詩 / 穴
穴がある
おいしいお菓子でも
すてきな音楽でも
名作映画でも
どうにもうまらない 穴がある
さみしさや
むなしさや
もの足りなさが
もれ出てくるように思える
おそろしい その穴
その穴を じっと見る
正面から 見つめてみる
そうすれば
なんてことはない
その穴は
生まれてからしぬまで共にある
わたしの一部をなす
ただの穴
うめる必要もなく
むりに昇華する必要もない
そこにあるだけの
ただの穴だ
***
孤独とどう付き合っていくか、わたしのなかでかなり大きなテーマだ。
今までは、孤独感をどうにかして克服しようとしていた。なにかで埋めようと頑張っていた。他者に頼らず、本や映画など、自分ひとりで楽しめるもので埋めることができれば、それはちゃんと孤独と向き合っていることになるんだと思っていた。
でもなんだか最近、「孤独は、埋めずようともせず、当たり前にあるものとして、ただ受け入れる」というのがいいんじゃないか、と思うようになった。恐れずに真っ直ぐ見つめてみれば、それは毒や牙を持っているわけでもなし、ただの穴のようなものにすぎない。恐るるに足りないものだ、と。
例えばパートナーができて、孤独が埋まったように感じても、病気や事故でいつその存在が失われるかはわからない。孤独は完全に克服することなんて、本質的に不可能だ。だからやっぱり、孤独とどう向き合うか、というのは、なるべく早く自分なりのスタンスを確立しておきたい人生の課題だと思う。
「孤独を克服しようとせずに、ただその存在を自分の一部としてみとめる」というのは、あくまで現時点での私がたどり着いた暫定解だ。これからまた変化するかもしれない。この詩をもって、現在地の記録としたい。