広告のマネジメント


 われわれ消費者は、普段から多くの広告と接している。テレビCMや、新聞や広告、看板広告、電車の中吊り広告などが、その「広告」に当たる。しかし、現代では広告が溢れすぎており、人間の能力からして、一人の消費者がその全ての広告を認知したり、想起することは難しい。そのため、製品名だけでなく、その製品の特徴や便益を消費者に覚えてもらうには、十分に考えられた戦略を立てる必要がある。
 そもそも、広告それ自体は、テレビ番組などのコンテンツではないため、消費者に真剣にみてもらうことは難しい。テレビCMは一般的に15秒ほどの時間しかないからである。そのため、その短い時間でいかに特徴と便益を分かりやすく伝えるかが重要であり、その際に以下の3点を考慮する必要がある。
 1つ目は「消費者対応」である。まず、ターゲット消費者が、その製品の解決する問題を理解しているかどうかを判断する必要がある。そのため、製品ライフサイクルの導入機に位置付けられる製品がこの対応をとることが多い。または製品の特徴や便益が消費者に浸透していない場合にもこの対応が有効となる。
 2つ目は「競争対応」である。消費者対応によって消費者自身が抱えている問題やそれを解決する製品の便益がある程度明らかになった場合は、競争相手との差別化(ポジショニング)への訴求点が変化する。その差別化は、単に競争相手との違いを出すだけではなく、あくまで消費者のニーズに対応した、有用性のある差別化でなくてはならない。
 3つ目は「ブランド対応」である。ここまでの消費者対応と競争対応によって、消費者からはブランドに対する一定のイメージが構築されてきたと考える。しかしその積み重ねてきたブランドイメージは、積み上げるのには時間はかかっても、崩れる時は一瞬である。そのため、新たな広告表現を考えるとき、今まで築いてきたものを失うことがないようにしなくてはならない。ブランドとして今まで何をしてきて、消費者はどのように自社ブランドを捉えているのかを慎重に考慮する必要があるのだ。
 以上3つの広告表現が決まっても、それが明確に消費者に浸透するかどうかはわからない。そのために、消費者に浸透することを目的とする媒体の組み合わせを考えなくてはならない。
 そこで、プロモーションミックスと、メディアミックスという考え方が登場する。
 プロモーションミックスでは、広告以外にもPRやセールスプロモーション、そして人的販売などが存在する。例えば、人的販売の効果として、実際に人間が製品説明を行う事で、広告では伝えきれなかった部分の訴求やアピールが可能となる。
 メディアミックスでは、媒体として万能ではない単体としてのメディアを2つ以上組み合わせる事で、相乗効果を期待する戦略である。

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