思わぬものを見た映画
思わぬもの、それは父の涙する姿である。
それまで父の涙を見たのは父の母、祖母の葬儀の時だけだった。
それほど、父が泣くというイメージはなかった。
反対に母は、映画やドラマ、本など、
感動する場面でもそうでもない場面でもすぐ涙する。
えっここで?と思ったことが何度あったことか。
それに引き換え、父の涙はあまり見たことがなかった。
そして今のところ、その日が最後である。
あの日は、家族3人でテレビで放映されていた映画を見ていた。
あらすじを見ただけで痛みを感じるくらいに、切なく苦しくなる映画だなと思っていた。
もちろん私も母も泣いていた。
その時ふと向かいで見ていたはずの父を見た時、私の涙は止まった。
父が静かに涙を流していたのである。
音もなくひとしずく、ひとしずく父の目からこぼれ落ちる涙。
そのあとすぐにまた映画に引き込まれ、私と母は嗚咽を漏らしながら泣いていたので、父の涙を見たのは一瞬であったが
あの光景は今でも忘れない。
さて、その映画のタイトルとは「グリーンマイル」である。
好きな映画は他にあるが、映画の思い出と言われると思い出すのはその光景だ。
この映画を私がこの先みることはないだろうと思っている。
見る前から、考えるだけで気持ちが苦しくなってしまうからだ。
でもとても良い映画なので、興味のある方とか、最近涙を流していないなという方は是非ご覧あれ。