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Whitesnake「Whitesnake」(1987)

ジョン・サイクスが亡くなられた。私のXのTLでも一時騒然となったくらい、同世代の音楽愛好家にとっては馴染みのギタリストだったのでしょう。

でもジョンが関わった作品というと、キャリアの割にはそれほど多くはありません。
私自身は彼との出会いは1983年にシン・リジィが発表したアルバム「Thunder and Lightning」からで、その激しいギターに驚愕した記憶があります。当時エアチェックした音源を繰り返し聴いていましたね。その後、彼の名を目にしたのがホワイトスネイクのアルバム「白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス」でした。

ちょうど新年にホワイトスネイクのアルバム「Lovehunter」をご紹介済ですが、ここでも言及した通り、コージー・パウエルのファンだった私にとって、ホワイトスネイクのベストアルバムは「Slide It In」だと思っていたので、そのコージーが脱退した後のこのアルバム、特に商業的なヒットも狙った曲も収録されていることもあり、それほど好きではありませんでした。

但し思い入れは非常にあるアルバムでして、実は大学時代にこのアルバムの中の数曲をコピーしておりました(私はドラムでしたが)。そしてその時のバンド名が「Cosmos Plan」であることも思い出し、思わず失笑(バンド名の由来は分かる方には分かるものでして…ここでは言及致しません)。
コピーしていても、ドラムは手数が多いし、ジョンのギターも派手だよなあ…と思ったものです。

このアルバム、個人的には好きではないと言いながらも、間違いなくハードロック史上に残る名盤であり、当初目論見通り、全米でのホワイトスネイクの人気を不動のものにした重要なアルバムでもあります。そしてその立役者は多くの曲でデヴィッド・カヴァーデイルと共作したジョン・サイクスであることも、衆目一致するところです。

ジョン・サイクスはミッキー・ムーディの後任として1983年にホワイトスネイクに加入します。当時のメンバーはデヴィッドの他、メル・ギャレイ(G)、ニール・マーレイ(B)、コージー・パウエル(Ds)、ジョン・ロード(Key)という布陣。こちらにジョンが加わり、当時は私も浮足立ったものです。
ただ、ホワイトスネイクというのは流動性の激しいバンドで、コージー、ジョンが脱退し、本作はドラムにエインズレー・ダンバー、キーボードにドン・エイリーが加わる形で制作。1987年4月に発表されます。プロデュースはマイク・ストーンとキース・オルセン。

本作を象徴するような1曲が①「Crying In The Rain」です。
オリジナルは5枚目のアルバム「Saints & Sinners」に収録されていたもの。それをジョン・サイクスのバージョンにリアレンジ(敢えてジョンのバージョンと呼ばさせて頂きます)。この曲はジョンの激しいギタープレイが存分に発揮されており、これは本作を象徴するような1曲となりました。
アップした映像、おやっと思いませんか。映像の音源は本作のレコ―ディングバージョンが使われてますが、ドラムはエインズレーでなくて、コージーですね。つまり元々この曲はライヴで演奏されており、既に1984年(もしくは1985年)のステージではジョンは自分の楽曲のようにして弾きまくっていたんですね。とにかくアップした映像の3分過ぎからのジョンの圧巻のギターソロ…、凄いですね。

こちらは如何にもジョンが作りそうなリフの②「Bad Boys」。
激しいギターのリフにデヴィッドの遠吠え(笑)。あのブルージーなデヴィッドが遠吠え…、一瞬眩暈が…、当時そんな想いだったかも。
LAメタルに迎合したようなサウンド。とはいえこの曲は明らかにジョン・サイクスのサウンドで素直にカッコいい。あとはエンディングでのエインズレーのうるさいツインバスドラも刺激的。今もこのジョンのギターリフには鳥肌が立つし、ハードロックというかメタルの音に近いこの曲、大好きな1曲です。

レッド・ツェッペリン風な③「Still of the Night」。
ここでようやくブリティッシュ・ハードロックなナンバーが登場。当時この曲にも痺れましたね。特に間奏の部分はZEPの「胸いっぱいの愛を」を彷彿させるような展開。こういうドラマティックな展開は如何にもブリティッシュロックな香りがします。ただ、この後の展開、シンセが絡んだアレンジはちょっと私の好みではないのですが。
本作の1~3曲目の展開は、数あるハードロックのアルバムの中でも群を抜いたスリリングな展開かなと感じます。

そして4曲目にはシングルとしても大ヒットした④「Here I Go Again」が収められてます。こちらも「Saints & Sinners」からのリメイクですが、この曲もカバーしましたね。この曲は、アメリカでの成功を狙ったとはっきり分かるようなもので、当時私的にはあまり好きではなかった曲。なので6曲目に収録されたいる「Is This Love」もフォリナーっぽくってあまり好きじゃないんですよね。

これぞ新生ホワイトスネイクの最高傑作の⑦「Children of the Night」。
大好きな1曲です。適度に愁いを帯び、適度にポップ。この曲もジョン・サイクスでなければ成立しなかったヘビーなナンバー。ここでも超速弾きのジョンのギターソロが聴き所。私の大好きなギタリストはランディ・ローズなんですが、ジョンのギターソロにも超速弾きのなかにもメロディアス、かつクラシカルな香りを感じます。この曲は最初から最後まで徹底的にカッコいいナンバーですね。

本作中、一番ポップな⑧「Straight for the Heart」。
最初この曲を聴いたときは、「これがホワイトスネイクなのか?」とちょっとガッカリしたものです。
でもポップス好きな私にとっては実は密かに大好きな1曲。全くブルージーな曲ではないのですが、これでもデヴィッド=ジョンの共作。
ギターはジョンらしいプレイが随所に聞けますね。ある意味アメリカナイズされた象徴的な1曲かもしれません。

こんな素晴らしいアルバムを残したジョン・サイクスですが、本作制作終了後、なんと解雇されてしまいます。本作は間違いなく、ジョン・サイクスの貢献が大き過ぎるアルバムなんですけどね…。デヴィッドとジョンはもともとあまり仲が良くなかったようですが、それ以上に、当時の敏腕A&Rのジョン・カロドナー(ゲフィン初代のA&Rマン、エイジアの仕掛人等々、数々の伝説を残していた人物)の指示によるものとも云われております。
実は私はその後にジョンが結成したブルー・マーダーは未聴ですが、やっぱりデヴィッド=ジョンが再び共演する姿を観たかったですね。

ジョン・サイクスのご冥福をお祈りいたします。


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