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菊池亮太×ござピアノライブの感想文

 この文章は、ピアニスト・ござさんを大好きな筆者が、2023.7.15〜16に「菊池亮太×ござピアノライブ」を見に行った感想です。都合、どうしてもござさんのことを中心に書いておりますが、個人の感想としてお読みください。

 念のため付け加えますと、わたしは音楽関係者でもピアノ実演奏者でもない、音楽の好きな一般人です。また、ライブに行ったことでマウントをとっているアカウントではありません。それぞれのご都合によってライブ参観できないこともままある昨今、こういうツールで臨場感を共有していこうという意味でレポートを書いている、個人的趣味のアカウントになっています。ですので、会場や、観客の声など音楽以外のことも補足して、少しでも現地の空気感をお伝えすることに腐心しました。行った方も行けなかった方にも、ござさん、菊池さんの魅力が少しでも伝わりますようにと願っています。
 駅ピアノとライブ当日のアンコール「仔犬のワルツ」については、すでにたくさんのかたが撮影許可を得てTwitter等にアップしておられます。本当はそれがあればこういったツールは必要ないとも思われますが、2023年7月現在、Twitterの運営自体がどうなるか予想がつかないため、これも補足的に文章で残すことにします。

 長い文章ですので、必要がないと思われる方は次の「目次」から読みたいところに飛んで、そこだけお読みいただくことができます。
 また、わたしはメモとスケッチに集中したくて撮影許可が下りても撮影はせずにいるため、極めてぼんやりした手書きのメモと記憶を頼りに書いています。間違い等がありましたら優しくご指摘いただけますと幸いです。

0 勝浦へ(2023.7.15)

 梅雨まだ開けぬ雨の仙台を出て、東北新幹線と特急くろしおを乗継ぎ、勝浦へ。特急くろしおは以前旅行で乗ったことがある。家族連れが多いのは、三連休だからだろう。舞浜を通り過ぎるとき、同じ車輌のお子さんが
「ディズニー行きたーい」!
君はどこへ行くのかな?
 舞浜ではなく勝浦にしか目の向かないわたし。わたしにとっての「夢の国」は、推しであるござさんが元気で楽しくピアノを弾いてくれるところ。しかも今回は、相棒・菊池亮太さんとの2台ピアノ。期待が高まらないわけがない。
 ござさんと菊池亮太さんのバディは、ござさんご本人が「背中を預けられる」と太鼓判を押すほどの信頼関係。夢の国勝浦で、どんなピアノを響かせるのか… あるいはディズニーメドレーかな?とふんわり予想しながらの旅路。

1 駅ピアノフェスティバル

(1)行列

 勝浦駅着。ホームを出ると、片隅に真っ赤なアップライトピアノ。白い絵具で、五線譜の波にカツオと千鳥が遊んでいるデザイン。まず旅館(笑)にチェックインした後に再度駅に戻ると、既に10名ほどの方が順番待ちをしていた。時間12:30(ござさんたちの演奏は15:40〜)。
 友人とわたしは、ランチはやめて列に並んだが、こういうときの待ち時間は全然苦じゃないから不思議。ここにいればござさんが…と思うと、ゴキゲンになる単細胞。そうこうしている間に、スタッフさんたちがテキパキと準備をなさり、わたしたちは晴れて椅子に座ることができた。
 その距離2メートル…こんなに間近でござさんにお会いすることなんてもちろんあるわけもなく、僥倖だなーとワクワクが高まる。

勝浦駅ピアノのデザイン。キュステの職員の方が準備している。


 まず、ラ・メールのお2人のピアノとサックスを聴いた後、一般応募のピアニストさんたちのフェスティバルが始まった。これがとても楽しかったのだが全ては書くことが出来ない。
 ともかく子どもさんたちが、彼女彼らの身長や技術やいろいろな条件をクリアしつつ精一杯パフォーマンスするのが可愛かった。小さい子で「雨の日の噴水」弾いたのが、繊細なタッチで好きだったな… クロスするのも、細いまだ短い腕で大変なのに、ピアノ好きなんだなぁと思った。どの子もみんな一生懸命でほっこり。ござさんに憧れてる風の男子くんや、耳コピしたYOASOBIさんメドレーを披露した子も。緊張も勉強になるよ!がんばれ!

 連弾の部もみんなかわいかったけれど、中にコスチュームに身を包み、パイレーツオブカリビアンを演奏した兄弟がいた。Twitterにも書いたが、お兄ちゃんがベースラインと和音、弟くんがメロディ担当で、楽しそうに演奏していたのだが、この子たちが「菊池亮太×ござライブ」に来ており、リクエストタイムに菊池さんに指名されて、この曲をリクエストしていたのが本当にエモかった!
 大きいお兄さんたち(ござさんと菊池さんw)は、かなり凝ったことしていたけど、きっとあの子たちには忘れられない思い出になったんじゃないかなぁ…
 そして、ストリートピアノの醍醐味はまさにこういうところなんだよな、と実感。ござさんを、菊池亮太さんを知らない人が耳にして、また聴こうかな、ああなりたいなと思うのって音楽教育の原点じゃないだろうか。 子どもたちが一番初めに出会うプロのピアニストがござさんかも知れないと思うと、エッモ!としか言いようがない。
 そしてついに…

(2)ござさんと菊池亮太さん登場

 とても柔らかな雰囲気の司会の方(場のつかみが上手いところが事務員Gさんに似ていなくもない)に紹介されて、ついにござさんと菊池亮太さんが登場!
 この駅ピアノの章は、すでに動画や画像でたくさんの方がシェアしていらっしゃるので、衣装や曲順などはそちらを参照に。わたしはこんなスケッチをしたりメモを取ったりしていたので動画は取っていないけれど、受け取った感動をその場で小さくメモするのは何ものにも代え難い贅沢なひととき。メモ頼みであやふやなところがあるところはどうぞご容赦を。

仲の良さが伺える背中が…

 礼をしたのち、ござさん上、菊池さんが下に座り、ラテンのリフを弾いていく。
ラテンのリズムは夏らしく情熱的で、そのまま「スペイン」へ。「スペイン」については2で触れたい。

(4)ジブリメドレー・A part of your world・宝島

 「千と千尋」はござさんのリードでキラキラふりかけ。ナウシカのレクイエムを「ござ&菊池混ぜ」で入れながらこれも座席の上下入れ替え。「人生のメリーゴーランド」ではござさんが下でベースを正確に。2人ニコニコ笑いながら互いに探り合いつつの演奏。その三拍子を保ったまま「時には昔の話を」をワルツで(!!!)。ベースの効いた「となりのトトロ」は元気なアップテンポ。くるくる座席の上下を入れ替えながら、まるで当人たちが追いかけっこをして子供みたいに自由に遊んでいる感じ。
 「ポニョ」混ぜ「風の通り道」から、「もののけ姫」ござ菊池混ぜの途中、ござさんが小さく「終わります」と菊池さんにささやき、いい感じで終了。

 MCに入ると、キメキメでかっこいい様子は一変し、ほがらかで仲良しのピアノ大好きな2人になり、1本のマイクをござさんが菊池さんに向けてニコニコしたりメモをガサゴソしたりして、観客も思わず笑顔に。あまりトークをするつもりではなかったと推察するが、仲の良さが伝わってくる。その間にスタッフさんが2本目のマイクを準備してくださり、それぞれ1本ずつのマイクを持つことに。

 続いては海が近いということで「Part of your world」。ほとんどペダルを踏まなかったように見えたが、ござさんの生ピアノに終始夢心地。
 MCでは「ちびりそうになった」wとござさんの本音らしきトーク。この曲の展開をござさんが解説したところによると「無言で展開しているように見えて、実はお互い色々考えながら弾いていた。『転調しますか』と言われさらにドキドキした」旨の内容で、観客の目が近いこともあり、極度に緊張したということなのだろう。
 あんなに美しいピアノを弾いていたのに、ござさんの心情が窺い知れて嬉しい解説であった。

 駅ピアノの最後は「宝島」だけれど、これについては「2」で述べたい。
 キメフレーズは顔を見合わせて、ドンピシャで決めた「宝島」。「背中を預けられる」という表現は伊達ではなく、こちらもござさんの本音なのだろうなと推察する。

何枚も描いてしまった…

2 「菊池亮太×ござ ピアノライブ」

(1)開場まで

 2日目。2023年7月16日(日)は、勝浦市芸術文化交流センター「キュステ」さまにて「菊池亮太×ござ ピアノライブ」当日。今日も今日とて行列。わたしと友人は11:30には会場入りしたが、すでに30人くらいは並んでいる感じ。聞いたところによると、暑さを考慮して時間より早く開けてくれたとのこと。デジタルサイネージにも2人の顔が。
 昨日はござさんファンが多かった印象だけれど、今日は菊池さんファンらしき方が早かったかも。長時間の行列になるから、トイレ休憩や、ホワイエの椅子も譲り合って待ち時間を過ごしているみなさまの様子は、大人とはいえとても行儀がいい。
 お子さんの姿もちらほらあり、お年寄りも多かった。お子様たちの中には「昨日もいたなあ」と思う子もいて嬉しい。ゴキゲンにならないわけがなく、この日もぜーんぜん飽きずに2時間を過ごす。

キュステさんのデジタルサイネージ。

 わたしと友人は、昨日は近い座席で鑑賞できたから「今日は音のバランスのいいところで聴こうね」と決めていた。わたし個人は、抽選だと会場の後方かピアノの上手寄りのことが多くて手が見えない座席が多かったので、ともかく「手の見えるところに行きたい」という気持ちが強かった。だから、音バランスの良さそうな、前方中央より下手寄りの、ござさんの手が見えるところに着座した。

 そんな開場後のこと。わたしたちが座ってすぐに、わたしたちの後ろの座席の真ん中あたりに来た小さい女の子が「どこがござ式?!」とパタパタ走ってきた。ええっ?なんですと?!と思わず振り返ってニコニコしてしまった。ピアノをお習いしている子なんだろうか…それともお母さんがファンなのか。手で押さえればござさんの音が鳴るんだもんね。 #ござ式  すごいね!もうニヤニヤしっぱなしである。
 この話は、キャスの最後でも言ったのでぜひERA (@era_tra)ちゃんのキャスにどうぞ(合言葉はERAちゃんもしくはゆうかげのTwitterのDMまで)!

 ステージを見下ろす会場。中央にはYAMAHAさんのグランドピアノが2台。下手側のピアノは屋根があるが、手前(上手側)は屋根をとってある。
 上にサスペンションライトを8灯準備してくださっていて、うっすらスモークが焚いてあって、このライブを成功させたいというスタッフ様たちの心入れが感じられる会場。 

sus8灯のほか、ヌキを作る灯体も。

 全体では、もしかしたら手前側のピアノは音量が不足していたのかもしれないが、結果的にはござさんも菊池さんもピアノのコンディションや会場の環境に合わせた弾き方はお手のもので、全然音量や音バランスを感じることはなかった。むろんそれまでの調律師さんをはじめとするスタッフの方々の努力の賜物であることはいうまでもなく。
 ともかく、ハコやピアノのコンディションはこの海千山千のピアニストたちには障害にはならないんだと実感する。

 ついに開演時間となり、すぐにござさんと菊池さんが登場。ステージが明るくなる前にシルエットで登場した2人は、背筋を伸ばした姿。ござさんはシュッとした黒い細身のスーツに白いカットソー。菊池さんはパナマ帽にキャメル色のくたっとした今っぽいカーデに白T、黒い細身のパンツ。

(2)2台ピアノ「スペイン」

 座ってすぐ、ござさんが「1、2、3、4!」と声をかけて「スペイン」が始まった。キメキメのあのフレーズからグッと心が掴まれる。
 最初はござさんが上手ピアノで上、菊池さんが下手のピアノでベースライン。ござさんの華やかなサンバの装飾音が夏らしい情熱を表しているよう。アドリブに入ると照明も情熱の赤に。ござさんはクールに弾いているなという印象で見ていると、途中菊池さんが手を残しながら立ち上がったので「えっここでピアノ替え?」と笑ってしまった。
 昨日の小さなアップライトピアノなら自由に上下入替可能だけど、グランドで途中で?え?w と驚いているのは観客だけではなくござさんもだったようで「ええ?!嘘w?」みたいな表情になり、立ち上がり、手を残し、…でも当然入替にはちょっとした間もできつつ、パタパタとピアノ入替完了w ござさんが上手ピアノに移り、ベースラインになった途端に、正確でかっこいいベース音がバリバリ鳴り始めてラテンのかっこいい和音がすごい音量で鳴り(生音で)、それもびっくりだった。サンバらしいアップテンポの菊池さんの上も情熱的!2人の手が自在に動き回っていて、奏法「菊池亮太」も出ていた(下の動画参照)。
 1曲目なので、なかなか視線で合図が合わず、途中のキメが合わないところがあり、途中からござさん中腰で立ち気味に目線を合わせようとしていて、音楽に真摯なところが仄見えた。
 ところでござさんの弾く「スペイン」と言えばこれ。ラテンのリズムや演奏法の解説ありで知的好奇心も満たされる動画。

 もう一つはけいちゃんさんのチャンネルの「スペイン」。まだYouTuberとしては駆け出しだったはずのござさんが徹底的に下支えするサンバのベースラインのリズム感(即興にして完璧)、アドリブのハッとする華やかモントゥーノ、…手しか登場していないにも関わらずこの錚々たるメンバーの中でも出色の存在感!好きすぎる。


 MCはござさんの「始まりましたね!」からスタート。夏らしいスペインをチョイスしたことや、菊池さんのカラーのコーデが新鮮な話。スタッフさんに2人が「似てる」と言われたこと。
 ところでこの短いトークの最中、極力声を出さないように拍手で応えている観客に対して「つい反射で拍手しちゃいますよねー」と菊池さんに言われて、ああそうか(新型コロナウイルスの)制限はないんだったなーとわたし自身ハッとした。観客とのコールアンドレスポンスを楽しもうとする菊池さんの思いやりが伝わってきて、なるべくレスポンスを返そうと思ったりする。
 反対にござさんは恥ずかしがり屋を最大限発揮し、菊池さんしか見ていない。これについてはリアルのわたしもそうだから、観客をまともに見られない恥ずかしがりの気持ちがよくわかってしまう。

 ござ「昨日の(勝浦駅)ストピは改札のピンポーン聴きながらでしたからね」
…おおお。ピアノ弾きながら改札の音聴こえるのね?!観客はござさんのピアノに夢中でなーんにも聞こえていないというのに。やっぱりござさんの耳はすごいなーなどと思っているうちに、ござさんのソロタイムが始まる。
 下手ピアノに移動するのにぐるっとピアノの後ろを回るのもござさんらしくてほっこり。ござTimeのはじまり…

(3)ござさんソロ「宝島」

 ござさんの夏曲といえば「宝島」。ござの日2023にも弾いてくださっていて、その時はこんな感想を書いていた。

「宝島」軽やかに指ならし。ちょっとペンタトニック風味な慣らしから、いつのまにか始まったのはジャジーな「宝島」!ござさんの夏曲でOPにふさわしい🥹
 ライブでも何回か弾いてるけど、和音を変え、洗練度がupしてる。ウォーキングベースもカコイイし、はねるリズムが軽やかでジャジー。ピアノ一本とは思えない音の厚みで、ぜいたくな「宝島」。そういえばピアノだけで聴くのはねぴらぼ1以来?…
 ござさん1曲目はいつも88鍵すべてに挨拶するように左右に動く曲を弾いてる気がする。そんな晴れやかな音。

ゆうかげ「ござさんソロコンサート『ござの日2023』感想文(昼の部・夜の部他)」より

 今回の指慣らしはジャズっぽくて、指がよく回っている。YAMAHAのグランドピアノ、音がカラリとしていて湿度のある日本の暑い夏には心地いい生音(個人感)。Aメロ1周め、ござさんにしては珍しくミスタッチで止まる一場面があったが、思い返してみると指が回りすぎてセーブしたのかも… 鍵盤軽かったのかなあなどと後で想像するのも楽しい。
 2周めのウォーキングベース、ずんと響いてくる。音量ではなくタッチの力強さなんだと思うが、3周めのサビまで一気に世界が加速する。そしてテンポを落として間を取る離れ業ののちに最後のキメまでfffで駆け抜けていく、素晴らしい洗練度だった。

 MC。曲説明「T-squareの曲。フュージョンとしても有名」「この後夏メドレーを弾くが、心配だから弾ける曲をリストアップしてきた。でもそのリストが今手元にないんですね… 菊池さんも開幕から奇行が目立つが(筆者注:スペインの途中でピアノの入替をしたことかと思われる)、僕も人のこと言えない」
 と言っているうちに、袖からスタッフさんがあらわれA4の紙をござさんに手渡すことに。
「あーあった♡ ありがとうございます!」
会場にほのぼのした空気が流れ、ほっこりしながら次の曲へ。

(4)ござさんソロ「夏メドレー」

 いつものように右脚の踵を軸にすとんと座りしな、すぐに「六番目の駅」。
 つい先日の2023.7.5のござさんのキャスで久しぶりに聴いたばかりのこの曲。右手の繊細さ、切なさに心が鷲掴みにされる演奏。その切なさを半ば引きずったまま次の曲「勝手にシンドバット」へ。短調の「勝手にシンドバット」から、徐々に長調へ、そして軽やかな左手ウォーキングベース。明るい夏のまま「ミュージック・アワー」、「夏色」はジャジーに。「真夏の夜の夢」はバチバチにキメキメのラテンのリズムが素晴らしかった。「情熱大陸」「あの夏へ」にたどり着いたところで、振り返り。
 ポルノ、サザン、そして「少年時代」。時代も、音楽ジャンルもアレンジも多様で、まさに「THEござ」!といったメドレーだった。

 MCに入ったところで、菊池さんがピアノの後ろを回ってステージに登場。ござさんはしばらく気が付かずにいたが、菊池さんを見て「あ、来た」と嬉しそう。めちゃくちゃ素早く袖に去っていった(笑)。

(5)菊池さんソロ「火祭りの踊り」

 菊池さんのソロ1曲目は「火祭りの踊り」。アラビア音階のリフから世界観がガラリと変わって軽やかでメラメラ燃え広がる炎の動きのようなピアノを堪能できた。同音連打の強さが印象に残った。

 MC「この後1曲弾いたら問題のコーナーが来るんですが、次の曲何を弾こうか迷っていて…」と言い「チルいのがいいですか、エグいのがいいですか」と観客に問いかけ。こういうコールアンドレスポンスが、菊池さんは本当に上手いなあと思った。観客は色々な人がいるから、感動を表現できる人もいればその仕方がわからない人もいる。挙手してもらうことで、容易に参加ができるし、ライブが他人事ではなく「自分ごと」になるんだろう。すばらしい配慮!!!
 菊池さんの問いかけに、観客としては「エグいの」に賛成多数だった。「じゃあなんか弾きます」と座る菊池さん。

(6)菊池さんソロ「フニクラ・フリクラ」

 曲名を言わずに始まったのは、おなじみ「フニクラ・フリクラ」。でもそれは相変わらずエグい演奏で、指が丸くなるニュートラルポジションから、菊池さん得意のめちゃ速弾き。キャスでも話したけれど、クライマックスあたりでは「熊蜂の飛行」を思わせるようなところもあって、菊池さんのテクニックを充分に堪能できるエグい演奏だった。
 幅の広い流行りの形のカーディガンの袖が邪魔だったんだなーっていうことは、後半のトークで知ったんだけど、確かに何度も腕を上げる仕草をしていて、それスケッチしてた。
「橋本環奈さんより先ですよ?」のネタについては、ネタなんだろうということしかわからない世間知らずですみません!TV CMだったらしいですね。

親方さま確かに腕をこうして上げてた(暗闇メモより)

(7)菊池さん夏メドレー

 次に、菊池さんの夏メドレー。ござさんが弾いた後だからござさんとかぶらないように、袖で聴きながらセトリを再構成したらしい。でも出だしだけは「あの夏へ入れるの勘弁してください」と。これはイントロがメドレーの重要ポジションを占めていることを示しているのかもしれない。

 あの夏へ…キラキラ美しい和音から、Summer、転調してSummertime、Part of your world、真夏の果実、夏の夕べ、secret base、GoldFinger‘99、水の戯れ等たくさんの曲メドレー(菊池混ぜがちょこちょこ挟まっていて、もしかしたら抜けている曲目があるかもしれない…すみません!)。
 secret baseを菊池さんが弾いてるのは初めて聴いたが、これはやはり相棒ござさんへのオマージュなのだろう(と初稿で書いたが、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」10th year BOXで、菊池さんがピアノ弾いてらしたことをご教授いただきました!そうでした、うっかり。ここで訂正し失礼を全方位にお詫びいたします。2023.8.1)。
  ここから弾いた曲をワンフレーズずつおさらいするのまで、2人合わせたよう。secret base、真夏の果実、A Part of your World、summer。さらに沖縄音階の曲や童謡など、あっという間に20曲近くのメドレーとなりました。すごい!

(8)命名「お楽しみコーナー」(リクエストタイム)

 その後、ござさんが袖からニコニコしながら登場。
 「前半が終わってないのにこのボリューム!さすが菊池先輩!」「おかしいですね、もうすでに20曲くらい弾いてます!」と嬉しそう。きっと袖で曲数数えて笑ってたんだろうなあ…
 「次はヤバいコーナーです」と紹介があったのちに、会場からリクエストをもらって弾くコーナーだと説明があったので、思わず「えええっ♡」と声が出てしまう。
「終わり何時かわかってないんですが」「俺の記憶では16時に終わればいいと」という日常会話?を挟みつつ、要するに3曲くらいリクエストを受け付けるという説明だった。
 まずは菊池さんが会場に挙手をうながすと、これは観客サイドからすると先ほど一度手を挙げているから比較的手を上げやすく、菊池さんがそのうちの1人を指した。
 ござさんが受け付ける番になったその瞬間、ござさん「ジャン、ケン、ポン!」と日曜日の夜によく聞きがちなセリフを口にしたので、(リクエストよりもメモをとっているわたしは)大ウケしてしまった。しかも、普通この手のレクは勝ち残りなのにあえて「僕に負けた人」と。
 このコーナーについては、3日後の2023年7月20日の生配信のトークの中で「お楽しみコーナー」と命名していたことがわかったのだが、ファンにとってはまさにお楽しみとしか言いようのないことが目一杯詰まったサービスタイムだったと思う。
 ERAちゃんのキャスでも言ったが、「誰かを特別扱いしない」ということをござさんは普段から意識しているようにわたしには思える。それは平等という点において正しいとわたしは思うのだが、一方で、ファンサが少ないと寂しく思う人もいるかもしれない。だからこういうサービスタイムにどう振る舞うかというのはござさんにとって悩ましい課題であろうと思われる。それを乗り切るのが「王様ジャンケン」というレクレーションにしちゃうこと!この発案すごいなと。
 しかもそのレクレーションは、ござさんの前職・介護士時代のお仕事を思わせ、しみじみと「ピアニストになってよかったね…」と彼の来し方を想像させるものじゃないか!…すみません、ピアノじゃないところでいっぱい書いてしまいました…
 3人目のリクは(1)で書いたように、前日の駅ピアノで演奏した兄弟のリクが通り、結果ムーンリバー、everything、パイレーツオブカリビアンの3曲をメドレーにして弾くことに。

 ござさんが下手ピアノ、菊池さんが上手ピアノに座って「ムーンリバー」。出だしはござさんのメロディから。右手一本で弾くのに菊池さんが内声を合わせシンプルに。徐々に盛り上がりござさんがキラキラふりかけと和音で繋ぎ、菊池さんにパス。ちょっと腰を浮かせて菊池さんを見ながら、その場を調整。
 2曲目「everything」は軽やかバージョン。菊池さんがベースラインを弾くのは、ねぴらぼinventionを思わせるけれどそれより圧倒的に軽やかなジャズ。盛り上がり前、ござさん左手を上げて菊池さんに合図して菊池さんに主旋律を任せる。
 これはのちの配信で答え合わせがあったが、「everything」はもともとセトリの中に入っていたそうだ。でもおそらくメドレーとなった時点で準備していたアレンジは捨てざるを得なかったはず。究極の即興曲になったわけだが、そんな中でも安心できる演奏者2人ということなのだろう。上下が交代し、安心のござさんのベースラインになった頃、会場に漂うスモークに気がついた。会場の方も即興に対応していることに驚きを隠せない。 
 下のはずのござさんの右手が、デデンデンデデン!と同音連打で伏線を作り、そのまま3曲目「パイレーツオブカリビアン」へ!照明さんも、ござさんは紫、菊池さんは赤と情熱的な色に。これも当然即興になる。会場が一体となってこの「お楽しみコーナー」を作っている…これがお楽しみでなくてなんだろう!本当に楽しいコーナーだった。
 さて、1拍目にアクセントが来るキューバのリズム(わかんないが)のつよつよのリズムをござさんが刻み、菊池さんはあまり音が響かない(はずの)ピアノで、ガンガンアウトし始めて、ここが本当に楽しかった!きっとあの小さな兄弟も、譜面にしたらとんでもない数のおたまじゃくしになるだろうこの楽曲をワクワク聴いたのではないだろうか。菊池さん、ムーンリバーをアップテンポで菊池混ぜし、ござさんがそれに合わせる。海賊とはほど遠い2人ではあるが、鍵盤の上の暴れん坊たるやw
 ワクワクの止まらない前半戦であった。

 ここで15分の休憩。だいぶアウトした演奏もあったが、印象としてはござさんはまだ全力ではなく抑えめな印象。後半にでかい曲があることを予想させる慣らし具合。

(9)Tank!

 後半戦に現れた2人。菊池さんのトップスが前半のキャメルのカーデではなく黒Tに変わっていた。そのままござさんが下手、菊池さんが上手ピアノで、座りしな、ござさんの動画でもあの印象的なイントロ…「Tank!」だ!これには驚いた。
 多分菊池さんがベースラインを弾いて、ござさんは思う存分ホーン隊の音をこれでもかってくらい入れていたと思う。思うというのは、もう興奮しすぎてよく覚えていないからだ。菊池さん、足で床を踏み鳴らしてパーカッション隊のリズムも作り出していてこの上なくかっこいい。ござさんは「足りない」と思っていただろうホーンの響きを全部入れる勢いで弾きまくっていて、欲しい音がそこに全てあるとんでもない2台ピアノだった。
 菊池さんのアドリブは右手のみからスタート。勢いがあって華やかで、すごいソロだった。次にござさんのアドリブ。一瞬ベースの音が薄くなるけれど、2人のキメが完璧に揃い、聞き手としてはこの上なく楽しい。ござさんは腰を浮かせて全体重を載せた音を響かせて演奏家としての矜持を見せる素晴らしい演奏だった。この2人の最上級ではないかという演奏に、心から惚れ惚れした。

(10)ルパン三世のテーマ‘80

 しかし前言を撤回するような神演奏がまだあった。続いてのイントロは、ござさんの演奏でお馴染みのルパン三世のテーマ!
 ござさんの安定したベース音の中、菊池さんの息のあった主旋律が響く。アドリブは菊池さんから。アウトしすぎない落ち着いたアドリブなのは、キメが結構あるのと、ベースを代わるからなのかもしれない。代わったござさんのアドリブはハッとする華やかさ。照明も、ござさんは緑色、菊池さんを赤で照らして世界観を演出していた。
 それでこれはキャスでも言ったけれど、「ねぴらぼ」(inventionじゃなかった)で、ベースとピアノのユニゾンのめちゃくちゃ難易度の高いかっこいい演奏をしていたが、あのドデドデした?エモいサビを彷彿させるサビをござさんが両手で見事に弾き、菊池さんが下支えするという素晴らしいアレンジで、わたし、いやわたしたちの興奮はここで最高潮となり、当然のようにアドリブを称える拍手を送ったのだった。ござさんはそれにちょっと照れたような満足するような頷きで応えたような…気のせいだろうか。拍手は満場のうねりとなり、演奏者2人を包み込んだ。

 MCではやはり照れたようにして曲には触れず、菊池さんが汗だくとなり服を替えたことに言及。
ご「お色直しを意図的にしたわけではないんですね」
菊「ヤバい服が脱げる!って思って」
ペアルック感、と言ったのはござさんだったかな?素晴らしい演奏をちょっと照れくさげにそんなさりげないMCだったのもいい。
ご「…あれですね、ここからまたちょっとアドリブ的な時間ですね」と言い「(まだ見ていないが)ジブリ映画も公開されたことにあやかって、便乗してジブリメドレーを」
 さらにここで、2台のピアノのことについて菊池さんが「ピアノの個性が違うので、一回一回(使うピアノを)交代している」旨の話をされた。菊池さんがそういう気遣いというか相手に対する厳格なまでの平等性を強調するのは、お互いリスペクトし合える仲だからなのだと勝手に解釈している。

(11)ジブリメドレー

 3日後の配信での解説によると、1曲ずつ交代で曲を即興でセレクトし、出だしを決めて相手に伝えるという、この2人にしかできそうもない離れ業メドレーだったという。 
 菊池さんの「あの夏へ…」のイントロで、ござさんが苦笑いされていたように思うのは、この曲の登場が本日3回目だったからだろうか。ござさんの「となりのトトロ」はメロウな感じでスタートし徐々にクレッシェンドし1番を弾き切ったところで「海の見える街」を菊池さんから。ござさんの左手は、ヨーロッパの小さな街並みの石畳の坂道が見えるかのようなオリエンタリズムを感じさせる。ござさん「君をのせて」には、菊池さんが「ナウシカ・レクイエム」のラン、ランララランランラン…のフレーズを混ぜ込み、それにござさんが応えるといった遊び心満載。
 「もののけ姫」から「風の通り道」に行くまで、ベースが「ナウシカ・レクイエム」の伏流水をたたえていて切ない感じ。もののけ姫では、菊池さんのトレモロが綺麗だった。最後「カントリーロード」で締めとなった。

 MC。菊「あー『ふたたび』入れるの忘れた!」ご「毎回違いますからね」「僕だけかな?短調ばっかりだなーって」
バランス重視のござさんらしい。短調ばっかりなのは、レクイエムが入っていたからだろうか(笑)。
 ここで「変奏曲コーナー」となる旨のトーク。ござさんが水を飲むためピアノの後方へ行っている間、菊池さんは上手ピアノに座り普通に「あれってE♯でしたっけ?」と調性の確認(笑)。ござさんは慌てて水を飲み込み(サザエさんの「フンガ フフ」みたいな慌て方w)「いや…」と改めてセトリを確認するところは、普段もこうして仲よく会話してることを想像させる、カジュアルで親しみやすいライブで好もしかった。

(12)ダニーボーイ

 ここで「ダニーボーイ」。どちらかというとチルいダニボで、菊池さんが「1公演1ダニーボーイ」と言ってらしたのがおもしろかった。菊池さんはカントリー風のゆったりとしたベースを聴かせ、ござさんはトレモロで主旋律を。アドリブに入ると菊池さんがテンポを上げ、「Is’t she Lovery?」を混ぜ込みそのままサビへ。戻れるのか心配になるほどのアウト気味だったが戻っていたのはさすが。普通のダニボで終わらせないという意気込みと「変奏曲コーナー」を心から楽しんでいる空気が伝わってきた。

 MC。ござさん「予想外のことが起きて、刺激的でございますけども」と言いながら、次はクラシック「乙女の祈り」の変奏曲であると言うと、すぐにピアノの前へ。

(13)乙女の祈り変奏曲(ブルース)

 「乙女の祈り」は、実にブルージーな変奏曲。ござさんは下を弾いていたが体を揺らして楽しそうだった。2周目までは菊池さんが上で、3周目はござさんが上なのだが、サビのあたりで別の曲(ルビーの指輪的な?わからない)を入れ込み、それを受けて菊池さんも混ぜ、掛け合いとなったもののなんとか乙女の祈りに引き戻した。

 MCござさん「乙女でした!!!」笑 …どうだろう?
菊池「ブルースになるんじゃね?と22時間前に」 つまり前日の移動時とかリハとかそんな時に打ち合わせたのだろうか。

(14)パガニーニの変奏曲

 パガニーニのあの最初のフレーズから菊池さんの本領発揮だった。指がよく回っていて、時々観客席を見てはソロ回しの拍手タイムを設けてくれるのも観客としては本当に嬉しい。菊池さんの暴れっぷりが清々しいほどだったし、菊池さんの頑張りを受けてござさんのとんでもない速弾きも見ることが叶い眼福だった。
 ござさんのソロ回しのときにはいの一番に拍手を送りたくなるほどの素晴らしい演奏だった!

 この演奏が叶ったのは、ござさんの方からのオファーがあったということがトークの中で語られたが、今回、Tank!といいルパンといい、お互いの持ち曲を2台ピアノで弾くという贅沢な企画で、それがこの小さな海辺の町のホールで実現したのだ。来てよかったなあと本当に思った瞬間だった。
 この時点で、すでに16時。14時開演であることを考えると、ちょっと破格の長さなのだが、小さな子たちも飽きずにずっと静かに聴いていた。ともかく演奏が一曲一曲素晴らしいのだ。

(15)ファランドール

 そして「ファランドール」!ねぴふぁびで演奏された素晴らしい2台ピアノアレンジ。オーケストラの迫力をたった2台の鍵盤だけで表現するあの「ファランドール」だが、ねぴふぁびのときにはお互い背中合わせで、耳に意識を集中しての演奏だったと記憶する。今回は顔を見合わせて演奏することができるから、呼吸もピッタリでよりキメキメな演奏だったように感じた。
 ござさんはまるで自分がフルートを吹いているかのように、軽やかな主旋律を弾いていたし、菊池さんのパーカッションの深みのあるベースも素晴らしかった。ラスサビでは、16小節?くらいでござさんと菊池さんがグリッサンドして上下を入れ替わるという例の早技が繰り広げられ、ベース音も主旋律も途切れることなくクルクル入れ替わり立ち替わり、素晴らしい妙技を見せる演奏で、会場から割れんばかりの拍手が巻き起こった。わたしもメモを投げ出して立ち上がり、2人の熱演を称えた。

(16)encore 「仔犬のワルツ」

 これについては動画OKとの主催者様からの寛容な言葉があって、Twitterにもずいぶん上がったので特別付け加えるべきことはないのだが、ともかくも楽しそうに嬉しそうに弾いていたござさんの姿ばかり捉えていた動画を見て、わたしの興奮状態を察していただければ…笑

このあとござさんありがとう!って叫びました。


(17)おわりに

 実はかなり無理をして赴いた勝浦だったが、キャスでも話した通りとても満足のいくライブであった。ござさんに2日に渡って会える機会なんてそうそうないし、充実した練習ぶりが窺われる内容、しかも盟友菊池さんとのコラボ。贅沢極まりなかった。
 でも何より、「ござ式」出版のあとであり、子供たちやピアノを愛する人たちが聴いている中で演奏できることは、ござさんにとってやっぱり特別なことだったのではないかと想像する。
 お土産も何もなく、「勝浦坦々麺」も本当に食べたのかどうかわからない(キャス参照)(笑)旅だったけれど、ござさんのあの楽しそうな嬉しそうな恥ずかしそうな笑顔を宝物にして、勝浦の旅を終えた。
 最後まで読んでくださってありがとうございました。最後に、2023年7月15日から16日にかけて延々とござさんトークを繰り広げながらERAちゃんと描いた落書きを。
ERAちゃん、ありがとうね。謎旅館も楽しかったね!(その話は別記。嘘w)

左 ゆうかげ     右 ERAちゃん 

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