減薬
リョウコはリストカットはしなくなったが
相変わらず
寝たら
「どんどん」と太ももや体をたたいていた
寝る前には
「入院しなければよかった」
とぐちぐちいう
しかし私は
それを淡々と見過ごしながら
過ごした
ただ、リョウコを受け入れる
リョウコがつらいことに思いを寄せる
様な毎日を送っていたような気がする
以前から気になっていたことがあった
「薬」だった
非常に重い薬をリョウコは飲んでいた
一番きついものを
最大限の量をのんでいた
あんなに暴れていたし
独房に入れられていたのだから
仕方がない
というか
精神科の世界では
それが「ガイドライン」なのかもしれない
しかし
その副作用には
リョウコのおかされているいろいろな症状が
当てはまるものが多くみられた
精神科の薬ってこんなものか
元々の症状は抑えられるけれど
違う症状がいっぱいありすぎないか
不安になっていた
また先生が診察で一度ぼそっとつぶやいた言葉も引っかかっていた
「リョウコさんは、違うかもしれないです・・・ね」
という言葉だった
もし、典型的ではなく
違うとしたら
飲んでいる薬で
リョウコの精神が不可逆的に変化してしまったとしたら
もう元のリョウコが戻ってこなかったとしたら
それはいやだ
それは嫌だ
コンサートに行ってキラキラしていたリョウコ
嵐が大好きで一生懸命誕生日に手紙を書いて「きっと読んでくれている」って毎年書いていたリョウコ
知らないお爺さんでも新聞配達のちょっとおかしなおじさんにでも
すぐに仲良しになれるリョウコ
そんなリョウコが戻ってこないとしたら
それは
リョウコが死んだと同じだ
それは私にはすなおに悲しいと思えた
リョウコがこの世からいなくなるのは嫌だった
だからリョウコが少しでも薬から抜けれるように
しないといけない
断薬の本を購入し読んだ
向精神薬は麻薬だから
禁断症状が出るとあった
恐ろしかった
しかし
飲み続けることの恐怖は
もっとだ
今やるしかない
徐々に減らしていった
3錠を2錠半を1週間
2錠半を2錠を1週間
2錠を1錠半を1週間の様に
徐々に
リョウコの薬を減らしていった
私はリョウコの先生に
手紙を書いた
「リョウコの薬を減らしてください
薬なしで
生活できるようにしたいです
方法は鍼灸です
主人は鍼灸師です
鍼灸でリョウコの身体をよくできます
先生にはお世話になっていますが
徐々に減らしていってもらえませんか」
おもいきって
主治医に渡すことにした
これは
リョウコの人生のためにできることであり
主治医に対する提案だった