が聞けなくなってしまったのだ。
私は悲しくて寂しくて泣いた。
青い空や道端に咲いてる花を見てもなぜか涙が出た。


自分より自分の父親が先に死んでしまうのは、当たり前だし、めずらしいことでもなんでもない。
だけど、大切な人の死というのがここまで世界を変えてしまうのか。
みんな、こんな思いを当たり前に経験してるのか。あの人も、あの人も、あの子も。

人間のみなさんをとても尊敬する気持ちになる。
みんなえらいなぁ。悲しくてもさみしくても毎日生きてるなんて。


♦︎




そしてある日私は、
あの父親のアホなところを引き継ぎ、文章にしていこうかなと思った。


実家のガラス屋は継げないけれど、
父のアホさなら継げる気がする。
というか残念ながらちょっと遺伝している。


調子に乗って若者ぶるところは継ぎたくないので、
おもしろいところと、誰でもいつでもオーライなところ、人を批判したり攻撃するのでなく、
人を受け入れて、助け合って楽しく生きるところも。

会社を継ぐとか、肉屋を継ぐとかでなく、
父の人間性の良かったところを継いでいく。

そうすることで、父が生きてるような、
自分の中に父がいるようなそんな感覚になる気がするので。



ということで
ヘンなエッセイを、ちまちま書いているので、
気が向いたらトイレとか、こたつで寝ながらとか読んでみてくださいませ。

私が父のことをアホだなぁ。と思ったように、
私のことをアホだなぁ。バカだなぁ。と思い
ちょっぴし元気になってくれたら嬉しいかぎりです。


おしまい

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