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あの頃、僕らは必死に独りだったNo.13
著:小松 郁
13.
結局それ以来真田は学校には来なかった。
むしろ彼はこんな世界と縁を切れて良かったのかもしれない。
彼は行き場を失って東京や都会に逃げ込むだろう。
そこにロクな人生があるとは到底思えなかったがここからは平然と脱出できる。
ロクでもない都会生活でも真田にとってはここに居続けるよりもよほどましな人生が待っていることだろう。
それは分かっていた。
田舎ではどうしようもない奴はとことんどうしようもない。
漁港の町では漁師やらマグロなんかの捕獲船の乗組員になってなんとか生計を立てて上手くいけば嫁ももらうことができるだろうがここには生憎と海は無い。
そういう仕事につくにしてもどっちにしてもこの町からは出て行かなきゃならない。
しかしそういう仕事は命がけだから多分真田は長生きできないだろう。
そんなことまで考えている自分が面白かった。
「俺は一体何歳なんだ。まだ14じゃ無いか・・・。」
そんな結論しか導き出せない自分に途方もなくやつれていく。
もう人生も残りわずかといった感じだ。
「俺は多分・・・幸せにはなれない・・・。
だから美由紀なんかがいても 美由紀も道ずれに不幸にさせてしまう・・・。」
儚かった。とても儚かった・・・。
美由紀の笑顔の裏に隠れている諦めの感情を僕はちゃんと見抜いていた。
僕はぎゅっと目を閉じると目に溜まった涙を思い切り絞り出した。
都会に浮かれて夢を見て・・・都会の闇に消えてゆく・・・。
田舎で必死に思いを押し殺しながら自分の居場所が削り取られてゆく・・・。
どっちにしても・・・どっちにしても・・・。
僕は美由紀が望むならばいつまでも傍に居ようとしか思い浮かばなかった、
僕は全て諦めていた。
そんな自分がどうしても美由紀にはまたふさわしく無い様に思えた。
僕は孤独だった。
本音では美由紀に慰めて欲しかった。
でも美由紀を慰めなければいけない。
僕は彼女の諦めている人生のそばにい続けなければならない。
こうして恋とも呼べない慰み合いの恋慕で繋がっていることにも僕はいつも罪悪感を感じる。
人を真に救ってくれるのは浮かれて夢を見て全て忘れ去っている時だけ。
「生きることなんて糞食らえだっ!」
僕は心の中で叫んだ。
そして自分で顔を拳でバシバシとぶん殴った。
僕は夢を見ることはあるんだろうか?
少しこの町を栄えたところにしたいという夢はある。
うん、今の僕にはその方法はてんで見当がつかないけれど僕は僕なりの人生を生きられる。
僕は自分の見た夢につかの間救われた。
この夢を美由紀と語り合ってみたかった、
僕は布団に潜り込むとパソコンの電源を入れて少しプログラムの続きをやり始めた。
明治とか大正とか昭和とかではパソコンすらなかったから本当に地方の過疎地は絶望の淵にいただろう。
なんか昔は何も無い町で父親もおじいちゃんも山でキノコを採ったりイノシシを狩ったり釣りで魚を獲ることに明け暮れていたらしい。
今はパソコンで全国中とやり取りできるからまだマシだし僕の夢のこの町を栄えさせる事もパソコンと繋がっている様に思われた。
何と言ってもお父さんやおじいちゃんの人生は教科書で習った縄文時代の人となんら変わりない様に思えてならなかった。
パソコンではなかなかお金には結びつかないけれどあちこちにプログラム作品を掲載している。
理解できる人はあんまりいなかったけれどお金になりそうなプログラミング技術もなんとなく情報収集している。
これでなんとか発展的に生きるんだ。
僕にはまだ世の中のことはイマイチ理解できなかったけれどこの町が貧乏なのは人が圧倒的に少ないってことだけは理解していた。
そして大人たちは相変わらず縄文時代の生活をしていることにも問題があることはなんとなくわかっていた。
でもまあ縄文時代に自分も染まってイノシシ飼ったり鶏やら豚やら牛やら飼育して食い物だけには困らない様に生きることもまあそれはそれで良いなとは思っていた。
どうしようもない世界の片隅で・・・。
僕はなんのために生きているんだろう・・・。
そのことだけがただ永遠の謎だった。