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The 5th Dimension「Up, Up and Away」(1967)
黒いママス&パパス、ジミー・ウェブが堪能できるアルバム
この当時の音楽業界は調べれば調べるほど面白いですね。この黒人5人組(男性3人、女性2人)コーラスグループであるフィフス・ディメンション、シングルはよく聴いてましたが、アルバムを通して聴いたのは本作が初めて。そしてこのフィフス・ディメンション、あの往年のロックンローラー、ジョニー・リヴァースがバックアップしたグループだったんですね。
ジョニーは新興レーベル「ソウルシティ」を設立し、そこでフィフス・ディメンションを1966年にデビューさせます。ちなみにジョニーのマネージャーはあのルー・アドラー。当時ルー・アドラーはママス&パパスを手掛け、大ヒットを記録してました。
フィフスのデビューシングルはフォー・トップスばりのR&Bだったようですが、これが全くヒットせず、ジョニーが黒人版ママス&パパスに仕立て上げるのです。もちろんこの立役者はソングライターのジミー・ウェッブ。エンジニアはボーンズ・ハウ。
そして完成させたデビューアルバムが本作なんです。
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このアルバム、何と言ってもジミー・ウェッブの①「Up, Up And Away」が光り輝いてます。
本作には私の大好きなダンヒル・リズムセクション、ジョー・オズボーン(B)、ハル・ブレイン(Ds)が参加。加えて御馴染みラリー・ネクテル(Key)、アル・ケイシー(G)等も参加しており、そのメリハリのある演奏も聴きどころですね~。
「Up, Up And Away」ではハル・ブレインの効果的なリム・ショットと豪快なドラム、アル・ケイシーのクラシカルなギターがいいですね~。そして間奏のジョーのベース! ジョーのベースは本当に聴いていて安心できます。
見事なコーラスワークに2分30秒があっという間に過ぎてしまいます。完全に口パクの映像ですが、この当時の最高の演奏とソフトロックの金字塔的楽曲を是非堪能してください。
②「Another Day, Another Heartache」は本作発表後の先行シングル。
こちらは当時はもう著名な存在であったP.F.スローンとスティーヴ・バリの共作。強力なビートソング。ジョーのベースが唸りをあげてます。このベースの音が大好きですね。
メロウな③「Which Way To Nowhere」は、やはりジミー・ウェッブの作品。リズムに強弱付けたりして、コーラス同様、演奏のアレンジも凝っているのがフィフスの特徴。これもいい曲ですね。
実は本作、最初何の予備知識もなく聴いたのですが、まず思ったのが⑥「Go Where You Wanna Go」において、「コレはママス&パパスでは?」と・・・。実際この曲はママス&パパスのリーダーであるジョン・フィリップスの曲で、彼等自身も歌っているそうです。フィフスは忠実にカバーしてますね。
そしてこの曲こそが、フィフス・ディメンションとグループを改名して、1966年末に最初のシングルとして発表されたもの。黒いママス&パパスはその通りだったんですね。
⑧「Pattern People」もジミー・ウェッブの作品。これもママス&パパスを思わせますが、間奏のアカペラ部分は、もう完全にフィフスの世界。というかジミー・ウェッブの独特の曲作りによるところが大きいように思われますが、素晴らしいコーラスワークにうっとりさせられます。エンディングでのコーラスワーク、いいですね。
⑫「I'll Be Loving You Forever」~⑭「Too Poor To Die」はもろにR&B。恐らくフィフス・ディメンション改名前は、このような曲ばかりやっていたんでしょうね。フィフスが黒人グループであったことを思わせる曲。ソフトロック指数はかなり低いです。
ジャケは若干サイケぽいですが、全くサイケ指数ゼロの本作、後にソフトロックの名盤の一枚に挙げられますが、特にジミー・ウェッブの作品が素晴らしい。そしてジョーの骨太なベース、ハルの圧倒的なドラムの当時の一級品の演奏。もちろんフィフスの絶妙なコーラスワークも素晴らしいですね。