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ニーチェ「理想の世界の創造 空想の価値と芸術の追求」

理想の世界を想像してください。空想には無限の可能性が広がっています。そこでは、あらゆる理想の世界を創造することができます。

その空想の世界にも価値があります。現実的なものだけに価値があるのではなく、空想にも価値があります。現実的なものを作ることだけが芸術ではありません。理想の世界を想像することも立派な芸術活動です。

芸術活動は魂を充実させます。創造と美をどこまでも追求することが人生です。

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『悲劇の誕生』はそもそも「生存と世界」とを「一つの美的現象としてのみ」、すなわち芸術作品として是認しようとする試みであり、力点は世界そのものの「美」の問題に置かれている。
梅田孝太『ニーチェ 外なき内を生きる思想』 (法政大学出版局)p48

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夢の世界の産出という点ではあらゆる人間が十全な芸術家なのであるが、この世界の美しい仮象はすべての造形芸術の前提であり、それどころか、後述するように、文芸の重要な一半でもある。

〔夢のなかで〕われわれは直接的な理解において形姿を享受するし、すべての形式がわれわれに語りかけ、どうでもいいもの、不必要なものはなにひとつ存在しない。

この夢の現実の最高の生に参与しながらも、われわれはやはりそれが仮象であるという、一貫して流れる微かな知覚を持っている。

少なくとも私の経験ではそうであって、この経験の多発性、のみならず正常性については、あまたの詩人たちの証言と発言を援用することもできよう。

哲学的な人間ならば、われわれの生き、存在するこの現実の下に、第二のまったく別個の隠された現実があり、したがって第一の現実もまた仮象であろうという予感をさえ持つのである。
ニーチェ. 『悲劇の誕生』. 浅井真男訳. 『ニーチェ全集 第一巻』. 白水社, 1979年(初版), 1984年(二刷), pp. 30-31.

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