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Donny Hathaway「Extension of a Man」(1973)

邦題「愛と自由を求めて」。ダニー・ハザウェイのサードアルバムにして、非常に思想的な内容の濃いアルバムです。この頃スティービーワンダーが傑作アルバムを相次ぎ発表していますが、それに負けないくらい充実したアルバムです。
ダニー自身のオリジナルアルバムは、実は5枚しか発表されてません。つまりもう彼はこの世にはおりません。本作品発表後、ダニ-の活動は鈍くなっていきます。黒人音楽を代表するアーチストとして、様々な期待を背負わされていたのかもしれません。

さて、本作ですが、プロデューサーにアリフ・マーディンを迎え、非常に格調高いアルバムに仕上がってます。

それはオープニングの①「I Love the Lord; He Heard My Cry (Parts I & II)」に表れていて、この曲はクラシック調のインストナンバーなんです。
黒人大学の名門ハワード大出身のダニーらしい、アカデミックな曲。そしてエリック・サティやラヴェル、ジョージ・ガーシュウィンからの影響を受けているダニーらしいナンバーでもあります。もちろんダニー自身の作曲。

私の大好きな②「Someday We'll All Be Free」。
すごく穏やかなエレピのイントロ、優しく語り掛けるようなダニーのヴォーカル。心地いいですね。ギターはコーネル・デュプリーとデヴィッド・スピノザ、ベースはウィリー・ウィークス、ドラムはレイ・ルーカス。地味ですが、安定感ある堅実な演奏が楽しめます。

かなりソウル色の濃い⑥「Come Little Children」。
ファンキーですよね。ちょっと60年代R&B的なアプローチのストレートなファンクナンバー。アカデミックな楽曲から、こうしたR&Bまで、ダニーは多彩で器用な方です。ちなみにここでのドラムはフレッド・ホワイトです。当時でもまだ18歳だったんじゃないですかね。

本作品の目玉はやっぱり⑦「Love Love Love」でしょうか。
これは自身の作品ではありませんが、ダニ-の弾くエレピが心地よく、非常に美しい作品に仕上がってます。コーネル・デュプリーのしなやかなリズムギター、そしてウィリー・ウィークスのよく動くベースもまたいいですね。それからゴスペルタッチのコーラスとオーケストラのアレンジも華麗さを際立たせてます。

ダニー・オキーフのラグタイム調の⑨「Magdalena」もまた意外な選曲。
こんな楽しい曲も歌いこなしてしまうダニー、いいですね~。ギターとバンジョーはヒュー・マクラッケン、ベースはゴードン・エドワーズ、ドラムはグラディ・テイト。

この他にダニ-の曲で必聴は「This Christmas」。これはオリジナルアルバムには収録されておらず、ベスト盤に収録されてます。毎年クリスマスの季節になるとかかる曲ですが、本当こころ温まるクリスマスソングです。

ダニーの曲はこてこてのソウルというより、フュージョン・AOR色の強いソウルと言えるかもしれません。この手の楽曲はお好きな方は是非御一聴下さい。

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