OMO3札幌すすきの | 東京のネオンと同じだと思っていたのに
白老を出たわたしたちは札幌に向かった。夏の北海道でやり残した『ジンギスカンを食べる』ということを、今旅でやり遂げるためである。夜は札幌でジンギスカンを食べ、明日東京へ戻る。冬の北海道旅はまだ終わらないのである。
雪がしんしんと降る1月の北海道。北海道を、いや日本を代表する繁華街・すすきのの街を身体を寄せ合って歩いた。札幌なんて東京みたいなものであろう、と思っていたわたし。だけれど、この街にきらきらと光るネオンは東京のそれとはまた違うものだった。ネオンが光るたびに、空から降り注ぐ細やかな雪たちもきらきらと舞う。それは芸術そのものだし、温かみのある光だった。雪が降るだけで、そこは異世界と化す。千葉に暮らすわたしたちにとってはそういう世界だ。
車がとってもゆっくり走っていた。すべらないように、ぶつからないように。
車がゆっくり走っている風景がなんとなく好きだ。中学生のころ、家から学校まではすごく遠くて、30分ほどかけて徒歩通学をしていた。台風の日や、雪の降った次の日の朝は、車がゆっくり、慎重に走っていて、いつもは止まってくれない横断歩道の車もすぐ止まる。みんな慎重で、みんなゆっくりで、みんながちょっとの優しさを持っていて。それですごく好きだった。
そういう風景がここにはいつものようにあるのか、と思うと、ちょっといいなぁと思った。わたしは専ら暖かい場所が好きなのだけれど、雪国には雪国の良さがあるんだろうと知った。
今夜の宿はこちらも界ポロトに続いて、開業したばかりのOMO3札幌すすきの。すすきの駅から徒歩5分という好立地。昼過ぎにすすきのに着いたわたしたちは、荷物を預けてチェックイン。入り口にある看板のネオンが、夜の街歩きを楽しみにさせてくれる。
ところで、OMOのうしろにくるこの数字。この数字を理解すると、旅にぴったりのOMOと出会うことができるのです。数字には『1』『3』『5』『7』そして『エアポート』がある。今回泊まるのは『3』。『3』は、”気軽に嬉しい、ベーシックホテル”。うんうん、今回の旅にぴったりそう。
わたしたちは、ロビーにある『ご近所マップ』(近所のおすすめがマップ上に載っている大きな図面)を隅から隅まで見て行き先を考えた。しばらくご近所マップとにらめっこしていると、スタッフの男性が声をかけてくれた。ジンギスカンを食べたいということを伝えるといくつか候補をくれた。わたしたちはその中から、「山小屋」というお店を選んだ。
お店はカウンター席になっていて、お母さんが手際よくカウンター内を仕切っていた。忙しそうに、でも丁寧に声をかけてくれた。ビニール袋を渡してくれて「これに上着いれてね。におい、気になるでしょう。」と。こういうなんでもない心遣いが嬉しいものである。
今朝仕入れたという生ラム。そして、エゾシカ肉をいただいた。身がしまっていて、余分な脂がなく、すっと胃に落ちていった。きんきんに冷えたビールを、暖房がよく効いた店内でぐびっと。ひとつ、ひとつの味わい深さ。そしてお母さんが丁寧に焼いてくれた、ということがより一層、満足感を助長した。
北海道の恵みは計り知れないなと改めて思う。ビール、ラム、ビール、玉ねぎ、エゾ鹿、ビール、もやし。噛めば噛むほど感じる旨味を順番に味わった。
わたしたちが大満足でお店を出る時、忙しい店内にも関わらず、お母さんは店の外まで見送りに来てくれた。嬉しくて写真を一緒に撮った。お母さんに何度もお礼を伝えて、夜の街へ向かった。
しばらく、ただただ街を歩いた。雪はまだ降っている。降っても降っても降っている。いつか温暖化がもっともっと深刻になって、こうして雪が降る景色を見れなくなるのかと思うと本当に嫌だなあという気持ちになった。この雪はどこからきて、これを辿っていくとどこが境目になっているんだろう。そういうことをずっと考えていた。
雨が雪に変わる原理なんて小学生の理科の授業で習ったはずだけれど、そういう理屈ではない、もっとこう、なんていうか世界の不思議というか、真理というか、そういうことについて考えたくなるような、そういう気分だった。
しばらく歩いていると小腹が空いたので、わたしたちは新ラーメン横丁に行き、ラーメンと丼ものをひとつずつ頼んだ。入ったお店は『ふじ屋 NOODLE』。味噌マイスターである店主のこだわりの味噌ラーメンと焼豚丼をふたりで分け合った。さっきまであんなにお腹いっぱいだったのに、旅というのは不思議なもので、すぐに空腹にさせる。食は旅の醍醐味、だよね。本当に美味しかったな。
結局、ホテルに着く前にもコンビニに寄り、サッポロクラシックを買った。OMOのラウンジにあるOMO Food&Drink station(おつまみから軽食まで、朝ご飯にもなるような商品がたくさん売っている。)でおつまみをいくつか。お部屋に戻って、最後の夜を楽しむ。明日は空港で「ラーメン食べて帰ろうね。」なんて、さっきラーメン食べたばかりなのに、またラーメンの話をして(普段わたしはラーメンをあまり食べないのだが)そうして、すっかり眠りについたのである。
東京のネオンと同じだと思っていた繁華街のピカピカのライトたちは、ここでしか輝けない光なのだと思う。この地だからこそ、というのはやっぱりどこにでもあるんたな。