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#4 年末に炊飯器を買いに行った話:問いひとつで変わる買い物体験
年末、妻と家電量販店に炊飯器を買いに行きました。結婚して新生活が始まり、「せっかくだから美味しいお米を炊きたい」と考えたのがきっかけです。それまでは手軽なパックご飯で済ませていた食事を、炊きたてのお米で特別なものにしたい――そんな思いを胸に、お店へ足を運びました。
店員さんの「シンプルすぎる答え」
お店に入ると、すぐに店員さんが声をかけてくれました。「何かお探しですか?」との質問に、私はこう答えました。
「予算は5万円ぐらいで考えていますが、どうしたらいいですか?」
しかし、返ってきたのは予想外の一言。
「正直、おいしさは金額なので、金額で決めてもらって良いと思います。」
……なんとも淡白な答え。確かに価格は判断材料のひとつですが、私が悩んでいたのはそこではありません。「どんな生活をしているか」や「炊飯器にどんな期待をしているか」を聞いてくれたら、もっと違った接客になったのでは? と思わずにはいられませんでした。
「今買いたい理由」にある背景
振り返ってみると、私には「今、炊飯器を買いたい」というはっきりした理由がありました。
結婚して新しい生活が始まったから
年末に美味しいお米を炊いて、特別な時間を過ごしたいから
これらの背景を引き出すヒアリングがあれば、提案される商品も私たちに寄り添ったものになったのではないでしょうか。
背景を引き出す「問い」の力
例えば、こんな質問をしてくれたらどうだったでしょう?
「どんな場面で使う炊飯器をお探しですか?」
「年末に特別なお米を炊きたいとか考えていますか?」
「普段のご飯で、炊飯器に求めるポイントはありますか?」
こうした問いを投げかけることで、私たちの「隠れたニーズ」や「目的」が見えてきます。そして、その背景に沿った提案があれば、私たちの買い物体験はより豊かなものになったでしょう。
自分から背景を伝える工夫
一方で、私たち消費者にもできることがあります。自分の背景や目的を自ら伝えることで、接客の質を高めるのです。
例えば、こんな一言を添えるだけで違ったかもしれません。
「結婚して新生活が始まったので、美味しいお米を炊きたいと思っています。」
「年末に使いたいので、すぐに簡単に使える炊飯器が良いです。」
背景を共有することで、店員さんも「このお客様にはこういう商品が向いている」と考えやすくなるはずです。
「問い」が生む豊かな買い物体験
この出来事を通じて、「問い」の力がどれほど大切かを改めて感じました。商品を売るだけでなく、お客様の背景や目的を掘り下げることで、買い物は単なる消費行動ではなく、生活を豊かにする体験になります。
炊飯器ひとつを買う背後にも、それぞれのストーリーがある。それを引き出す「問い」が、接客の質を決める鍵なのかもしれません。