心が動く企画のために大事な“感情移入”というプロセス
こんにちは。ていねい通販の戸田です。
ていねい通販は「すっぽん小町」を代表とした健康食品と化粧品のD2C企業です。僕たちは「1日でも長いお付き合い」というブランドポリシーのもと、お客さまと深く長い関係を築くことに重きを置いています。その結果として、定期購入の月次継続率は94%を超えることが出来ています。最近では、サブスクというビジネスモデルが注目されることもあって、セミナーや勉強会にお声掛けいただくことが増えてきました。そこで僕自身の知見が誰かのお役に立てるのであれば「シェアしたいな♪」というお節介のもとnoteを更新してみました。今回は、僕が企画を作る時に大事にしている“感情移入”について、ご紹介します。
マーケティングの世界では、企画を考える際にペルソナを設定するのが一般的です。
「名前は山田花子、年収は400万、神奈川県在住、趣味はヨガ・・・」
こういったものを見たことがあるかと思いますが、僕には架空のペルソナを設定するよりも、実際に接しているお客様や自分の身近な人を思い浮かべた方が、企画が磨かれるのではないか?と思う経験をしてきました。それは企画にとって一番大事なのは、ターゲットが明確なことよりも感情移入が出来るかどうかだったからです。
そこで今回は、そう考えるに至ったエピソードと具体的な取り組みについて、書いてみたいと思います。
(具体的な事例を書いているため長文となっています。思っていたnoteじゃないと思った方は回れ右でお願いします)
1.“手紙を書くように”。メール文へのこだわりがもたらした、数字だけじゃない成果。
ていねい通販では、定期購入をご注文のお客様に、通称「10日前メール」と呼ばれるメールを送っています。「10日前メール」とは、文字通り商品のお届け10日前にお知らせする自動配信メールのことです。次回の定期発送が不要であれば、そこから解約手続きを行ってもらえます。しかし多くのサブスク系サービスでは、このようなメールを送ることはあまりないと思います。発送日や更新日を事前にお知らせすることは、商品発送前の解約に繋がり、売上が落ちてしまうことが目に見えているからです。
気づかないまま継続してもらった方が短期的な売上は上がるかもしれません。でも、いざ届いたときのお客様の感情が「やめるの忘れてた!」や「まだ残ってるのに…」といったネガティブなものになってしまうことが、すごく悲しいなと感じたのです。
そもそも商品が突然届くというのは継続の意思の有無に関わらず、ある一定の不快感があります。どうせなら「気持ちよく」続けてもらいたいし、届くのを「楽しみ」にしていてほしい。それが買い物の一つの醍醐味でもあるから。
だから僕らは、お客様が自分の意思で「続ける」「止める」「遅らせる」が選択出来るように、商品発送の10日前にメールを送ることにしました。
その結果、年間の売上は一時的に1000万円ほど下落。届いてから気付いて解約する人が、届く前に解約することになったので当然ですが、この数字は長期的に見ると、かなり大きな痛手です。(いや短期でもヤバかったんですが笑)すぐに売上を回復させるには、このメール送信をやめることが一番手っ取り早いことはわかっていました。
でも、やめませんでした。
それがお客様にとって気持ちのいい状態であり、僕ら自身もお客様に対して誠実で在り続けたいと思ったからです。とはいえ、大きな売上の損失がある以上そのままにすることは出来ず、ていねい通販らしいやり方でなんとか出来ないかを模索しました。
そこで打開策として行ったのが、10日前メールの文章の変更です。
「事務的なお知らせだけの自動配信メールではなく、お客様との対話になるようなメールにしよう」
そう意思決定し、今まで実際にお話をしてきたお客様の顔を思い浮かべて(コールセンターに掛かってくるお客様の通話録音も聞きました)、その人に手紙を書くように文章を調整。普段のやりとりやイベントなどでコミュニケーションを取り続けてきたからこそわかる「ちょうどいい距離感」を心掛け、人間らしいあたたかみを感じられるように言葉を選びました。文末には、お客様との距離を縮めたいとおもい「追伸」を加えることにしました。(昔ながらの手紙の礼儀作法としては良くないみたいですが💦)
テストで3回分配信してみた結果、定期中止率・メール解除率が減り、売上も回復。むしろ元通り以上の成果を得ることができました。
さらにうれしかったのは、そのメールに対するお客様からのリアクションの変化でした。「わざわざ教えてくれてありがとう」とおっしゃって頂けたり、解約するとしても担当者宛にていねいなメッセージを送ってくださる方もいて、お客様と気持ちよくコミュニケーションが取れるようになったのです。(実際の例も下記に載せておきますね👇)
<メールの追伸例>
【追伸】以前、とあるお客様とお電話でお話をしていたところ、来月ご出産であると聞きました。私も二児の母。出産前の期待と不安はとてもよくわかります。厚かましいかもしれないけれど、何かしたい。そう思い、メッセージカードと安産のお守りをお送りしました。そして先日。そのお客様から、出産のご報告とお守りのお礼のご連絡が!本当にうれしかったです。
<お客様のご連絡例>
ていねい通販 ご担当者さま
メールでのご連絡を頂きまして有り難うございました。27日発送予定を少しだけ早めて、23日発送にして頂いてもよろしいでしょうか?
札幌は雪が降り最高気温も1桁と本当に寒いです。
これからもよろしくお願い致します。
(このお客様からの文面の素敵さは、同じ業界の方なら分かっていただけるはず!)
「表現ひとつでこんなに変わるんだ!」と、正直とても驚きました。本当に実在するお客様一人を思い浮かべて書くことで、きちんと数字や反応に繋がったのです。この経験がその後の僕自身の企画作りの根幹となりました。会社の売上やノルマのために企画するのではなく、お客様への感情移入によって、全てが好転する奇跡を目にした僕は、子供のころに教わった「相手が喜ぶことをやる」をマーケティングの世界でも信じられるようになったわけです。
★メールのリライト施策の全貌はこちらから👇
件名やメール文章の変更前後まで公開しています!
(その節はシナジーマーケティングの皆さんありがとうございました♪)
2.きっかけはお客様の声。「使いたい」を形にし、大きく広がったお友達紹介の輪
ていねい通販には、商品を紹介してくださった人・された人両方に特典がもらえる、いわゆる「お友達紹介制度」があります。
紹介経由でお友達が注文してくださった場合、購入してくださったお友達とご紹介いただいた方にミニプレゼントと、商品やオリジナルグッズと交換できるポイントも付与しています。
通常こういった制度やキャンペーンを使うには、紹介用のURLや招待コードをご友人に共有する仕組みになっていることが多いです。
ていねい通販のお友達紹介制度も、以前まではそうでした。しかし今は、お友達紹介制度専用のオンラインフォームから、お気に入りの商品の簡単な説明とお友達へのメッセージを添えた「メッセージ付きオリジナル入力フォーム」を送れるようにしました。
【メッセージカード作成フォーム(紹介する側)】
フォームにメッセージと必要事項を入力すると・・・
メッセージ付きのURLが発行されます♪
【オリジナルメッセージ画面(紹介された側)】
メッセージアプリでURLを相手にシェアして・・・
URLを開くと・・・
(自分で言うものじゃないですが、素敵な紹介サービスです♪)
このフォームがびっくりするほどの成果を生み出すとは思いもよらなかったのですが、作るきっかけになったのは、とあるお客様との何気ない会話からでした。
「商品の発送を早めて欲しい」という「すっぽん小町」の定期購入をしているお客様から連絡がありました。たまたまその理由をお聞きすることが出来たのですが、それが「お友達に紹介を兼ねてプレゼントしている」とのことでした。
それを聞いて「ありがたいなあ…」と思いつつ、僕らとしても何かできないかと考えました。そのアクションにていねい通販としてきちんと寄り添いたいなと。(実はコールセンターのオペレーターと話すと、こういったケースが珍しくないことも後から知りました)。
「なぜそのまま自分が買った商品を渡すのだろう?」と考えた時に、ひとつの仮説が生まれました。健康食品を相手に勧める時はきっと目の前の大切な人が疲れていたり、何かを頑張っている時なのかもしれないと。だから応援のつもりでそのまま渡すことを選ばれたのかもしれないと。そんな風に私たちの商品を大切な方へのエールのために紹介したいと思っていただけるのであれば、その気持ちに寄り添えるサービスを作ろうと決めました。そこから「メッセージカードを添えて紹介できるサービスがあってもいいなあ」と思ったわけです。
いきなり商品のURLだけが送られてきたら警戒してしまうかもしれないけれど、たとえば「最近疲れてそうだけど、こんなのあるから飲んでみたら?」と一言メッセージがあったら全然違いますよね。もしそれで購入に至らなくても、お互いに気持ちいいし、うれしい。
それを踏まえて、公式サイト内に「お友達紹介制度専用のフォーム」を作った訳です。
ただ紹介するだけでなく、「オンラインでメッセージカードを作る」という手間が増えるので、紹介制度の「使いやすさ」の面では劣るかもしれません。でも、もともとあった「大切なお友達に教えたい」というニーズを考えると、より気持ちが伝わるメッセージカードのURLを経由する方が、お客様にとって「使いたい」というモチベーションは上がると考えています。
実際に、この紹介フォームによって紹介数は大幅に増え、さらにはご購入いただいた方の90%以上が定期購入を選んでいただいています。この紹介件数の増加によって生み出された効果を広告投資額で考えると年間3000万ほどになります。また実際にお客様が書かれたメッセージをみると、当初の仮説通りお友達へのエールの言葉ばかりでした。
お客様の声をもとに、どうしたら力になれるかを考え抜いた施策が、結果的に紹介数や売上を伸ばしている。「紹介数を伸ばす」という目的が先行していたら、このメッセージカードの企画はきっと生まれていなかったと思います。
お客様同士の関係性に寄り添ってつくることの大事さ、そして「使いやすさ」よりも「使いたい」と思ってもらえるサービスの在り方を、強く意識することになった事例でした。
思いを寄せるべきは架空の誰かではなく、目の前にいるお客様。
まとめると、良い企画を生み出すには「どうしたら普段接しているお客様が喜んでくれるか」にどれだけ向き合い、深く追及できるか。これに尽きると思います。
言葉にすると簡単なようですが、感情移入はなかなか出来ません。ていねい通販では、コールセンターで話す電話の時間を無制限にしていたり、代表や経営層も含めたスタッフ全員がお客様と手紙でやりとりをしています。こういったコミュニケーションの積み重ねが、相手がただのお客様の中の一人ではなく、顔の見える個人になっていきます。恋人と親友ではコミュニケーションの取り方が違うように、相手の顔が見えてくると対応が変わることや言葉の語尾ひとつとっても変わるのは普通のことです。それこそが、相手への感情移入。もちろんこれは企画チームだけでは中々できることではありません。お客様と日々向き合ってくれている顧客対応チームとコミュニケーションしてみたりやSNSでのお客様の普段の投稿を見ることから始めてみるのがいいかもしれません。
そうやって一人ひとりの顔を思い浮かべていけたら、自然と企画は良いものになっていきます。仮に短期的に売上が下がったとしても、良い関係性が築かれていけば売上にも繋がっていくと僕は信じています。
以上、僕の「感情移入」という企画術でした。今後もこんな感じで事例などを紹介しながらシェアさせてください。
ていねい通販 戸田良輝
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