言語探偵T 第9話
感覚問題 (後編)
「個人差」は確かにある。
でも、コミュニケーションに支障をきたす程の個人差というのは考えにくい。
3.「あまり言わない」の謎
「海釣りをする」という場合にどの前置詞を使うかについて、ネイティブは次のようにコメントしている。(『英語教育』 2012年 2月号 より)
これらのコメントから読み取れることを考えてみよう。
① 個人差というが、コアイメージは使っている。
そしてここが重要だが、状況が定まればある程度使われる前置詞も定まる。
事実、ネイティブはby the seaなら「海のそば」、at the seaなら「岸壁で」という状況を思い浮かべている。
つまり、具体的な状況がはっきりしているなら、「個人差」は(それほど)出ないと考えられる。
② 状況が考えられるかどうかで「個人差」が出る。
「この前置詞は使えない」と言ってるネイティブは、状況が浮かんでない、もしくはそのような状況は考えられないと思っている。
事実、in the seaがダメと言っているネイティブは「海中で釣りをする」という状況が変だから使えないと言っている。言い換えれば、そのような状況が考えられるなら in the seaは許されることになる。
つまり、「個人差」というのは「状況が浮かぶかどうか」の違いともいえる。
さらにいうと、ネイティブと同じコアイメージを持ってないと、ネイティブと同じ情景は浮かばないのである。
話はここで終わらない。
実は、onに関しては以下のようなコメントをしている。
on the pondならいいのにon the seaはダメという感覚は、コアイメージから説明できるとは思えない。
ここで注目したいのは「on the seaはあまり言わない」というコメントである。
これは、on the seaという言い方を普段あまり聞かないし、自分でも使わないから変だということだろうか?
この「あまり言わない」問題に関して、アメリカに住む通称「ベテラン」という女性から次のようなコメントをもらった。
例の「in-after 問題」であるが、「意味は伝わるけど変」という感覚はどこからくるのだろうか?
「意味は伝わる」ということはコアイメージ的なものはこの状況にあっているといえる。にもかかわらず「変」というのは、「あまり聞かない」からだろうか?
この問題はさらに追及する必要がある。
線路と前置詞探求は続くよ、どこまでも♪
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