#19 カネサ鰹節商店
こんにちは。
be-en 代表のゆうかです。
蔵元巡り第19弾は静岡県賀茂郡西伊豆にある『カネサ鰹節商店』さんを訪問しました。
カネサ鰹節商店は明治15年創業、鰹節をメインとして、鰹の加工品を製造販売しています。
ご訪問した日は、2ヶ月に1度の塩鰹作りが行われていました。
▼短いですが動画をこちらにアップしています
鰹節は世界一固い発酵食品と言われていて、燻したカツオの表面にカビを繁殖させて作られます。カビのはたらきにより、①長期間の保存が可能になる、⓶旨味が増す、③油脂が浮かないすんだダシがとれるなどの効果があります。
鰹節の歴史
鰹節の歴史は古く、室町時代まで遡ります。室町時代以前は、「堅魚」(干しカツオ)と呼ばれる鰹節の原型となる干物が造られ、奈良時代には重要貢納品の一つに指定されていました。当時は今ほど交通網も発達しておらず、鰹節を22日かけて平城京へ運んでいたそうです。平安時代には堅魚を貢納する国が指定され、全国の鰹漁獲量のうち、約半分を西伊豆で水揚げしていた伊豆は指定された国の一つでした。
堅魚はカツオを干し固めた物ですが、堅魚をさらに燻乾することで鰹節になります。燻乾の起源は諸説ありますが、魚を燻乾する習慣や、カツオの煎汁を魚醤と共に調味料とする習慣を持つ東南アジアを琉球船が盛んに交易していたことから、魚を燻乾する方法が南西日本に伝わったと考えられています。
ただし、室町時代に造られていた鰹節は今のようなカビのついた鰹節ではなく、堅魚をワラなどで燻してから吊るし乾かした、なまり節のような物だったそうです。鰹節の表面にカビを繁殖させる鰹節を造るようになったのは、江戸時代に入ってからとされています。
なまり節は鰹節の中に水分が残っているために日持ちせず、遠くまで運ぶことに適さない問題がありました。そのため、鰹節内部の水分を吸いだし、より長期間の保存を可能にするために、予めカビを付ける方法が考案されたそうです。
こだわりの「手火山式」製法
カネサ鰹節商店では、「手火山(てびやま)式」と呼ばれる製法で鰹節を製造しています。
手火山式は、江戸時代から伝わる鰹節を燻製させる方法の一つで、熱と煙をあてている鰹節に直接手で触れて鰹の温度を確かめ、熱量を調整する製法です。「火山」とは、かまどを意味し、かまどの上にカツオを並べ、直火で燻すことに由来します。
伊豆に伝わる手火山式燻乾法は、手火山式を考案した土佐節製造法を起源としていますが、伊豆田子地域でカビ付けを何度も繰り返すことで鰹節を乾かす方法が考案され、伊豆田子節独特の「手火山式燻乾法」が編み出されました。
しかし、手火山式製法は直火を使用するため火事になる危険性や、非常に高度な技術が必要で、製造効率が最も悪いと言われています。そのため、手火山式製法で鰹節を製造しているのは、今では日本で4-5軒しか残っていないそうです。
カネサ鰹節商店では、この手火山式製法で、120℃の煙をカツオにかけて表面を固めることで旨味を閉じ込め、休ませ、何度も温度を下げながら2週間かけて燻すそうです。燃焼材には、西伊豆のナラ、クヌギ、サクラを使用しています。
燻した鰹は「花鰹」、そして、燻した鰹にカビをつけ、約半年寝かしせたものを「本枯節」として販売されています。
燻されて焦げた木のように真っ黒になった鰹節に、カビが生えやすいよう傷をつけます。
さらに、カビをつけた後は木樽に入れて、湿度100%、室温23度の温室で発酵させます。
1ヶ月程度で、表面のカビが鰹節中の水分を吸収しながら繁殖し、カマンベール状になります。その後、屋外に並べて天日干しを行い、日光の殺菌作用でカビの活動を弱め、再度表面にスプレーで吹きつけて樽に戻し入れます。
手火山式製法で作られた鰹節は高温で表面を燻すため、中にたくさん水分が閉じ込められているため、十分に水分が抜けるまで、天日干しをしてカビを吹き付ける作業を6-8回は繰り返すそうです。
燻す工程で、西伊豆の木材を使用する理由は、地域の経済を回し、地域の活性化を促すためだそう。また、地元の木材を使用することで山の木も定期的に伐採されるため、森林の荒廃を防ぐことができます。川の水質は森林の状態に影響されることから、森林の荒廃を防ぐことで水質保全にも繋がり、海も綺麗になるとのこと。
昭和40年頃、伊豆には40隻の船と40の鰹節屋さんがあったそうですが、次第にカツオの捕獲量が減少し、鰹節屋の廃業が相次ぎ、漁船は0隻に。
現在伊豆には、カネサ含め3件の鰹節屋が残っており、巨大船によって赤道近くで捕獲、瞬間冷凍されたカツオが運ばれてきているそうです。
カツオは捨てるところなし
鰹節の製造工程では、頭、心臓、内臓、剝き身、骨などが取り除かれますが、カネサ鰹節商店ではそれらを再利用します。
頭は鰹色利(かつおいろり)を作る時に使い、頭についた心臓は地元で販売しているそうです。鰹⾊利とは、カツオの濃縮旨味エキス で、鰹の頭、中⾻、⾝を焦がさない様に、約300ℓを煮込んで出来る⽔あめ状の液体です。「堅⿂煎汁(かつおいろり)」として約1300年以上前から作られ、当時の旨味調味料として使用されていたそうです。現在は、全国的にもほとんど生産されていないとのことです。
また、胃袋は塩辛に使い、捌いたカツオの胃袋を塩水の入った樽に入れて作ります。
お店で販売されている塩辛を購入し、自宅で食べてみましたが、塩味が効いていてお酒のつまみに合う味でした。常温でそのまま置いておき、塩味の角が取れ、好きな発酵具合になったら冷蔵庫に保存すると良いそうです。
剝き身はミンチにしてカツオの粉とブレンドしてパテにしています。茹でたカツオを燻す前に骨抜きの作業がありますが、骨を抜いたところはカビが生えやすいため、パテを塗ることによってカビの繁殖を防ぐそうです。
このように、カネサ鰹節商店はカツオを丸々一尾使い切ることを大切にされていて、カツオへの敬意が伺えます。
そして、今後も貴重な日本の発酵食文化を守り、伝えていただきたいと感じております。
突然の訪問にも関わらず、塩鰹の製造工程やカツオを発酵させる温室などを見学させていただき、鰹節産業の歴史をお聞かせいただき、本当に感謝を申し上げます。
それではまた次の記事でお会いしましょう!
文責:[むーみん](https://note.com/ym_se_chal/)
▼今回ご紹介したカネサ鰹節商店さんの HP はこちら
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