見出し画像

杉山清貴&オメガトライブ 「リバース アイランド」 (1984)

今の50代にとっては懐かしい杉山清貴&オメガトライブ。カルロス・トシキとは違うバンドと考えた方がいいかと思います。

私にとっては「Summer Suspicion」なんて良かったなあ…といった程度の印象で、アルバムは未聴でした。まったく興味なかったですしね。
ところが10年以上前に本作がブックオフで安値で放置されてあったので、ついつい購入してしまいました。
秋めいてきた今日この頃、このアルバムが似合う季節になってきました。
(夏ではなく、なんとなく爽やかな秋空が合うように感じます)

杉山清貴&オメガトライブの前身のバンドが「きゅうてぃぱんちょす」というバンド。この時代に彼らはヤマハポプコンに出場し、入賞を果たします。メジャーへの道も開かれていたのですが、自身の作品に満足出来ず、悩んでいたところに、後の所属事務所となるトライアングル・プロダクションの藤田社長より、プロの作品(と演奏)を条件にデビューの話が舞い込んできます。
そうです、杉山清貴&オメガトライブとは、プロデュースから楽曲コンセプト、そのサウンドまで、すべてを藤田社長がコントロールしていたバンドだったのです。この当時、洋楽はAORサウンドが一世を風靡していたのですが、この音そのままを林哲司が彼らのためにジャパニーズ・ポップスとして具現化していきます。

本作は彼らのセカンド・アルバム。シングル2曲を含みます。
まずはアルバムトップの①「RIVER'S ISLAND」。
強烈なシンコペーションの16ビートは典型的なAORアレンジですね。ドラム&ベースもTOTOを連想させるプレイです。クレジットはありませんが、これら演奏も(おそらくは)プロのスタジオミュージシャンかと思われます。パラシュートのメンバーあたりがプレイしているのでしょうね。完全に洒落たAORサウンドで、実に心地いいです。

②「ASPHALT LADY」は彼らのセカンドシングルです…。
メロディからして懐かしい80年代サウンド。映像の杉山さん、若い!
この曲、稲垣潤一さんが歌っても違和感ないですね。林哲司さんは両方に楽曲提供していましたから、当たり前といえば当たり前。
ちなみにバンドメンバーも演奏力はなかなかのもの(レコーディングはスタジオミュージシャンでも)。カルロス・トシキ時代の解散まで、ずっとメンバーだったギターの高島氏は、後にビーイングに所属し、多くのアーチストのプロデュースに携わります。またきゅうてぃぱんしょす時代のキーボードは作曲家として著名な千住明氏だったことは有名な話。

本作中、一番のハイライト作品は④「SATURDAY'S GENERATION」でしょう。なぜならこの曲はメンバーの西原氏と杉山さんの共作であると同時に、シカゴのバラードを連想させるAORアレンジなので。
編曲は松下誠。このアレンジはデヴィッド・フォスターのモノマネですね(笑)。でもいいんです。楽曲も素晴らしいし、この曲にはこうしたアレンジがピッタリ。J-POPシーンでここまでAORを模倣しているバンドも少ないでしょうね。

世間的には本作で一番有名な曲は⑤「君のハートはマリンブルー」でしょう。彼らのサードシングルであり、結構ヒットしましたから。でも個人的には前述の①②④の前にこの曲は霞んでしまいます。

B面では⑦「BECAUSE」でしょうか。この曲、ドラム&ベースのリズムパターンがルパート・ホルムズの「Him」そっくり。

杉山さんはこのサウンド・プロダクションに満足出来ず、つまり当たり前ですが、オリジナルを歌いたいという欲求が強く、結局2年余りでこのバンドを脱退することになります。杉山さんはソロになってからも商業的に成功を収めましたね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?