図書館で見つけた「人口」の本たち
この記事では図書館で見つけた「人口」に関する本を3冊紹介する。
少子社会日本
1冊目は山田昌弘『少子社会日本-もうひとつの格差のゆくえ』である。図書館の分類記号は334.31である。
著者の山田昌弘は社会学者で、中央大学文学部教授である。
この本は、日本の人口減少から見える少子化について、どのようなロジックで、どのようなプロセスをたどって、少子社会に突入したのかを検討している。
全部で第8章まであり、1〜7章までは少子化の原因を主に書かれており、8章で少子化対策について書かれている。
印象に残った部分を紹介する。
女性の社会進出は少子化の一つの要因であるが、「主因」ではなく、少子化の「結果」として生じたものであり、多くの女性は、働き続けたいから結婚しないわけではないということだ。
著者は、日本の少子化を反転させるためには、四つの施策が必要かつ有効であり、若者が希望をもてる環境を用意することが根本的な少子化対策であると考えている。
この四つの施策が実現すれば、結婚や子育てを望む人が、自分に合った相手を見つけ、子どもを産むことができ、日本の少子化は反転するという。
今まで、あまり取り上げられなかった施策が多いが、何が原因でどうしていくべきかが分かりやすく書いてあった。
日本人の結婚と出産
2冊目は国立社会保障・人口問題研究所 編集 財団法人 厚生統計協会 発行『平成9年 日本人の結婚と出産-第11回出生動向基本調査-』である。図書館の分類記号は358.1である。
この本は、平成9年に実施された結婚と出産に関する全国調査の結果の概要をまとれたものである。序章に調査の概要と要約が書かれており、1〜5章に結婚と出産に関する調査の結果が記載されている。
気になった調査をいくつか見ていく。
この表と図を見ると、結婚した夫婦が初めて出会った時の平均年齢は、従来とまったく変わらないか、むしろ男性側では早まってきているのがわかり、10年前と比較すると、32%も平均交際期間が長くなっている。つまり、日本の晩婚化は、交際期間の延長というかたちで進行しているのであるという。
この表は、結婚後10年未満の若い夫婦を対象とした理想子ども数の分布である。1997年の結果は、5〜10年前の結果と比べると3,4人の割合が減り、0〜2人の割合が増えていることがわかり、平均理想子ども数が減少していることが読み取れる。結果的に、2〜3人を理想とする夫婦が約9割を占めていることは変わらないが、理想子ども数はやや減少傾向にある。
晩婚化が進み、理想子ども数が減っていることもまた、人口減少に繋がってると考える。
人口経済学
3冊目は加藤久和『人口経済学』である。図書館の分類記号は334.1である。
著者の加藤久和は経済学者で、明治大学政治経済学部教授である。
この本は、経済学の視点から人口問題を説明しており、1章の人口経済学とは何かから始まり、7章で人口減少と経済の関係について記して終わっている。
印象に残ったところを挙げていく。次の図は、人口減少が経済に及ぼす影響をわかりやすくかいたものである。
ここでは、労働力、資本ストック、技術水準という3つの生産要素を仮定した場合に、人口変動が生産関数、すなわち生産能力に及ぼす影響をまとめたものである。人口が減少すれば、労働力は減少し、これが生産能力に影響を与えることは明らかであるが、その他の生産要素についても人口変動が様々な影響をもたらすことを示している。
著者は、人的資本についても語っている。
日本経済の将来において、人口減少と高齢化が大きな課題であることを指摘しており、個人の能力向上と生産性の向上が重要であるという。
人口と経済の関係性について様々な視点から解説されている本であった。
まとめ
以上、この記事では3冊の「人口」をテーマにした本を紹介した。2冊目は記録によるものであったが、1冊目と3冊目は社会学や経済学の視点から「人口」について解説されたものであった。
人口、特に人口問題は、経済や社会のあり方に深く関わる重要なテーマであり、そこには結婚や出産も関わっている。この社会においては、少子化対策が課題となるが、同時に持続可能な社会の実現を目指すことも必要である。そういった上で、私たち一人ひとりが人口問題について考え、行動することが大切であると考える。