Official髭男dism「Rejoice」(2024)
以前から星野源と共にOfficial髭男dism、通称ヒゲダンが大好きでしたが、この7月に発売された彼等のサードアルバムである新作が素晴らしい。
Official髭男dismは2012年、藤原聡(Vocal, Piano)が小笹大輔(Guitar)、楢﨑誠(Bass, Sax)、松浦匡希(Drums)に声をかけて、地元島根にて結成されたバンドです。藤原は鳥取では偏差値が一番高い県立高校出身で、島根大学から銀行に2年間務めたという経歴。元々ドラムを担当していたという経歴も興味をそそられます。
バンド名ですが、変なバンド名ですよね(笑)。髭の似合う歳になっても誰もがワクワクするような音楽をずっとやっていきたい、との思いが込められたものらしいのですが、実際は音の響きとかイメージから付けられたバンド名です。でも確かに彼等の音楽はワクワクさせられますね。
本作のサウンド面ではエンジニアの小森雅仁の手腕が光ります。小森雅仁は、宇多田ヒカルを手始めに、米津玄師や藤井風を手掛けてきた気鋭の若手エンジニア。確かに2015年のデビューミニアルバム「ラブとピースは君の中」と比較すると、そのサウンドの違いは歴然としています。
本作はなんと全16曲。既に発表済のシングル8曲が含まれているので、お馴染みの曲が多く収録されているベスト盤的な味わいですね。
最初このアルバムを聴いたとき、あまりにもボリューミーかつ濃厚な内容なので、ちょっと消化不良気味になってしまいましたが、何度も聴いていると、これがかなり病み付きになってしまいます。それぞれの曲、演奏、アレンジがいいんですよね。
本作でどれがおススメかと問われたら、答えに非常に迷うところですが、彼等の演奏力・キャッチーでありながら楽曲自体の難しさをお示しするとすれば、やっぱり③「ミックスナッツ」でしょうか。
こちらは2022年6月にリリースされた楽曲で、TVアニメ「SPY×FAMILY」のオープニング主題歌です。リズムがジャズでありながらも、ギターがめっちゃロックしている、一聴風変わりな楽曲。これは是非、ヒゲダンに全く興味のない洋楽ファンにも、このライヴ映像を見てもらいたい。
イントロはサビをバラード風に歌い出すライヴ用アレンジ。おっ、ギターの小笹さん、エディ・ヴァン・ヘイレン仕様のギターで弾きまくってますね。それから始まるジャズ的展開。ドラムの松浦さんはこの曲のレコ―ディングは相当苦労したと述懐しておりました。ベースの楢崎さんのランニングベースもカッコいい(間奏のパフォーマンスも愛らしい)。藤原さんの歌もめっちゃ難しいのですが、この演奏もそれぞれがバラバラなことをやっているようでいて、カッチリしている。それらをサポートするホーン隊等も素晴らしいですね。やっぱりこんなライヴ、生で観てみたい。
ノリのいいヒットチューンの④「SOULSOUP」。
2023年12月にデジタルリリースされた「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」の主題歌ですね。
ここでのベース、ずっと軽快に動いてますね。楢崎さん曰く「一番難しい曲かも…」とのこと。藤原さんのヴォーカルも力強いし、何よりホーンが心地いい。
こちらもヒットチューンの⑧「Sharon」。続きますね~。この曲は骨組自体はセカンド「Editorial」制作時からあったものとのこと。
そしてこちらもタイアップ曲です。フジテレビ系月10ドラマ『マウンテンドクター』主題歌…。よくこれだけヒットチューンを量産出来ますね。それがどれも良質なポップスだし。
⑫「ホワイトノイズ」はテレビアニメ「東京リベンジャーズ」のオープニングテーマとして書き下ろされたもの。
この疾走感が堪りません。彼等がハードロック好きなバンドであることを証明するような1曲。小笹さんのギタープレイが光りますね。ギターソロではライトハンド奏法も披露してます。
かなりスリリングなアレンジで、あっという間に曲が終わってしまう印象。イントロの不協和音っぽいホーンはバイクのクラクションを表現しているとのこと。またサビと思ってしまう部分が実はBメロで、ABABと来て、最後に大サビ来るという展開も気分を盛り上げてくれます。これもまた畳み掛ける印象を与えてますね。
このライヴ映像、あまりにカッコよく、何度も見入ってしまいます。
かなり根に持つタイプの藤原聡らしい歌詞の⑬「うらみつらみきわみ」。
恨みは晴らすものではない、最後には
♪ あんな人間にさえ「ありがとう」って言えるような未来と
うらみつらみはらさず逆に愚直に自分をやけに鍛える重み ♪
とポジティブな展開に…、それを明るいシャッフルナンバーにして歌い切る、ヒゲダン流の素晴らしいポップスですね。
人生をチェスボードに準えているような⑭「Chessboard」。
この曲、大好きなんですよね…。
もちろんこの曲の最大の聴き所は、聴き手全員が歌えるようなコーラス部分。今回、4年振りの声出し有観客でのライブツアーが始まりますが、きっとこの曲はハイライトになるでしょうね。藤原さん自身、ポリープの影響が出始めた頃に作った曲とのことで、彼にとっても印象深い曲だと想像します。
それにしてもこの畳み掛けるようなメロディの嵐…、圧倒されます。その後に続くピースフルなコーラス。実に感動的です…。
私的にはこのアルバムの⑫~⑮「TATOO」、そしてエンディングの「B-Side Blues」までの流れが大好きです。
そしてこの「TATOO」。
かなりR&B的なAORの匂いを感じます。もっと具体的に申せば、私だけかもしれませんがブルーノ・マーズのようなテイストですね。
そしてベースラインが実に心地いいのです。この曲ならコアな洋楽ファンにも受け入れられるかもしれません。
確実に成長し、もはや手の届かないくらいにビッグになってしまったヒゲダン…。こちらもライヴ、当選してくれるといいのですが…。