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界 霧島 | 思いのままに、旅をして

「どっちでもいい」とわたしはよく言う。関心がないのではない、本当にどちらでもいい、どちらもいい、だから「どっちでもいい。」と言ってしまう。

わたしには姉と弟がいて、ふたりは自分の意思をいつも持っていた。断固としてコレがいい、という明確な意思。わたしはいつもどちらでもよかった。なのに、3人の中で答えが一番遅いわたしが同点の多数決の最後の票を入れる役目になってしまう。本当にいつも嫌な役目だなあと思っていた。

とか言いつつ、勘は働くので、「あ、これは今すぐ行くべきだな。」と思い立って翌月の旅行を計画したり、「今は離れていたほうがいいな。」とそっと人間関係をセーブしたり、そういうのはなんの根拠もなしに決めることができてしまう。そして、そういう感覚的なものをわたしは心から大事にしている。今日は、そうやって大事にしている感覚で、「あ、これは行かなきゃ。」と思って出かけた旅のことを書こうと思います。


「父の三回忌で鹿児島に帰るんだけど、来る?」突然鳴った携帯の通知を見ると、ゆかりさんから連絡が来ていた。ゆかりさんはわたしの大学時代のアルバイト先の主婦さんで、母と同い年。わたしにとってもうひとりの母のような、友だちのような、そういう人だった。

ゆかりさんは本当にパワフルで、バイト終わりの深夜にラーメンに付き合ってくれたりする。恋に、就活に、悩みに悩むとわたしはいつもゆかりさんに連絡をした。ゆかりさんはすぐに「今日、会えるの?」と言って、わたしより背の低い小さなゆかりさんの身体に見合わないでっかい車を運転して家まで迎えに来てくれる。わたしたちはファミレスに入って、ドリンクバーでだらだら何時間も話をした。傍から見たら親子である。

いつだったか、アルバイト先近くのガストが24時間営業から深夜2時までの営業になって誰よりも残念がっていたのはゆかりさんだったような、気がする。

ゆかりさんは、わたしにとって、この優柔不断な、どちらでもいい精神のわたしが何かを決めるには必要な人なのである。

ゆかりさんの実家は鹿児島で、多忙なゆかりさんが休みをとって鹿児島に帰るという。今回は少し余裕もあるようで、それならば一緒に観光もしようよ、となり、わたしも行くことにした。なんとなく、これは絶対に行ったほうがいいと思った。

そういえばおととし、福岡へ、これもまたアルバイト先の同じだった先輩に会いにゆかりさんと行った。ゆかりさんはなんと日帰りだった。翌日はオープンでシフトに入るという。なんてこと。とにかくそういう人だった。ゆかりさんとどこかへ出かけるのはそれ以来。今回は泊まりで行けるというのでホッとした。

ゆかりさんの実家からほど近い「界 霧島」に1泊することにした。ゆかりさんは一泊、翌日に法事に出て帰るとのこと。わたしはゆかりさんと一泊したあと、ふらりとひとりで周ろうかななんて適当に考えていた。

早朝の空港でゆかりさんと待ち合わせをする。会うのはひさびさで少し緊張をした。でも会ってしまえば、旅へのワクワクだけが残る。あとはもうゆかりさんがいるという安心感である。

成田から鹿児島空港まではあっという間だった。わたしたちはレンタカーをして、有形文化財をリノベーションしてオープンしてスターバックス鹿児島仙巌園店へ向かった。旧薩摩藩島津家の歴史的文化財だというその建物はやはり特別な雰囲気を放っていた。過去と現在が繋がっている、そういう空間にいると自分がどの時空に生きているのか分からなくなる。その感覚はふわりふわりとしていて、どこまでも行ける気にさせてくれる。東洋と西洋、そして手仕事と工業、それらが全部繋がっているのだと思える場所だった。

そのあと「桜島に行こう」となり、車ごとフェリーに乗船した。フェリーに車で乗るのは初めてである。途中車を降りて船の上に行った。九州の海を見るのは初めてだった。フェリーに乗るといつも映画「フィッシュストーリー」を思い出す。夫が好きなフェリーのシーンがあって、その話を何度もされた。フェリーの中でそのことを思い出した。

20分ほどすると桜島に着いた。あっという間。わたしたちは車で降りて、ぐるりと一周桜島を回った。帰りはそのまま市街へ。霧島方面へ向かう。

これがあの桜島かあ、と思いながら。あちらこちらに火山岩があって、不思議な光景だった。今すぐにでも噴火してもおかしくないのに、のんきにドライブしているわたしたちは愚かだなぁ、と思った。全てのことについて、そうである。わたしたちは予測することが苦手で、起きてみないと分からない。起きてみて、やっとあたふたし始める。人間とは愚かな生き物なのである。

道の駅に寄り、お土産をいくつか。もらったときの一瞬の盛り上がりをピークに、あとは埃をかぶることになるだろう、ということを覚悟で火山灰を買った。案の定、夫にあげたこの火山灰は夫の実家で埃をかぶっていた。とほほ。いえ、覚悟の上でした。

そうして霧島方面へ向かう。霧島神宮に寄り参拝。建国神話の主人公である瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)を祀った霧島神宮。深い緑に囲まれた参道を抜けると、国宝にも指定されたというその朱く塗られた神殿が青い空に綺麗に映えていた。標高も高いところにあるせいか、より一層神聖な感じがした。さっと吹き抜ける空気が、いつもと違う感じがした(気のせいかも…)なんとなく「行かなくちゃ。」という思いで感覚的に決めたこの旅。やっぱり来るべきだったな、という気が改めてした。思いのままに、来てよかった。

霧島神宮をあとにし、さらに進んでいくと、界 霧島に辿り付いた。

▼つづき▼

▼界 霧島公式サイト▼


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Yuuri
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