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【言葉と言葉遣いに思うこと①】よく見聞きする3つの言葉遣い:その1「~させていただきます」

“不定期連載” と銘打ったのを良いことに,1年も間を空けてしまいすみません。弁解すると,前回の投稿後にすぐ取り掛かろうとは思っていました。しかし日々の作業に追われるうち,優先順位が付けられなくなり今日こんにちに至った次第です・・・。

さて,本題に入ります。第1回は「よく見聞きする3つの言葉遣い」。具体的には次の通りです。

1. ~させていただきます
2. ~と思います
3. ~になります

今回は「~させていただきます」についての持論です。なお,初めは3つまとめたブログにするつもりでしたが,思いのほか長くなったので1つずつ投稿します。


1. ~させていただきます

①意味

『三省堂国語辞典 第六版 [小型版] 』(2010年) によると,「させていただく」の意味は2つあります。1つ目は「許しをもらってするときの、けんそんした言い方」。2つ目は「許しをもらってするかのように・・・・・・・・・・・・・・、自分の動作をけんそんする言い方」です(※共に抜粋)。また,後者の例文には「〔ばかていねいな表現で〕反省させていただきます」とも載っていました。

②違和感のある使い方

「~させていただきます」に抱いていた違和感の正体。それは〔ばかていねいな表現〕に対するものでした。ここでは,私が違和感をもった,もとい〔ばかていねいな〕使い方を例に持論を述べていきます(※下記4つのうち,最後はおまけです)。

*【“~させていただきます” を繰り返す】使い方
*【間違ってはいないけど遠回し】な使い方
*【自らの意思なのに,“許しをもらってするかのよう” 】な使い方
*「やらせていただきます」という言葉遣い

まずは,【 “~させていただきます” を繰り返す】使い方から。

(例)
この度は〇〇させていただきたく,△△させていただきました。また,□□については××させていただいて大変ありがたく思っております。

一言で表すならただ諄い。「させていただきます」ばかりが目に付いて,肝心の内容が伝わってきません。口に出したときも言いにくそうで,印象が悪いです。丁寧に伝えたいのなら,「この度は〇〇したく△△致しました。また,(中略) ××できて大変ありがたく~」のように言えば充分だと思います。

次に【間違ってはいないけど遠回し】な使い方。

(例)
*〇〇さんに楽曲を提供させていただきました。
*△△(場所)で□□を教えさせていただきました。

①でも述べた通り,相手の許しをもらったり依頼を受けたりしたのなら「させていただいた」ことに間違いはないです。ただ少し遠回しな印象があります。よって両者間のときは「提供(教え)させていただきます」,第三者に伝えるときは「提供致しました」「お教えしました」と使い分けても良いのではないでしょうか。

更には【自らの意思なのに,“許しをもらってするかのよう” 】 な使い方。そのほとんどが二重敬語です。

(例)
* 〇〇しましたことをご報告させていただきます
*その件については,コメントを差し控えさせていただきます
*お付き合いさせていただいています
*拝見させていただいています

いずれも自らの意思なのは明らか。それに2つ目以外は「謙譲語+謙譲語 (→二重敬語) 」の形です。これらは言わずもがな「ご報告します」「差し控えます」「お付き合いしています」「拝見しています」が適切ですね。

最後にもう1つ。どうしても引っ掛かるのが「やらせていただきます」という言葉遣い。『日本人の知らない日本語3 祝!卒業編』では,著者であるコピーライターの蛇蔵へびぞうさん(漫画担当)と日本語教師の海野凪子うみのなぎこさん(原案担当)が,次のように会話しています。

【蛇蔵さん】
最近よく聞くあやしい謙譲語「やらせていただきます」はどう思う?

【海野凪子さん】
う〜ん。「やる」は口語的な言葉なので,あらたまった場面では使いにくいよね。「させていただく」でいいのに・・・。
丁寧に聞こえると思っているのかな・・・。

(※句読点を付け加える等して一部修正済み)

『日本人の知らない日本語3 祝!卒業編』蛇蔵&海野凪子(2012年)より

“「やる」は口語的な言葉(→話し言葉)” とあるように,先述の辞書にも “「する」のくだけた言い方” だと載っています。 “あらたまった場面では使いにくい” と言っているのは,それが理由なのかもしれません。

ただ,私が引っ掛かる理由は他にあります。「やる」という言葉は,性的な意味や命を奪う意味でも使われます。それが頭にあるので,「やらせていただきます」にどうしても良いイメージをもてません。あまり堅苦しくない言葉遣いなのは理解できますが,私も “「させていただく」でいいのに” と思う1人です。

③私ならこう使う!

「~させていただきます」という言葉遣い。私なら,相手の許しをもらったり依頼を受けたりするときのみ使います。諄くならないよう,使うのは1回だけ。後は他の謙譲語(「〇〇致しました」「お(orご)〇〇します」等)に言い換える。これで言いにくさも軽減できるのではないでしょうか。

「~させていただきます」ばかりにこだわっていては,上辺の謙遜だと思われかねません。何を伝えたいのか分かるような言葉遣いができたら良いですね。

*最後に*

いかがでしたか? 私の中では,“違和感のある言葉遣いランキング第1位” なのでつい内容が長くなってしまいました(笑)。「~させていただきます」については,『「させていただく」の使い方』という本を買ったので機会があればまたnoteで取り上げたいです。

最後までありがとうございました。次回も読んでいただけたら嬉しいです!


次回 タイトル予告

【言葉と言葉遣いに思うこと①】よく見聞きする3つの言葉遣い:その2「~と思います」
※投稿後,リンクを貼ります※




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