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Stephen Stills「Manassas」(1972)

唐突ですが強力なアルバムのご紹介です。当時CS&Nのリーダー格として知られるスティーヴン・スティルスも、ソロアルバムとしてはニール・ヤング等に先を越された感があったのですが、ようやくスゴイアルバムを発表しました。
この1972年当時のアメリカで流行っていた音楽、スワンプをベースに、サザンロック、カントリー、ラテン風味を効かせた素晴らしい楽曲が収められており、当時LP2枚組というボリュームに、それぞれA面「The Raven」、B面「The Wilderness」、C面「Consider」、D面「Rock & Roll Is Here To Stay」といったサブタイトルが付けられていました。

1971年の夏、当時フライング・バリット・ブラザーズの中心メンバーだったクリス・ヒルマンはバンドに行き詰まりを感じており、スティーヴン・スティルスに相談を持ちかけます。一方スティーヴンはコンセプトアルバムの構想を練っていたところで、クリスと意気投合。同じくフライング・バリット・ブラザーズのバーロン・バーライン(フィドル)とアル・パーキンス(スティールg)を誘い、レコーディングをスタートさせます。
更にCS&Nのドラマーであったダラス・テイラー、同じくベースのカルビン・サミュエルスポール・ハリス (Key)、ラテン系バンドにいたジョー・ララ (Perc)が加わり、「マナサス」として本格的に活動を開始します。

そういった意味ではこのアルバム、スティーヴンのソロアルバムと位置づけられる一方で、彼がバンドサウンドに挑戦した意欲作とも取れます。確かにバンドとして、レベルの極めて高い演奏と、クオリティの高い楽曲が堪能できますね。

まず「The Raven」サイド。短めの曲が間隔なしでガンガン来ます。基本はスワンプ的なロックですね。そしてのっけから強力なチューン、①「Song Of Love」です。スティーヴンの若干ハスキーな声がいいですね。アルのスティール(スライド)ギターとジョーのパーカッションがいい味出してます。
YouTubeにはスタジオライヴの映像がありました。他のマナサスの映像も同じスタジオライヴですが、こうやってライヴを見ると、このバンド、相当うまいなあと思ってしまいました。

個人的には⑤「Both Of Us (Bound To Lose)」のラテンフレーヴァーたっぷりな楽曲に感心してしまいました。
イントロの雰囲気はどう聴いても当時のスティーリーダンに似てます。いや、ひょっとしてスティーリーが似せたのか??
この辺のセンスとアレンジはこのアルバムの聴きどころですし、当時はスティーヴンの才能が溢れ出ていたことがよく分かります。

⑥「Fallen Eagle」からはカントリーサイドです・・・。
何の予備知識もなくコレを聴くと、のけぞってしまうでしょう(笑)。あまりにも①~⑤と違うので・・・。
「Fallen Eagle」のフィドルが流れてきた瞬間、別世界です。私はカントリーが大好きなので、この「The Wilderness」サイドは好みなのですが。

いわゆるカントリーバラード的な⑩「Hide It So Deep」の映像もありました。アルバムバージョンはイントロでフィドルがフューチャーされてますが、スタジオライヴでは、アルがスティールギターで情緒感漂う名プレイを聴かせてくれます。いい演奏、いい楽曲です。
それにていもスティーヴン、気持ち良さそうに歌ってます。カントリーサイドでは本領発揮しているクリスのコーラスもばっちりですね。ただやっぱりスティーヴンは緊張感漂う楽曲が合ってます。なんかこうしたカントリーを彼が歌っているのは違和感を感じます(笑)。

⑫「It Doesn't Matter」からは「Consider」サイドです。この曲はクリスがFBB時代に作った楽曲ですが、適度に緊張感漂う名曲です。なかなかスリリングな演奏ですよね。

D面「Rock & Roll Is Here To Stay」、なかなかスゴイタイトルですね。このタイトルを現すような1曲が⑲「Right Now」。ロックしてます。やっぱりスティーヴンのヴォーカルはこうした曲がお似合いですね。

本作、70年代前半のアメリカンミュージックを聴きたければ、このアルバムを聴けば事が足りる、といった印象のアルバムですね。それくらい内容が濃いアルバムです。スティーヴンの才能はここで使い果たしてしまったのでしょうか(笑)。

CS&Nのメンバーなかでは、個人的にはグラハム・ナッシュが好みなんです。スティーヴンのソロもいいけど、グラハムも味わいのあるソロを発表してます。いずれご紹介したいですね。
それからCS&Nの素晴らしいハーモニーが堪能できる映像を発見したのでアップしておきます。なぜかスティーブンが優しいおじさんに見えてしまいます(笑)。当時はこんなに仲良かったのに…。


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