ゾロアスター教と吉田神道──アフラ・マズダと天照大神
ゾロアスター教は、紀元前6世紀頃に古代ペルシア(現在のイラン)で預言者ゾロアスター(またはザラスシュトラ)によって広められた宗教であり、世界で最も古い一神教の一つとされています。アフラ・マズダは、ゾロアスターが明確に定義した唯一の創造神であり、元々は古代イランの宗教体系の中で善の神として信仰されていた存在です。アフラ・マズダの位置づけは以下のように重要です。
1. 唯一神としての位置づけ
ゾロアスターはアフラ・マズダを唯一の創造神とし、他の神々や精霊とは明確に区別しました。これにより、ゾロアスター教は一神教の要素を強く持つこととなります。この一神教は、厳密には単一的一神教に分類されます。つまり、アフラ・マズダを唯一の崇拝対象としながらも、悪の神アーリマンの存在を認めています。
2. 善悪の二元論
アフラ・マズダは善と光の象徴として位置づけられ、対立する存在であるアーリマン(悪の神)との二元的な関係が強調されます。この善悪の対立が、宇宙や人間の選択における中心的なテーマとなります。
3. 教義の形成
ゾロアスターはアフラ・マズダを通じて、倫理的な教えや終末論を体系化しました。アフラ・マズダの意志に従うことが、信者にとって重要な道徳的義務となりました。
このように、アフラ・マズダはもともと存在していた神でありながら、ゾロアスター教の教義の中で新たな意味を持つ神といえます。
一方、神道においても天照大神は重要な存在であり、特に吉田神道などの流派では一神教的な要素が強調されました。
1. 天照大神の位置づけ
天照大神は、日本の神々の中で最も尊敬される存在であり、太陽の女神として知られています。彼女は天皇家の祖先とされ、国家の安寧や繁栄に大きな影響を与える神とされています。
2. 吉田神道の影響
吉田神道は、江戸時代に成立した神道の一派で、特に天照大神を中心とした教義が強調されます。吉田神道では、天照大神が最高神として崇められ、他の神々は彼女のもとに従属する存在とされることが多く、排他的一神教的な要素が見られます。
3. 神道の多神教的要素とのバランス
ただし、神道は多神教的な性格も持ち合わせているため、天照大神が最高神として祭り上げられる一方で、他の神々や精霊たちも重要な役割を果たしています。このため、吉田神道においても天照大神を中心とした一神教的な要素と、多神教的な要素のバランスが存在します。
このように、ゾロアスター教のアフラ・マズダと吉田神道の天照大神は、それぞれの宗教において重要な神でありながら、特定の流派や教義においては、一神教的な特徴が強調されることがあります。また、一神教も細かく分類すると、排他的、包括的、単一的に分けられ、それぞれの信仰のあり方に多様な表現が見られることがわかります。
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付録
一神教は、細かく分類すると主に次の三つに分けられます。
1. 排他的一神教
これは、唯一の神のみが真実であり、他の神々は存在しないか偽りであるとする考え方です。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教などが代表例です。これらの宗教では、一神が絶対的な存在であり、他の神々を信仰することは認められません。
2. 包括的一神教
一つの神が存在するが、その神は他の宗教の神々とも本質的に同じ存在だとする考え方です。異なる神々がすべて同一の神を表している、あるいはその神の異なる側面であると見なされることがあります。ヒンドゥー教の一部やバハイ教が、この考え方に近い要素を持っています。
3. 単一的一神教(単一神教)
単一神が唯一の崇拝対象であるが、他の神々の存在も否定はしないという形態です。古代エジプトのアテン信仰や、ゾロアスター教がこの分類に当てはまります。ゾロアスター教ではアフラ・マズダが唯一の創造神として崇拝されるものの、悪の神アーリマンなど他の神的存在も認識されています。