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映画『ハリーとトント』を見て

 この映画、大昔に見て面白かった記憶はあるがストーリーを覚えていなかった。猫のよっちゃんと散歩する私のnote記事に、白猫コタロウさんがコメントで、この映画を紹介してくれたので、Amazonでポチって速攻で鑑賞してみた。少しストーリーと感想を書き留めておく。内容読まないで映画を見たい人はスルーしてください。猫好きさんだけではなく、広くお勧めの映画です。時々加筆しようと思う。


 舞台はベトナム戦争のあと、軍事費がかさみ不景気が市民生活にも影を落とし始めていた時代のアメリカ。ニューヨークに住む老人ハリーは、妻に先立たれて愛猫のトントと二人暮らし。買い物に行くときも、猫のトントに首輪をつけて一緒に歩いていくハリー。住むアパートが区画整理で退去を余儀なくされて次の住処を探さなければならない。最後の一人になるまで退去を拒み、警察まで出動して強制的にアパートから引きずり出されるハリーは、相当な頑固者だが、猫や親しい人間を見つめる時の彼の眼差しはとても優しい。きっと優しいからこそ頑固なのだ。

 好条件のアパートが見つかったと思った矢先、ペットお断り物件でうまくいかない。心配してくれた長男バートの家族と一時期同居するも、お互い気を使いすぎる環境がハリーには合わなくて自ら同居を断って、次女シャーリーに会うためにシカゴを目指して旅が始まる。最終的には次男のエディが住むカリフォルニアまでたどり着くのだから猫をお供にしたアメリカ大陸横断の旅である。

 シカゴ行きの飛行機チケットを買ったのに搭乗手続きで猫と離れ離れになることに激怒して長距離バスに変更するも、トントのおしっこを車外でさせるためにバスを止めて運転手と一騒動起こしてバスを降りてしまう。「そうかバスが嫌いか、自由がいいか」。仕方なく中古車を買って(免許は失効しているらしいのだが!)ハリーの車旅が始まるあたりは、私の性格に似ていて無計画、破天荒なところが大好きだ。

 1974年の映画なのに現代にも、そのまま通じるような老人の晩年の生きざまを描いている。独り身の老人が老いていく中でペットと、いかにして共存していくかという問題もあるし、成長した子供たちと同居するのがいかに難しいかという視点もある。ドラマチックな展開があるわけでもないのに2時間近いこの映画を楽しめるのはハリーが旅の途中で出会う人たちに示す優しさ、慈しむようななまなざしが見る者の心を暖かくしてくれるからだろう。

 車の旅ではヒッチハイクする若者を乗せてみたら、家出してヒッピー(時代を感じる言葉)のコミューン(共同体)を目指す15歳の娘だったりする。親しくなったその子の提案でハリーの初恋の人に会うために旅の進路を脱線して、入居してる老人ホームを探しだして再会を果たす。二人が50年ぶりに会ってダンスを踊るシーンは、この旅がハリーが人生でやり残したことを拾っていくような感じがして、彼の人生最後の冒険のようなエピソードである。子供たちに会うという旅の目的も、同居するためではなく、何年間も会っていない子供たちの今の生活ぶりや人生を確認していくだけであって、子供たちに意見したり、何かを求めたりはしない。次女のシャーリーは4度の離婚をしているし、次男のエディは事業に失敗して借金に苦しんでいることがわかるが、ハリーは子供たちの人生に援助は惜しまないが、何かを押し付けることなく、あたたかく見守るだけである。その距離感はとても良い。同居を求める次男にも「お互い甘えてはいかん、自分で立ち直れ」。(良い意味で子離れしている)

 心配して旅の途中に訪ねてきた孫(自閉症気味?)と前述の家出少女が仲良くなって一緒にコミューンに行くと言うので、二人に車をくれてやり、「私は一人旅を好む、TAKE IT EASY 」と言って送り出すハリーは、とても進歩的だ。若い時にやろうとして出来なかったことが晩年になったら後悔として残る経験をしてきたからなのか。コミューンを悪と決めつける周りの大人たちの意見も尤もなのだろうが(シャーリーは1週間で妊娠するよと忠告する)、人生の目的、目標を見失っている若者に、冒険して失敗してもいいから前に進めと車のカギを渡すハリーは人生の先輩らしくて共感できた。

 この映画で一番面白かったのは、孫に車を譲って今度は自分がヒッチハイクする破目になったハリーを車で拾ってくれたのが、偶然にも美人の高級娼婦であり、ハリーが「役に立たんだろう、100ドルしか持っていない」と言ったら、猛スピードで脇道にそれて小高い丘の上に車が止まるシーン。ハリー爺さん何年かぶりに頑張れたのかな?笑 (俺も毎日バナナ食べよう。もうスムージーで食ってるけど)

 ネタバレなので猫のトントのことは書かないが、最後にハリーが、美しい夕焼け空の下、サンタモニカの砂浜で猫を追いかけて足を引きずって必死で走るシーンは涙が出た。

猫好きの人は是非見てください。大昔に見た人も何十年かぶりに見ると、また違った味わいがあると思います。(私がそうだった)

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今から2回目を見てる。



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