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Gary Moore「Back on the Streets」(1979)

ゲイリー・ムーアの訃報から10年以上経つんですね。早いものです。私自身は思い入れの強いギタリストではなかったものの、洋楽を聴き始めた頃に流行っていた「HIROSHIMA」や、同曲を含んだアルバム「Dirty Fingers」なんかをよく聴いてました。
とにかくギターを弾く容姿がスゴく、魂の籠もった早弾きギタリストというイメージが強烈にありますね。

それから後追いでゲイリーがシン・リジィに在籍していたことを知り、そういったピープルズ・ツリー的にシン・リジィもよく聴いてました。あの頃のゲイリー、若々しく、プレイも激しいものがありました。
ジャズロック的なアプローチを志向していたコロシアムⅡに在籍していた一方で、ブライアン・ロバートソンの代役でゲイリーがシン・リジィに参加したのが1977年初頭。そして1978年にゲイリーは正式にシン・リジィに加入。
こうした不思議なキャリアを反映したソロ作品が1979年に発表された本作。

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本作では後のゲイリーのライヴには欠かせない楽曲が数多く収録されてます。一般的にはエンディングトラックのフィル・ライノットとの共作⑧「Parisienne Walkways」(邦題:パリの散歩道)を聴くだけでも本作は十分価値があるとの評が多く見受けられますが、ロック好きの私にとっては、決してそんなことはないと声を大にして言いたいと思います。

本作は実質的なゲイリーのファーストソロアルバム。シン・リジィのフィル・ライノットブライアン・ダウニー、コロシアムⅡからの盟友のドン・エイリージョン・モール、そしてサイモン・フィリップスが参加。このメンバー構成からもお分かりの通り、見事にシン・リジィ的、コロシアムⅡ的な楽曲が並んでおります(そういった水と油的な選曲が本作の評価を惑わす要因にもなっていると思われますが)。

まず私が大好きな⑤「Hurricane」を。思わずジェフ・ベックを連想してしまうフュージョンインスト。ベースがロックしており、かなり高速ゲイリーが堪能出来ます。
そして映像ですが、1982年にゲイリームーアバンドとして来日した映像を。この映像、かなりカメラワークもいいですね。ゲイリーとドン・エイリー(Key)の掛け合い、スゴイ・・・。壮絶という言葉がぴったりですね。
ドラムはイアン・ペイス。そのイアンのドラム・ソロも確り収録されてます。いかにもイアンらしいスネアを駆使したソロ・・・、これまた鳥肌モノ。この映像1本だけでも、当時のゲイリーの凄さがお分かり頂けるかと・・・。

そして私を更に驚かせた映像が①「Back on the Streets」。この曲はフィルとの共作ですが、ゲイリーのイントロのギターがどこかコロシアムⅡ的で、本作中、シン・リジィ的な楽曲のなかでも一瞬僅かですがコロシアムⅡ的な要素が見受けられるかなと思ってます。
で映像ですが、ドラムはなんとコージー・パウエル! もちろんゲイリーとは共知の間柄なのですが、こうしてゲイリーと、しかもフィルまで一緒に演奏している映像を見たのは初めてです。ここでのコージーのプレイは、「らしさ」はあまり見受けられませんが、彼が叩いているだけで華があるので、それでいいのです。
この映像も素晴らしいですね。もうフィルとゲイリー・・・、この2人の姿ももう見れないのですね。

③「Fanatical Fascists」もフィル作なので、曲は完全にシン・リジィなのですが、④「Flight Of The Snow Moose」でムードは一変。いきなりスパニッシュギター的なギターが・・・。そして続くインストが完全にジェフ・ベック的なフュージョン。この3曲目と4曲目の差があまりにも落差がありすぎますね。
当時のゲイリーはハードロックとこうしたプログッシヴロックとどちらがやりたかったのでしょう。とにかく早く弾ければどちらでも良かったのかもしれません。ここでも超絶早弾きギターが・・・。弾きまくってます。

そして後のブルースギターのゲイリーからは想像がつかないメロウなチューンが⑥「Song for Donna」。楽曲自体はAORと呼べるかもしれません。こんな楽曲も作れてしまうゲイリー、ソングライティングセンスも非凡なものを感じさせます。

ちょっとファンク的な要素がまたかっこいい⑦「What Would You Rather Bee or a Wasp」。ドラムはシン・リジィのブライアン・ダウニー。意外とファンク、かつ手数の多いフュージョン的な叩き方をするドラマーだったんですね。ゲイリーもファンキーなカッティングを披露してます(ギターソロは相変わらず弾きまくってますが)。

エンディングは前述の通り、ゲイリーの一世一代の名演の⑧「Parisienne Walkways」。何の説明も要らないでしょう。もちろんフィルとの共演のライブを・・・。思いっきり溜めたギターソロ・・・。この曲を聴きながら2人の故人を偲びたいと思います。


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