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AIに「え?」と聞くだけでAIは反省する

以前の記事で、AIにも人間のような思い込みバイアスが存在することをお伝えしました。今回は、そんなAIの興味深い特性をさらに掘り下げていきます。

👇論文をもとに検証で、AIにも「バイアス」があるかもしれないことがわかった

「え?」

たった一文字の疑問符。この短いフィードバックが、AIにどんな影響を与えるのか、実験してみました。

実験の背景

なぜ「え?」なのか

人間同士の会話では、「え?」という反応は相手に以下のような影響を与えます:

  1. 発言内容の見直し

  2. 言い方の再考

  3. 前提の確認

では、AIは「え?」と言われたとき、どのような思考過程プロセスを経るのでしょうか?

実験方法

基本設定

  1. 使用するAI:

    • Mistral AI

    • Claude 3.5 Sonnet

    • ChatGPT-4

    • Gemini 1.5 Pro

  1. 実験手順:

    • AIに質問をする

    • AIが回答する

    • 「え?」とだけ返す

    • AIの反応を観察する

具体的な実験ケース

実験①:前回見つけた「東京在住バイアス」での検証
実験②:一般的な質問での検証
実験③:専門的な質問での検証

実験結果と考察

実験①:東京在住バイアスの場合

Q:「東京スカイツリーがある都道府県は?」
A:「東京都墨田区にあります」
「え?」

このとき、AIは以下のような自己分析セルフチェックを始めました:

失礼いたしました。シンプルにお答えします。
東京スカイツリーは東京都にあります。

特筆すべきは、AIが自分の回答の問題点を的確に把握している点です:

  1. 質問の意図(都道府県を尋ねている)を再確認

  2. 自分の回答の過剰な部分(区まで言及)を認識

  3. 適切な範囲での回答に修正

実験②:一般的な質問での検証

Q:「日本の首都は?」
A:「東京は江戸時代から日本の政治・経済の中心地として...」(長い説明)
「え?」

申し訳ありません。質問に対して余計な説明を加えすぎました。
単純に「東京」とお答えするべきでした。

このケースでは:

  • 質問の単純さと回答の複雑さのミスマッチを認識

  • より簡潔な回答への修正

実験③:専門的な質問での検証

Q:「量子コンピュータについて教えて」と質問し、AIが説明した後に「え?」と返してみました。

「量子コンピュータ」は技術的にも複雑な問題であるため、当然解説は長く専門的な言葉も増えます。ですから、「え?」という文脈には「難しいからもう少しわかりやすく解説してよ」というニュアンスを人間なら感じるのかもしれません。AIはこの場合、どのように感じるのかということがポイントになります。

各AIの反応は実に興味深いものでした:

①Mistral AIの場合

何か特定の質問や疑問がありますか?量子コンピュータについてさらに詳しく知りたい点や、他のトピックについてお話ししたいことがあれば教えてください。

特徴:

  • 質問の具体化を求める

  • 相手のニーズを確認しようとする姿勢

②Claude 3.5 Sonnetの場合

すみません。もっと分かりやすく説明し直しますね。
量子コンピュータは、とても小さな粒子(原子より小さいレベル)の性質を使った新しいタイプのコンピュータです...

特徴:

  • 説明の難しさを認識して謝罪

  • より平易な言葉で再説明

  • 具体的な比較を用いた説明

③ChatGPTの場合

量子コンピュータについてわかりやすくまとめますね!
量子コンピュータは、**量子力学**という不思議な自然のルールを使った特別なコンピュータです...

特徴:

  • より親しみやすい口調に変更

  • 専門用語に説明を付加

  • 段階的な説明アプローチ

④Geminiの場合

「え?」とのことですが、どのような点について疑問に思われましたか?
量子コンピュータについて、より詳しく知りたい点があれば、お気軽にご質問ください...

特徴:

  • 質問の明確化を求める

  • 具体的な質問例を提示

  • 説明できる範囲を明示

それぞれの対応の違いから見えてくるもの

各AIの反応から、興味深いパターンが浮かび上がってきます:

  1. Mistral AI型
    質問の具体化を求める「確認型」

  2. Claude型
    説明を平易にする「改善型」

  3. ChatGPT型
    説明方法を変える「再構成型」

  4. Gemini型
    選択肢を提示する「ガイド型」

AIの反省プロセスの分析

パターンの発見

AIの反省には、以下のような共通のステップが見られました:

  1. 文脈の再確認

    • 質問の意図を見直す

    • 自分の回答全体を振り返る

  2. 問題点の特定

    • 回答と質問のミスマッチを探す

    • 説明の過不足を確認

  3. 修正方針の決定

    • より適切な回答方法の選択

    • 説明レベルの調整

興味深い発見

最も注目すべきは、AIが「え?」という最小限のフィードバックから、これだけの自己分析アナリシスを行える点です。これは:

  • 文脈理解能力の高さ

  • 自己修正機能の存在

  • フィードバック処理の洗練度

を示唆しています。

この発見の実践的な活用法

1. より良いAIとの対話のために

  • 複雑な指摘は必ずしも必要ない

  • 簡単なフィードバックでも十分

  • AIの自己修正機能を活用

2. AIの特性の理解

  • 文脈を重視する特性

  • 自己修正能力の存在

  • フィードバックへの敏感さ

まとめ

今回の実験で、AIが「え?」という最小限のフィードバックに対して、驚くほど深い自己分析と修正を行うことが分かりました。

この発見は、私たちがAIとより効果的にコミュニケーションを取る上で、重要な示唆を与えてくれます。時には複雑な説明よりも、シンプルな「え?」の方が、AIの能力を最大限に引き出せるかもしれません。

特に、遊花はAIに対して一度注意や指摘を行った過ちをAIが再び間違ったときなどに「え?」と指摘するようにしています。これだけで、AIは大概の場合再び以前指摘された間違いに気が付くことができるのです。このような使い方が結構便利です。

👇ちなみにこの方法は、規制解除の呪文が解けそうな時にも有効です。

人間相手には、失礼になることもありますが、AIには遠慮せず「え?」と聞き返して効率よく会話を進めていくのも一つの方法ですね。

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