見出し画像

最近の【ほぼ百字小説】 2024年11月9日~

【ほぼ百字小説】をひとつツイート(ポスト)したら、こっちでそれに関してあれこれ書いて、それが20篇くらい溜まったら、まとめて朗読して終わり、という形式でやってます。気が向いたらおつきあいください。


11月9日(土)

【ほぼ百字小説】(5546) 同じ場所で同じ時間に起こったことを繰り返して、少しずつそこへ近づいていく。到達できるかどうかわからないし、到達してもそれが本当とは限らない。いや、そもそも全部、嘘。こうして集まった我々も全部。これも。

 芝居の稽古の終盤、もうすぐ劇場入り、というあたりで書いたやつ。まあそのまんまですね。でも、演劇の話だと書かなければ、いろんなふうに解釈できて、それはそれでおもしろいと思う。

【ほぼ百字小説】(5547) 明日から劇場入り。これでもう稽古はない。本番よりもはるかに多い回数繰り返したあの奇妙な日々が終わってしまうのは、すこし残念だったりもする。もちろん劇場に入ればそんなこと思っている場合ではないだろうが。

 稽古場日記の最後みたいな感じですね。考えたら、本番なんて4日ほどしかないですからね。稽古は何ヶ月もある。当たり前ですが、考えたら不思議です。

11月10日(日)

【ほぼ百字小説】(5548) 朝から劇場入りして、まず機材の搬入の手伝い。普段は閉じられている搬入口が大きく開くと近くの空港から斜めに上昇していく旅客機が見える。すこしうらやましくなるが、まあ我々も今からここではないところに行く。

 ということで、『みえない』日記の続き。稽古の日々が終わって劇場に入りました。場所は伊丹なので、飛行場が近い。上昇していく飛行機はいいですね。

【ほぼ百字小説】(5549) 暗転でもないのに真っ暗になることがあって、それはこの劇場に棲んでいる狸がいたずらをしているらしい。だが、劇場に棲みつくほどの芝居好きの狸だけあって、本番中にそんないたずらはしないから、心配はいらない。

 芝居の暗転というのは、すごく不思議なものです。いちど真っ暗になると、次はどんなシーンから始まってもいい。時間も空間もぶっとばしてしまえる魔法なんですね。そして『みえない』というこの芝居は、暗転以外にもうひとつ暗闇を使う舞台でした。まあそれでこんなことを考えたのかな。もちろんこれは嘘ですよ。芝居と言えば狸。いろんな劇場でやるたびに、この劇場に狸はいるかな、とか思う。狸が芝居好き、というのはこの【ほぼ百字小説】世界では決め事になってます。

【ほぼ百字小説】(5550) 闇がまんべんなく広がれるようにあらかじめほぐしておく仕事。縮こまった闇をそっとほぐしていくと、隙間から端切れのような闇が出てくることがある。そんな小さな闇がこわごわと、でも力強く飛んでいく様が好きだ。

 劇場入りして舞台づくりが始まって、これは舞台の暗幕、舞台袖の幕とかを広げていく作業をしているときのこと。なんとなく翼を畳んでいる蝙蝠みたいな感じがして。後ろの方は、家が取り壊されるときに壁の隙間に蝙蝠がいて、それが飛んで逃げていくのを見たときのイメージが入ってるかな。子供の頃に見た光景。最初ぷるぷる震えて縮こまってたのが、飛んでいったところ。

11月11日(月)

【ほぼ百字小説】(5551) 百字の劇場を持っている。百字しか入らない箱ではあるが、百字にさえできればどんなものでも入れることができる。ずっとそう思ってきたが、考えたらこの自分もまた、その劇場の中にいるのかな、とか、今さらながら。

ここから先は

8,381字 / 2画像 / 3ファイル

¥ 100

期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?