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松任谷由実「流線形'80」(1978)

この時期になると妙にユーミンが聴きたくなります。
本作は荒井由実時代から数えて6枚目のアルバム。本作にはこの時期にはぴったりの「ロッヂで待つクリスマス」や「真冬のサーファー」が収録されていることで有名ですね。でも私的にはもっと大好きな曲がこのアルバムには収録されており、その楽曲の素晴らしい映像を見つけたので、それをご紹介致したく、今回記事に致しました。

プロデューサーで旦那さんでもある松任谷正隆(Key)、林立夫・渡嘉敷祐一(Ds)、高水健司(B)、鈴木茂・松原正樹・山下達郎(G)等が参加。安定の、安心感のあるミュージシャン達の極上のサウンドが堪能出来ます。

荒井由実から松任谷由実へ変わった最初のアルバム「紅雀」があまりにも渋いアルバムで、商業的に失敗に終わったユーミンが、間を置かずに発表したアルバムが本作。「紅雀」から一転、素晴らしいポップス集のような作りとなりました。

まずは地味なオープニングの①「ロッヂで待つクリスマス」をどうぞ。
なんとなく派手な印象のあるこのアルバムですが、実はオープニングはバラードなんですよね。よっぽど次曲の「埠頭を渡る風」の方がオープニングに相応しいと感じますが、敢えてこの曲をトップに持ってきたことにユーミンの強い意志を感じます。

本作中、もっとも有名な楽曲が②「埠頭を渡る風」ではないでしょうか。
ライヴのオープニングにはピッタリのナンバーです。どことなくラテン的な香りを感じさせるユーミンらしいメロディ。そして正隆さんのアレンジが冴えわたった1曲です。個人的にはこのアルバムの中ではそれほど大好きな曲でもないのですが…(苦笑)。

山下達郎のコーラスをフューチャーした③「真冬のサーファー」。
大好きな1曲です。適度にポップで、達郎さんのコーラスがハートウォーミングで曲に彩りを添えておりますね。そして私の大好きな映画「波の数だけ抱きしめて」の挿入歌でもあります。この映画も良かったなあ。半年くらい前、ホイチョイの馬場さんのYouTubeチャンネルに松下由樹さんが登場し、この映画の思い出を語ってました。

そしてこの映画の主人公、中山美穂さんの訃報が昨日伝わってきました。中山美穂さんが出演したドラマ、映画は数多くありますが、私が今真っ先に思い出すものは「毎度おさわがせします」ではなく、断然「波の数だけ抱きしめて」です。

冒頭に申し上げた私の大好きな曲、それが④「静かなまぼろし」です。
これは1978年3月2日に放送された「ミュージックフェア」でユーミンと沢田研二が共演した際に歌われた楽曲。沢田研二の大ファンだったユーミンが、この共演のためだけに書き上げた曲で、本作にてセルフカバー。肝心の沢田研二は11年後の1989年にこの曲をアルバムに収録しております。
実はユーミンが沢田研二に提供した楽曲は、これが2曲目。1曲目は1976年に発表されたシングル「ウィンクでさよなら」で、ユーミンは詞を提供。「ルージュの伝言」の詞を気に入ったジュリーが、ユーミンに依頼したらしい。

話が横道に逸れてしまいましたが、このたった1度の共演の映像をご紹介したいと思います。ジュリーがこの名曲を見事に歌い上げてます。横でしっとりとピアノを弾くユーミン、女性の顔をしておりますね。この時、ユーミン24歳、ジュリーは29歳。
映像と音が合ってませんが、この曲の持つ普遍的な素晴らしさは伝わると思います。ただひたすら素晴らしい…。

荒井由美時代を彷彿させるナンバーの⑤「魔法のくすり」。
この曲も大好きな1曲。「ルージュの伝言」のようなノリを持つ楽曲で、特にこの曲のドラムが大好きなんです。随所に散りばめられた数々のフィルイン。アップした映像では3分前後で登場するバスドラを絡ませたフィルインなんかは、ZEPのボンゾを思わせるような絶妙なフィルインですね。ハイハットワークも素晴らしい。
あと何気にカッティングギターもグルーヴィー。まさかこれ、達郎さんのプレイじゃないですよね。

そしてこの曲の最大の魅力は歌詞…。
 ♪ 女は誰も最後の愛人でいたいの ♪
強烈な歌詞ですね(笑)。ユーミンが女性からも熱い支持を集めていた理由がよく分かります。

アルバムのエンディングトラックの⑩「12階のこいびと」。
軽いフレンチポップスのような洒落た音楽。なのに歌詞の最後は12階から飛び降りることを示唆するような歌詞。この辺りのギャップ、音楽と歌詞とのギャップがユーミンの魅力だったりします。

素晴らしいポップス集的なアルバムですよね。ユーミンが再びユーミンであり続けたことを証明した1枚。今も色褪せない名盤かと思います。
そして全くの偶然ですが、この記事を書いていて、「波の数だけ抱きしめて」を見返していた矢先の出来事でした。この映画のサントラが、私にAORの素晴らしさを教えてくれたのでした…。そして中山美穂、ここでもいい演技しているなあと思ったものです。
中山美穂さんのご冥福をお祈り申し上げます。


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