04 : 熱帯夜に負けてたまるか
※クリックして曲をBGMとして流しながら読んでみてください♪
※曲はすべてお借りしています。
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ドカッと大きなバックを置き、デスクの下に潜りこませる。バックの中身は2泊分の着替えと本。
「おはよう。なにその荷物、どっか行くの?旅行?」
出勤して早々に先輩につっこまれた。
違うんです。実は、、と説明しようとすると
「あ、分かった。行くのね。」
月に一度の金曜日、わたしは新幹線に乗車する。
飲み会の誘いを断り、ちょくちょく時間を気にしながら仕事を確実に終わらせる。
なんとしても定時に会社を出たいから。
絶対に新幹線に乗り遅れるわけには行かないのだ。
彼の仕事は職種的に終わるのが遅い。
わたしの乗る新幹線が到着した頃にやっと彼の退勤時間となるため、わたしが彼の下へ行く方が都合が良かった。
夏は日増しに暑くなり、今夜も予報は熱帯夜。
冷房の効いた車内なのでコーヒーをホットにしようと思っていたけれど、やっぱりアイスかなと思い直す。
新幹線には乗り慣れている。
きっともう6回くらいは往復していて、最初は会えるうれしさでドキドキしていたけれど
今は、いつまでこの状態が続くのかが心配になってきていた。
さみしいと感じたときには会えない。
やっと会えたときに変なケンカはしたくなくて、心配ごとは後回しにしてしまう。
月に一度の大切な時間。
まるでアイスコーヒーのストローをかき回すかのように、頭の中ではぐるぐると考えてしまって
持ってきた本はさっきからずっと12ページを開いている。
行きはいつもドキドキで本が進まない。
帰りはいつも涙で本が進まない。
プシュー
新幹線のドアが開いたら闇が潜む。
まるでどうにかなりそうな夜。
諦めて本を閉じた。
耳元から流れているのはRIP SLYMEの夏の曲。
燃え上がっているのは愛なのか、意地なのか。
半分になったアイスコーヒーの氷はわずかに残っていて、カラカラと音をたてる。
頭で考えても仕方がないか。
大切に大切に育ててきたのだ。
わたしの気持ちに距離は関係ないはずだ。
この大きな荷物にも、熱帯夜にも、溶けてしまった氷にも。
こんなものに負けてたまるか。
♪「熱帯夜 / RIP SLYME」
過去にもRIP SLYMEについて言及していました。
やっぱいい。
よかったらこちらも。
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