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Chris Hillman「Slippin' Away」(1976)
なんとなく気になる男、クリス・ヒルマン(笑)。
個人的には70年代カントリーロックの中心的人物のひとりであり、カントリー好きにとっては、なんとなく気になる存在なのです。その割には、彼のソロ作品って、日本ではあまり認識されていないような気がします。
クリス・ヒルマンはバーズの創業メンバーとして有名ですが、特に途中で加入したグラム・パーソンズと共にカントリーロックの名盤「ロデオの恋人」の制作に大きく貢献しました。その後、1968年にグラムと共にフライング・ブリトー・ブラザーズを結成するも、短命に終わり、1971年にスティーヴン・スティルスに請われる形でマナサスを結成。そしてまたまた、こちらも長続きはせず(苦笑)。
ただ、実力者には必ず声が掛かるもので、アサイラムの社長デイヴィッド・ゲフィンがスーパーグループを作ろうと画策。J.D.サウザー、クリス・ヒルマン、リッチー・フューレイに声を掛け、1974年にこの3人を核にバンドを結成し、 「Souther Hillman Furay Band」を発表。
バーズ結成からここまで、クリスがミュージシャンとしては非常に濃いキャリアを歩んできていることがよく分かると思います。
ということで、このサウザー・ヒルマン・フューレイ・バンド」も当然の如く短命に終わり(笑)、1976年、クリスはアサイラムからソロデビューアルバムを発表するに至ります。
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彼の経歴をつらつら書きましたが、そのキャリアを反映するように、本作には多くの名立たるミュージシャンが参加しております。
基本的にはマナサスのメンバーを中心としたメンバー構成なんですが、ザ・MG'sやイーグルスのメンバーなんかの名前も見受けられますね。
プロデュースはマナサスのエンジニアでもあったハワード・アルバートとロン・アルバートのアルバート兄弟。10曲中8曲がクリス(一部共作)のオリジナル、1曲がスティーヴン・スティル、1曲が後述するドニー・ダカスの楽曲という構成です。
まずはちょっとソウル風味が効いた②「Slippin' Away」をどうぞ。
イントロのソウルフルな感じはドゥービーの「Minute By Minute」を彷彿させます。クリスってこんな曲も書けるんだとちょっとビックリ。但しその後のアル・パーキンスのスティール・ギター、ハーブ・ペダーセンとティモシー・シュミットのコーラスで「あ、いつものクリス・ヒルマンだ」と分かります。ただギターはスティーヴ・クロッパーだし、リズム隊はリー・スカラー&ラス・カンケル。クリスにしてはかなりソウルフルな1曲です。
そしてかなりイーグルスっぽい④「Take It on the Run」。
ここでの中心人物はスライドギターのドニー・ダカス。ドニーは前年に発表されたスティーヴン・スティルスの 「Stills」での参加で注目を集めた人物。そしてこの後、テリー・キャスの後任としてシカゴに加入することになります。それにしてもジョー・ウォルッシュを彷彿させる豪快なスライドですね。
リズム隊はジム・ゴードン&ジム・フェルダー。ジム・ゴードンが叩くと重い重い。コーラスにはリック・ロバーツが参加。いや~、豪華メンバーの共演です。
バラードもご紹介しておきます。それが⑤「Blue Morning」。
こちらのリズム隊はドナルド・ダック・ダン&ジム・ゴードン。ギターはスティーヴ・クロッパー。
この曲なんかは特にクリスの声質が、グレン・フライのようなイーグルスっぽく聞こえますね。この曲の曲調もどことなくイーグルスっぽい。ドカドカ鳴るジム・ゴードンのドラムも、ドン・ヘンリーっぽい。
フライング・ブリトー時代のグラム・パーソンズとの共作の⑦「Down In The Churchyard」。フライング・ブリトーのカントリーロック調から、大胆にもレゲエ調にアレンジしたもの。乾いた感じ、爽やかなナンバーに仕上げてますね。
アカペラからスタートする⑩「(Take Me In Your) Lifeboat」、
アコギ&バリトン・ヴォーカルにバーニー・レドン、バンジョー&テナー・ヴォーカルにハーブ・ペダーセン。フィドル&ベース・ヴォーカルにバイロン・バーライン、そしてマンドリン&リード・ヴォーカルがクリス。クリスのオリジナルの完全なブルーグラスナンバー。実に楽しそうですよね。クリスの真骨頂が発揮された1曲。
気心知れたメンバーに支えられ、全体的にリラックスしたバラエティに富んだ内容のアルバム。いいですね…。
この後、クリスはもう1枚アルバムを発表し、マッギン・クラーク・ヒルマンを結成。
そういえばクリスはロジャーと気心しれているのか、昨年発表されたクリスとロジャー・マッギン、マーティ・スチュアートが組んだ「Sweetheart Of The Rodeo - 50th Anniversary - Live」のアルバムもめっちゃ良かったです。こちらもいずれご紹介出来ればと思ってます。