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松田聖子「風立ちぬ」4th (1981)
ここ数ヶ月、松田聖子のアルバムを聴きまくってますが、やっぱり「風立ちぬ」が彼女のベスト、いや80年代J-POP史上に残る名盤ではないでしょうか。
松田聖子はデビュー以来、「SQUALL」、「North Wind」、「Silhouette〜シルエット〜」と、いかにもアイドルらしいアルバムを発表していきますが、ここで松田聖子の制作陣は新たな挑戦に挑みます。
時は1981年、その年の3月、「A LONG VACATION」というアルバムがビッグヒットを記録します。あの元はっぴいえんどの大瀧詠一氏の名盤ですね。
その大瀧師匠に、大胆にも松田聖子陣はアルバム制作を依頼します。最終的には名盤「風立ちぬ」はA面の作曲・編曲を大瀧詠一、B面の編曲は鈴木茂(除く「白いパラソル」)、そして全作詞を松本隆が担当するという、はっぴいえんど・ファミリーが松田聖子に大きな貢献をする結果となりました。
余談ですがはっぴいえんどのもう一人、細野晴臣はこの2枚後に発表される「Candy」で初めて松田聖子に楽曲提供に至ります。
私自身も大好きな「白いパラソル」を聴くために、このアルバムを購入したのですが、まず最初の大瀧節から驚愕してしまいました・・・。
「A LONG VACATION」と「風立ちぬ」は対となるアルバムなんですね。
このアルバムはA面の大瀧サイドが多く語られますが、実際はB面の財津和夫、鈴木茂、杉真理という素晴らしい方々の作品も隙がないのです。以下楽曲一覧です。
【A面】
1.冬の妖精 作詞:松本隆/作曲:大瀧詠一/編曲:多羅尾伴内
2.ガラスの入江 作詞:松本隆/作曲:大瀧詠一/編曲:多羅尾伴内
3.一千一秒物語 作詞:松本隆/作曲:大瀧詠一/編曲:多羅尾伴内
4.いちご畑でつかまえて 作詞:松本隆/作曲:大瀧詠一/編曲:多羅尾伴内
5.風立ちぬ 作詞:松本隆/作曲:大瀧詠一/編曲:多羅尾伴内、ストリングスアレンジ:井上鑑
【B面】
1.流星ナイト 作詞:松本隆/作曲:財津和夫/編曲:鈴木茂
2.黄昏はオレンジ・ライム 作詞:松本隆/作曲・編曲:鈴木茂
3.白いパラソル 作詞:松本隆/作曲:財津和夫/編曲:大村雅朗
4.雨のリゾート 作詞:松本隆/作曲:杉真理/編曲:鈴木茂
5.December Morning 作詞:松本隆/作曲:財津和夫/編曲:鈴木茂
そしてもちろん語るまでもないでしょう、ミュージシャンも当代きっての名うての方々が参加しております。
私はもう1曲目の「冬の妖精」から引き込まれてしまいました。
前段で「A LONG VACATION」と「風立ちぬ」は対となるアルバムと申しましたが、この「冬の妖精」、あの「君は天然色」・・・、「A LONG VACATION」の1曲目ですが…、特にイントロ、リズムアレンジがソックリなんですよね。もちろん曲の雰囲気は違いますが。
②「ガラスの入り江」、ちょっとスローな情景が思い浮かぶような楽曲。もちろんこれは大瀧師匠の「雨のウエンズディ」をモチーフとしたもの。
「恋するカレン」がモチーフとなっている③「一千一秒物語」。人気の高い1曲です。フィル・スペクター・サウンドを再現したエコーを効かせて、奥行きを膨らませた演奏、いいですね。ドラムは私の大好きな青山純です。アコギは吉川忠英他、3名が参加してます。4人でかき鳴らしているんですね。
ふくよかなストリングスのアレンジは松任谷正隆。
聴けば聴くほど大瀧サウンドそのものですね。それに負けないくらい松田聖子の、ちょっとハスキーなヴォーカルが見事にぴったり合ってます。素晴らしい・・・。アップした音源はライヴですね。
そして私の大好きな④「いちご畑でつかまえて」。イントロの笛吹利明が奏でるアコギ、そして妙なメロディ・・・刺激的です。ドラムは名手、上原裕(彼らしいドラミングです)。そして白眉は松田聖子にクシャミをさせていること(2分34秒辺り)・・・、続いて二ール・セダカの「悲しき慕情」を彷彿させるコーラス(ドゥビドゥバ・・)。恐らく大瀧氏、「聖子ちゃん、ここでクシャミして」とか「こんな風にコーラスして」とか指示していたんでしょうね。まだあります。この曲のエンディング、急にフェイドアウトしたと思ったら、しばらくしてまた曲が・・・。大瀧氏のやりたい邦題(笑)。松田聖子の魅力も引き出しているし、素晴らしい!
「いちご畑でつかまえて」はメロディがとりづらい曲ですが、松田聖子はライブでも、この曲、うたいこなしてますね。ライヴ映像をアップしておきます。
大瀧サイド、最後はシングルとして発表された⑤「風立ちぬ」。バックの大瀧サウンドは秋の気配を感じさせる素晴らしいものがありますが、ここでは彼女のヴォーカルに焦点を当てるため、あえて歌番組の映像をアップしておきます。
素晴らしいアルバムなんで、かなり音源をアップしてしまいました・・・。
でもB面も素晴らしいんです。
B面ではかなりのお気に入りの⑥「流星ナイト」。財津和夫のメロディは松田聖子の声質に一番合っていたのではないでしょうか。このサビ、実に生き生きしてます。
2分36秒くらいから、ほんのちょっとですけど鈴木茂さんらしいギターソロが聴けます。
このアルバムは最初、⑧「白いパラソル」を聴くために購入したのですが、「白いパラソル」、今まで相当聴いてきているので、このアルバムを通して聴くと、すっかり地味な印象になってしまいます。
あとアルバムのトーンが秋(今頃でしょうか・・・)から冬をテーマとしているのに「白いパラソル」・・・、ちょっと季節感が違います(笑)。
最近の松田聖子には興味がなかったのですが、この⑨「雨のリゾート」の最近のライブ映像をみて、ちょっと見直しました。やっぱり超一流のエンターテイナーなんですね。そして2009年のコンサートでも、この曲が歌われるなんて・・・。声はちょっと大人っぽいですが、やっぱり松田聖子節です。
そうそう、この曲は杉真理作ですが、間奏のところなんかは彼らしいアメリカンポップスです。アップしたのは本作発表当時のライブ音源、なんと杉真理さんが登場し、松田聖子と一緒に歌っております。
そしてエンディングは素晴らしいバラードの⑩「December Morning」。これまた財津和夫作。
松本隆の詩の世界と財津和夫のメロディ・・・、そして松田聖子のヴォーカル。なんと贅沢な作品でしょう。冬のロッジが目の前に思い浮かびます。この曲が好きだったという方も多いでしょう。メロディが素晴らしいので、ピアノソロの音源をアップしておきます。
どうでしたか。アップした音源が、すべてスタジオ録音のものではないので、本当の良さがあまり伝わっていないかもしれませんが。80年代の名盤に相応しい内容だと思います。そしてジャケット・・・。このジャケットも素晴らしい。素晴らしいアルバムです。