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万葉集の巻8「夏の雑歌(ぞうか)」より個人的ベスト3をご紹介♪

土用の丑の日も過ぎ、夏も残りわずか。
昼間の外では熱気で、建物の中では冷蔵庫のような寒さにクラクラし通しの絵本作家のまつしたゆうりです。
「生肉じゃないんだし、そこまで冷やさなくても…」
と思っているのは私だけでしょうか。

さて、今日は万葉集の巻8に収められている
「夏の雑歌(ぞうか)」の中から「これはオススメしたい…!」
という選りすぐりをお届けしたいと思います。

万葉集は全20巻

あまり知られていないかもしれませんが
万葉集は全20巻から成ります。

巻ごとに特徴があり、この巻8は
春夏秋冬の「雑歌」が載っている仕様で、
初心者でも取っつきやすい巻じゃないかなあ〜と
いう印象です。

雑歌とは

雑歌(ぞうか)とは、雑な歌ということではありません(笑)。

万葉集の公式の3つのジャンル分け
(三大部立(さんだいぶだて))のうちのひとつで
1番公的なものだったりします(意外!)。

①雑歌(ぞうか)
公的な歌。他の部立より優先して掲載。
宮廷儀式・行幸・饗宴などで詠まれた。
②相聞(そうもん)
私的な歌。歌数は1番多い。
男女の恋歌がほとんどだが、親族・肉親・友人間の歌も。
③挽歌(ばんか)
人の死にまつわる歌。
辞世歌・死者追慕の歌・死を悼む歌など幅広い。
もともとは「棺を挽(ひ)く者が歌う歌」の意味。

『よみたい万葉集』P.4 「基礎のキソ」より

なので、割と名前の知れた人々の
季節にまつわるお歌を知れるので、
「あの歌人(有名人)の歌を知りたい!」
というときに、開いてみるといいかもしれません。

ベスト1の歌は何といってもこれ!

万葉集 1500 大伴坂上郎女

夏の野の 繁みに咲ける 姫百合の
 知らえぬ恋は 苦しきものそ

《訳》夏の野の繁みにひっそりと咲いている姫百合のように
あなたに知られない私の恋は、苦しいものです。

広い夏の野から、限定された繁みに、そこからさらに
一輪の姫百合にフォーカスされていく映像、
そこからパンッと内面世界に切り替わるのも見事ですよね!

夏草の濃い緑と、姫百合の赤の色の対比も鮮やかで、
押し付けがましくなく自分の想いを伝える
郎女ねえさんのバランス感覚の良さも垣間見えます。

大伴坂上郎女とは。

そう、思わず「ねえさん!」と呼びたくなる
雰囲気をまとう大伴坂上郎女さん。

大伴旅人亡きあと、大伴家の家刀自(一族の纏め役的な立場)
として頼りにされた人物です。

印象としては仕事も家庭もバリバリこなしちゃう
スーパーウーマンなイメージ(笑)。

“もっちゃん”こと大伴家持の歌の師匠だったのでは、
とも言われていますよね。

万葉集の名前の分かっている女性歌人の中では
1番多く歌が残っていて、しかも上手い!

恋人に宛てた情熱的な歌、
娘に宛てた思いやりのある歌、
家持との心温まる歌…
どれもしなやかに強く、ポンッと心に残るお歌です。

ベスト2は家持の弟!

万葉集を編纂したと言われている大伴家持の
弟はあまり知られていないかもしれません。

なぜなら早くに亡くなっていることもあり、
歌数も資料も多くないからです。

でも。
私はこの書持(ふみもち)くんをおおいに推したい!!

なぜなら、少ないながらも残された歌から見える
彼のお人柄が何とも柔らかく、思いやりにあふれる
メンタル素敵イケメンに思えてならないのです…!

万葉集 1481 大伴書持

我が宿の 花橘に
 霍公鳥 今こそ鳴かめ 友に逢へるとき

《訳》ぼくの庭の花橘に、ホトトギスよ、
   今こそ鳴いておくれ。友に逢う時に。

自分が楽しむときではなく、
大切な友が来てくれた時だから、
夏を告げる鳥「ホトトギス」の声を
「ぜひとも友に聞かせたい!」
(しかも花の咲く橘という季節モノとセットで)
という心が何とも素晴らしく…!!

書持こと“ふみちゃん”(勝手にあだ名)は
ガーデニングがご趣味だったそう。

花橘は、きっと一年かけて「花が綺麗に咲くように」と
手入れして、育ててきたんだと思います。

家持こと“もっちゃん”が、結構めんどくさい性格っぽいので
ふみちゃんは、そんなお兄ちゃんのメンタルケアを
そっとしてあげていたんじゃないのかしら…と
思わずにはいられない遣り取り歌もあったりします。(笑)

(今度ふみちゃん特集の回したい!)

ベスト3は満を持して、このお方!

そんな噂の家持こと“もっちゃん”の歌を最後にご紹介。

大伴家持の霍公鳥(ホトトギス)の
晩(おそ)く喧(な)くを恨みたる歌二首
万葉集 1486 大伴家持
  
我が宿の 花橘を 霍公鳥
 来鳴かず地に 散らしてむとか

《訳》ぼくの庭の花橘を、ホトトギスが来て
   鳴かずに地面に散らしてしまうのか…!
万葉集 1487 大伴家持

霍公鳥 思はずありき
 木(こ)の暗(くれ)の かくなるまでに なにか来鳴かぬ

《訳》ホトトギスよ、思いもしなかった!
   木の下の茂みが、こんなに暗くなるまで
   なんで来て鳴いてくれないの?!

……この、同じホトトギスの歌の違いよ…!!(笑)

わざわざ題詞(だいし)(歌の前に付く前書きみたいなもの)
に「ホトトギスが来ないのを恨む」なんて書いてる人、
もっちゃんくらいだし!

とりあえず、自分が聞きたいのよね。
ホトトギスが大好きなのは伝わってくるよ…。

このホトトギス愛は周りの人にも知られていたみたいで
友達や恋人から「ウチの庭のホトトギス、
あなたのお庭に行けって言うといたよ」的な
歌を送ってもらってます。

なんとなく放っとけない
愛されキャラだったんじゃないかな〜?
というのを遣り取りからひしひし感じて
ニンマリすること多々です(笑)

ホトトギスについてはギャラリーリールさんでの連載
にて少し触れております↓

夏の雑歌ベスト3、いかがだったでしょうか。

ベスト2以降は甲乙つけがたいものが多く、
赤人さんの歌も地味にいいよな〜と思いつつ
またどこかでご紹介できたらと思います!

今週のアーカイブ動画はこちら↓

来週は万葉集の七夕の歌

来週は立秋ということで、
万葉集では秋の風物、七夕のお歌をご紹介します!

キラキラしたお歌や七夕伝説に絡む歌など
人麻呂様の歌集の歌も多くて大好きな歌群ですー♪
お楽しみに!

☘️8/7(土)AM11:00〜
コメントにて質問などなど遣り取りできます、
リアタイ参加、お待ちしてますー*

絵本作家・万葉&民話作家 まつしたゆうり

「心をつなぐ扉を描く」水彩画

共感覚で感じる色と模様を描く。
昔から伝わる物語を、今に届く形にして
お届けしています*

大阪在住、滋賀県長浜出身
大阪芸術大学デザイン学科卒
🌟第5刷 『よみたい万葉集』

初心者から中級者まで楽しんでいただける入門書。
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一面に田んぼの広がる田舎町で、
虫と草花と、本を友として育ちました。

幼い頃から 古典と歴史と仏像と恐竜と特撮と漫画とアニメが大好き!
心に触れることで果てしない空想の旅を一緒にできるような作品を作っています。

ゆったり季節に寄り添う暮らしと、日々 野鳥観察&着物。
鳥は愛でるのも食べるのも好き。

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