Dave Mason 「Alone Together」 (1970)
サイケデリックな音楽が真っ盛りであった60年代後半のロック。そんな中、スワンプロックが盛り上がってきます。このムーブメントの中心人物がデラニー&ボニー。そしてこのムーブメントが勃興する以前、1967年の春頃、デイヴ・メイスンはLA訪問時、グラム・パーソンズの紹介でデラニー&ボニーと会います。1967年というとデイヴはトラフィック結成間際の頃。でも結局はスワンプへの憧憬は捨て切れなかったのか、デイヴは1969年、トラフィック脱退後に渡米し、デラニー&ボニー等の協力の下、ファーストアルバムを制作します。
それが英国ミュージシャンとしては初のスワンプ・アルバムと云われている「Alone Together」です。
本作はトミー・リピューマが主催した新レーベル、ブルー・サムから発表されたもの。ブルー・サムというとベン・シドランとかクルセイダーズとかジャズ、AOR系をついつい連想してしまいますが、こんなアルバムも発表しております。プロデューサーはトミーとデイヴ。
もちろん参加ミュージシャンも紹介しておきます(特に本作においては、参加ミュージシャンを知るだけでも本作の凄さが理解して頂けるのでは)。
ヴォーカル・・・ボニー・ブラムレット、リタ・クーリッジ
ギター・・・エリック・クラプトン(但しクレジットなし)
ベース・・・カール・レイドル、ラリー・ネクテル
キーボード・・・レオン・ラッセル、ジョン・サイモン
ドラムス・・・ジム・ゴードン、ジム・ケルトナー、ジム・キャパルディ
皆、デラニー&ボニー・ファミリーなんですね。しかもドラムはジムばかり(笑)。ジム・ゴードンは後にレイラの共作者としても名を馳せたドラマーで、個人的には重々しいドラム・プレイが大好きなんですが、結局不幸な末路を辿ることになってしまいます。もうひとりのジム(ケルトナー)はビートルズ関連のソロアルバムにはよく名前も出てくるドラマーです。そして最後のジム(キャパルディ)はもちろんトラフィックのドラマーで、本作では⑧「Look at You, Look at Me」でデイヴと共作してますね(それ以外はデイヴ単独作品)。恐らく⑧のドラマーだけジム・キャパルディなのでしょうか。
アルバムトップの①「Only You Know and I Know」はオープニングナンバーに相応しい軽快なスワンプ・ナンバー。アコースティックのカッティングが音の素朴さを表してます。そのアコギに絡んでくる粘着質なギターもいい!あとこのモッサリとしたグルーヴ感はジム・ゴードンのドラムだと思われます。軽快なスネアワークもカッコいいですね。
③「Waitin' on You」はちょっとしたロックンロール系ナンバー。
ギターのリフは完全にブギー調ロックンロールです。女性ヴォーカル(リタ・クーリッジ??)のコーラスなんかはR&Bっぽくもあったりして、ライヴ映えしそうな1曲です。
ちょっとイントロがスペイシーな感じの④「Shouldn't Have Took More Than You Gave」。
ギターの音色がワウワウを効かせているのか、効果的ですね。この曲と⑥「Sad and Deep as You」は後にトラフィックに復帰した時のアルバム「Welcome To The Canteen」にも収録されてます。トラフィック・ヴァージョンはあまり本作のものと変化はなく、あまり面白味を感じさせませんが。
⑤「World in Changes」はマイナー調の湿り気を帯びたような楽曲。
後半はキーボードを中心としたスリリングな展開になってきます。本作は確かにスワンプなアルバムなんですが、こうした楽曲なんかは英国人らしい音だし、陽気なアメリカ人には作れない音ではないかと思ってしまいます。
エンディングトラックは⑧「Look at You, Look at Me」。
荒野をさすらうカウボーイを勝手に連想してしまうような曲。デイヴのヴォーカルがかっこいいんですよね。バックの演奏のスワンプフィーリングもいいですね。エンディングの熱いギターソロはエリック・クラプトンらしいのですが、クレジットには名前がなく、実際のところはわかりません。ただこのギターはクラプトンでは??と思わせる音ですね。
デイヴはトラフィックのライヴに一時参加するも(その時の模様が「Welcome To The Canteen」に収録されてます)、以降はソロ活動を続けてます。英国人らしからぬ、実にアメリカンなアルバムも発表していますね。