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界 霧島 | 神が宿る場所で

▼前回のnoteの続き


新しい匂いがした。まだ開業して間もない「界 霧島」。高千穂峰の中腹に建ち、全客室から桜島が見渡せるという。さっきまで桜島にいたのだけれど、こうして少し離れたところから見てみるとなんだかすごく遠くに感じた。

全室桜島ビュー

朝早かったからか、宿に無事ついてホッとしたからか、わたしもゆかりさんも気が抜けて、吸い込まれるように大浴場へ向かった。大浴場までは客室棟と高低差があるため、スロープカーで向かう。これだけでわくわくしてしまう。

露天風呂にはいると、目の前には草原のパノラマビューが広がる。鹿がやってくることもあるのだという。まだ明るいうちに入る温泉。いつもならPCを見つめている時間。”いつもなら”の時間と比べて、時間の流れ方に至福を感じるのは旅の醍醐味である。

露天風呂に入りながら、たくさんおしゃべりをした。いつもわたしばかり話してしまうので、ゆかりさんの話をこうしてじっくり聞くのは新鮮だった。内風呂にはあつ湯とぬる湯がある。あつ湯、そしてぬる湯、露天風呂、最後にぬる湯にはいることで湯の成分が肌になじみ、湯冷めしにくくなるという。最大限に温泉の効能を享受する知恵。話も盛り上がり、のぼせかけてしまったが、身体の芯から温まった。

湯上り処でふっとひと息、これもまた贅沢な時間。置いてあった黒酢のジュースをごくりごくりと飲む。身体中に染みわたっていくのがよく分かった。

夕食はどれも美味しかった。本当に。なんといっても黒豚。エネルギーがチャージされた。自然のもの、土地のもの、というのは食べた瞬間にパワーがみなぎる。

季節の会席

そして楽しみにしていた「ご当地楽」の時間。ご当地楽とは、その地域ならではの特徴的な魅力を楽しめるように、伝統工芸や芸能、食などを満喫できる界ならではのおもてなしのこと。これが本当に毎回楽しい。界に泊まる楽しみのひとつである。界霧島では「天孫降臨ENBU」が披露される。スタッフが神々に扮し、太鼓や神楽鈴を使い「天孫降臨」の物語を表現する。なんと迫力のあること。そしてなにより、これをスタッフがやっているのだからすごい。同僚でありながら本当に感心する。そしてこれが、星野リゾートの良さだと気づく。説得力を持って、土地を伝えていくこと。使命だと感じる。

ご当地楽「天空降臨ENBU」

翌朝、朝食へ向かう。あんなに昨晩たらふく食べたのに、旅のときの朝ご飯はいくらでも食べらえてしまう。ご飯のお供も多いから、なおさら。かつおぶしだけで、こんなにご飯がすすんだことがあるだろうか。おひつからあと一口、あと一口と何度もお代わりしてしまった。

お土産に、と火山灰で出来たマグカップをゆかりさんが買ってくれた。わたしと夫の分も。内側が青色のものと、黄色のもの。いまでも大事に大事に使っています。ちなみにこのブランド、めちゃくちゃかわいい。

名残惜しい気持ちでチェックアウトし、ゆかりさんの実家にもお邪魔した。ゆかりさんのお母さん、弟さん家族が迎えてくれた。親子みたいなふたりが、やってきてちょっと驚いていた。わたしとゆかりさん、やはり傍から見たら不思議な関係なのだろう。

ゆかりさんはこれで帰ってしまうけれど、わたしはあと2泊ほどひとりでふらりとする予定だった。市内に宿を取って適当にまわろうか、と思っていたのだけれど、「それならうちに泊まれば?」とゆかりさんが。ゆかりさんのお母さんも「そうしなさいよ。」と。ゆかりさん不在の中、いいんだろうか、と思いつつ、でも気持ちは決まっていた。「お願いします!」ということで、そのあと2泊わたしはゆかりさんの実家に泊まることに。

そのあとの2日間。本当に心に残る時間を過ごした。あの頃はコロナ禍だったから、旅をするのもすこし不安があって、自分はいいけれど、誰かを誘ったり、会ったりすることに心配もあって、だけれど、はじめましての東京からやってきたわたしのことを、心から迎え入れてくれたこと。世界は変わってしまったけれど、変わらない気持ちや、感動がずっとあるのだと知った。

旅は終わらないことを教えてくれた。人と人はいつまでも出会えるのだと教えてくれた。今回はゆかりさんのお父さんが引き寄せてくれたのだと思う。思うままに、引き寄せられるままに、いつまでも自由に旅をしていたい。

▼界 霧島▼


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Yuuri
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