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Kenny Rankin「Silver Morning」(1974)

秋らしい気持ちの良い天気が続いてますが、こういう日はケニー・ランキンの音楽がピッタリ。日本ではケニー・ランキンをご存じない方が多いのではないでしょうか。ボサノバの父と呼ばれているジョアン・ジルベルトが称賛していたというケニー、彼の音楽はフォーキーでありながらも、かなりボサノバに近いサウンドで、カバー曲も原曲を大胆にアレンジしてしまう名手でもありました。

そのケニー・ランキンの代表作といえば、1974年発表の4枚目のアルバム「Silver Morning」。前作「Like A Sead」よりマーキュリーからリトル・デヴィッドへ移籍。このリトル・デヴィッド時代に発表された4枚のアルバムはどれもが至福の時間を感じさせるような名盤ですが、特に本作は楽曲、アレンジ共に秀でたアルバムとの高い評価を集めている作品です。

プロデュースはデビュー作からの付き合いのジャック・ルイスに加えて、ビリー・ジョエルの「Piano Man」のプロデューサーとしても著名なマイケル・スチュアートが参画。全10曲中、5曲がカバーソングの構成。こちらのカバーも相変わらず秀逸な仕上がりです。

まずはケニーの代表作でもあり、華麗なケニーのガッドギターと歌詞にも注目の⑥「Haven't We Met」をどうぞ。
こちらは1965年にジャズ・シンガーのカーメン・マクレエへ提供したセルフ・カバーです。アップした映像は2001年の素晴らしいライヴ。もう歳を取ってしまったケニーの演奏ですが、それでも素敵なボッサ・ソングであることがよく分かると思います。
この曲の歌詞、恋の始まりを歌ったチャーミングなもの。突然2人は出会い、こう言います…。

 “Pardon me, haven't we met?” (どこかで会ったかしら?)

そして軽快に歌うケニーのスキャットも二人の高ぶった気持ちをよく表してますね。

ビートルズの、いやポールの超名作の②「Blackbird」をケニーもカバーしております。
ガッドギターの名手、ケニーならではの美しいアルペジオ…、ケニーのスモーキーな歌声もこの曲にピッタリ。微妙にケニー流に部分部分、音程を変えているところもいいですね。気持ちの良い早朝にしっとりと聴いていたいナンバー。

いきなりスキャットで始まるボッサナンバーの③「In The Name Of Love」はケニーのオリジナルナンバーです。
スキャット混じりの早口なケニーのヴォーカルと、相当難しそうなギターが聴き所。楽曲のクオリティ、演奏力とアレンジ、どれもがケニーの凄さが理解出来るナンバーですね。

カーティス・メイフィールドの名曲④「People Get Ready」もケニーはカバーしております。
ジェフ・ベックやロッド・スチュアート、多くのスターたちに愛された楽曲。ソウル色の薄いケニーも味わい深いアレンジを施しております。随所に聞かれる胸に染み入るハーモニカはジョン・セバスチャン。ジョンとケニーは昔から交流のあるもの。ゴスペル風なコーラスは多少ソウル色を感じさせますが、やっぱりケニー・ランキンの世界ですね。

再びビートルズのカバーです。軽快なスキャットが堪能出来る⑦「Penny Lane」。
如何にもケニー・ランキンって感じのペニー・レイン。コレもいいですね~。
歌詞を歌わずにスキャットで…、大胆です。原曲の陽気さが別のアプローチでうまく表現されてます。やっぱりケニーって凄いアレンジしますよね。

ちょっと亜流ですが、ボートラとして収録されていた⑪「Why Do Fools Fall In Love」もご紹介しておきます。
ご存じ1956年のFrankie Lymon & The Teenagersのヒット曲。私の大好きなビーチボーイズやジャクソン・ブラウン等、多くの方々に歌い継がれているポップスですね。こちらをケニーはちょっとジャージーなアレンジを施し、ケニー流ポップスに仕立ててます。

この後ケニーは1975年に「Inside」、1977年に「The Kenny Rankin Album」と名盤を発表していきます。
たまにはこうしたまったり出来る音楽もいいのではないでしょうか。


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