今週の【ほぼ百字小説】2022年10月31日~11月6日
一週間空いてました。今週はやります。ひとつツイートすると、こっちにそれについてあれこれ書いてます。解説というより、それをネタにした雑談だとでも思ってください。
まあしかしあれですね。一週間空けると早く再開したくなります。依存症ですね。だからこのくらいのペースで抜くのがいいのでしょう。体にもよさそうです。ということで、今週もよろしくお願いします。
投げ銭は歓迎します。 道端で演奏している奴に缶コーヒーとかおごってやるつもりで100円投げていただけると、とてもやる気が出ます。
******************
10月31日(月)
【ほぼ百字小説】(4135) 空き地にまた茶色いもこもこしたものが現れた。いつか草を食っていたときよりも大きい。すぐ側には同じ色の猫が。見ていると吸い込まれるように猫が消えた。草食ではないのか。食われたのではないのかもしれないが。
前からの続き、というか、空き地のもこもこの話。実際あるんですよ、毎日通る空き地に。まあ草を刈ってそれを積み上げてるだけなんですが。そこに猫が来たりするのも本当で、一瞬消えたみたいに見えたのも本当。子供の頃、町にあるなんだかよくわからないものを見て、よくあれこれ妄想していました。あのロケットはいつか飛ぶのだ、とか、あの地下への階段の先には、とか。今もやっぱりそういうことをやっている。私にとってのSFは、そういうことなのだろうと思います。ということで、今ももこもこはありますから、もうちょっと続くんだろうと思います。
【ほぼ百字小説】(4136) 我流ですけど、が彼の口癖で、実際びっくりするほどいろんなことができるのに誰かに習ったりはしてないらしい。だからちゃんとしてないよ、なんて言うけど、ちゃんと呪い殺してくれた。我流ですけど、と笑いながら。
そういう引け目はあるんじゃないかと思いますね。ちゃんと習ってないからちゃんとしてない、みたいな。わりとそういうのって師弟関係とかありそうだし。落語とかも、やっぱり弟子入りしてないとちょっとやりにくい。これまでずっと積み上げられてきた集合知みたいなものがそこには間違いなくありますからね。弟子入りという関係を結ばないとその世界の財産を使えない気がする。あ、私の個人的な考え方ですよ。同好会とかでやってたくらいで勝手にはやれないよなあとか、思ったりする。あ、これは落語の話ですけどね。
【ほぼ百字小説】(4137) 仮装する祭として定着したおかげで、この日だけは仮装せず外出できる。これが末永く続くよう節度をもって楽しんでほしい。だからやり過ぎている者に罰を与えることも。それを楽しんでいる自分がつい出てしまったり。
そういうものとしてハロウィンをうまく使ったのは「ET」でしたね。あのシーンはよかった。でもまあこれはもうちょっと強いかな。隠れて生きてるんだけど。そういう妖怪というか魔物の話。せっかくのイベントをぶちこわしかねないモラルの低下した人間に怒ることになる。ハロウィンものとしては定番のショートショートな感じですが、わりとうまくいってると思う。
11月1日(火)
【ほぼ百字小説】(4138) 空き地のもこもこした茶色いものに雀が群れている。ちゅんちゅんと大量の雀がもこもこしたものを覆っている。もっとよく見ようと近づくといっせいに飛び立って空が真っ暗。地上を見るともこもこしたものはもうない。
空き地のもこもこの続き。雀が群がってたのは本当。まず声がすごかった。すこし離れたところから聞こえてきて、いったい何事だろうと見に行って、こんな感じでした。なくなりませんでしたけどね。雀はほんとにすぐに飛び立つんですね。ほとんど近づくことができない。なかなか勉強になります。
【ほぼ百字小説】(4139) 欠片を作っている。欠片を作った後でそれと別の欠片とが繋がることがわかる。ある面とある面とが繋がるから、実際に繋がなくてもそれを繋げば立体になることがわかる。その形は甲羅のようでもあり船のようでもある。
そのまんま、というか、これのことですね。どうやらこういうことになっているのではないか、とここまで書いてきて思います。欠片なんですけど、繋がる。でも欠片としてしか掘り出せない。欠片なら掘り出すことができる。そして、平面の欠片に見えてたものが立体になる。そういうふうになっていけばいいんじゃないかと思います。そうなっててくれてたらいいんですけどね。たぶんそうなってるんじゃないかと思ってるんですが、こればっかりは全部掘り出してみないとわかりません。勘です。これは日本沈没の田所博士の名台詞。全部掘り出せるのかな。
【ほぼ百字小説】(4140) 晴れているのに星がないのは、ここから先にはもう何もない世界の終わりと呼ばれる場所だから。そこに人々が集まったのもそう。選ばれたのではなくそこを選んだ者たちが、世界の終わりで世界が終わるのを待っている。
ブンゲイファイトクラブというイベントがあって、ようするに原稿用紙六枚までの小説でトーナメントをする、というやつなんですが、そこに出すやつを書くときにメモとして書いたやつ。これと、実際に芝居を見に行ったときに書いたもうひとつの百字を六枚にしました。最近はわりとよくこの方法を使います。まずマイクロノベルを書いて、そこから膨らませていくやり方ですね。
ここにある「終わりについて」というのがそれ。世界の終わりに集まる話です。
そして、もうひとつの百字がこれ。
【ほぼ百字小説】(3438) 最後に巨人が出現する。もっとも出現するだけで何もしない。歩いて出てきて、そこに立っているだけ。だが、それが巨人の役割であり、それだけで観ている者たちはすべてが終わったことを心の底で受け取って納得する。
これは、「のらぼう」という劇団のテント芝居を京都で観たときに書いたもの。最後に巨人が登場するのもそのまんま。登場してなんにもしないのもそのまんま。この二つを合わせて書いたのが、「終わりについて」。だからこの中に出てくるほとんどの部分は実際にあったこととそれを見て思ったことをそのまんま書いただけ、ということになります。自分でもちょっと呆れます。でもまあ私の小説って、じつはぜんぶそんな書き方なんですよ。
11月2日(水)
【ほぼ百字小説】(4141) 緑色のぬるぬるが乾いてかぴかぴ。そこに如雨露で水をかけながら端から磨いていく。緑色の水が流れ落ちると六角形の年輪がくっきり。もぞもぞ動くが逃げないから嫌でもないのかな。亀の甲羅磨きには歯ブラシが便利。
このあいだあったことそのまんま。というか、毎年のことなんですが、これまでは亀の子タワシで磨いてました。歯ブラシのほうが小回りが利いて使いやすいです。亀ブラシとして売り出したらいいんじゃないかな。
【ほぼ百字小説】(4142) 冬眠前の亀の甲羅を歯ブラシで磨きながら、歯医者で歯の掃除をしてもらっているのを思い浮かべる。こいつはどう思っているのだろう。磨くほうがいいのかどうかもじつはわからないのだが、おもしろいから磨いている。
これも亀あるある、なのかどうかは知りませんが、よく思うことで、実際のところどうなのかなあ。けっこう気持ちよさそうではあるんですけどね。でも亀の気持ちはわからないからなあ。気持ちがあるのかどうかも含めて。
【ほぼ百字小説】(4143) 冷たい雨の中、あのもこもこしたものがあった空き地を見下ろす電線に雀がびっしり並んでいる。どの雀も何もない空き地の方を向いていて、何かを待っているように見えるが、いったい何を待っているのかはわからない。
これまた、あったことそのまんま。あれは何をやってるのかなあ。ヒチコックの雀、という感じでした。
【ほぼ百字小説】(4144) 朝から雨で、それはもうすっかり冬の雨で、物干しの亀は盥の水の底で眠っている。甲羅を磨いてやったばかりなのに、このまま水中で冬眠か。そうなるとまた甲羅は緑色のぬるぬるだ。亀は知ったことではないだろうが。
また亀か、と思われるでしょうが、あったことそのまんま。亀あるある、今ココ、という感じ。こうなってます。寝てます。
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?