Dane Donohue「Dane Donohue」(1978)
今回ご紹介するアルバムは、私が長年愛している大好きなAORの名盤、そして未だに聴き続けている愛聴盤なんです。
1978年発表のデイン・ドナヒュー唯一のアルバム。ジャケットは御覧の通り冴えない男がタバコを吸っているベタなものです。
オハイオ州の農家に生まれたデインは最初はカントリーに興味を持ったものの、ビートルズの影響からそのままバンド活動にのめりこんでいきます。その後、大学進学もあり、バンド活動を断念するも、ミュージシャンの道を諦めきれず、ミュージカル「Jesus Chris Superstar」のオーディションを受け、見事合格。1970年から約2年間、この公演に携わった後、地元オハイオ州に戻り、デモテープの制作に取り掛かります。その後、1975年にCBSと契約を交わし、約3年かけて本作発表に至ります。
ラリー・カールトン、ジェイ・グレイドン、ドン・ヘンリー、スティービー・ニックス、J.Dサウザー等当時のLAオールスターズが勢揃い。プロデュースはテレンス・ボイラン(曲によってはジョン・ボイラン、ジェイ・ワインディング、スティーヴ・ホッジが担当)。聴いて貰えればお分かりの通り、テレンス・ボイランがサウンド作りをしたと思われますし、バックミュージシャンも彼が連れて来たのでしょう。ただそれにしてもデインの作る楽曲が極めていいのです。ちょっと哀愁味のある楽曲、恐らく原曲はフォーキーなものだと思いますが、未だに「いい曲だなあ」と感じます。
まずはアルバムトップの①「Casablanca」。もうイントロのクールなAOR感に引き込まれます。
ちょっとどこか初期スティーリー・ダン風でもありますね。随所に絡んでくるラリー・カールトンのギターも渋くて味があります。ピアノはDavid Getreauなる人物。彼はこの曲の他、5曲でM.Fisherという方と共にともデインと共作しております。恐らく友人であろうと推測しますが、実はこのD.Getreauもいろいろ調べたのですが、このアルバムでしかクレジットを見ませんね。そしてエンディングでのヴィクター・フェルドマンのヴィヴラフォーンのソロ。ちなみにコーラスはドン・ヘンリー、スティーヴィー・ニックス、J.D.サウザー、ティモシー・シュミット。素晴らしい楽曲です。
本作はどの曲も大好きなんですが、特にお気に入りのナンバーが②「Dance With the Stranger」です。
この曲もフォーキーなイントロと、その楽曲の雰囲気にマッチした歌詞から曲の世界に引き込まれます。多分原曲はカントリータッチの楽曲だったんじゃないかなと思いますが、これはテレンス・ボイランやジェイ・ワインディングがうまく料理したんじゃないかなと思われます。ラリーカールトンの粘着質なギターが曲をうまく引き立ててますね。
③「What Am I Supposed To Do」は中期イーグルス的なほろ苦いカントリーロック。
コーラスが非常に心地いい楽曲。それもその筈、このコーラスはドンヘンリー、J.D.サウザーが担当しております。そしてここでのギターはジェイ・グレイドン。ギターソロは一瞬、ラリー・カールトンじゃないかなと思ってしまいますが、よりクリアなトーンで奏でてますね。こちらも短いながらも大好きなギターソロです。
ちょっと渋めのナンバーの④「Woman」は印象的なコーラスが聞ける1曲。
誰か分かりますよね(笑)。スティーヴィー・ニックスです。あまりにも個性的な声なので、コーラスでも目立ちますね。
力強いドラムはスティーヴ・ガッド。ここでのラリー・カールトンのプレイは、①②よりもギターのトーンをナチュラルにしているような気がします。エンディングでのヴィクター・フェルドマンのエレピが心地いい。
ちょっとジャージーなフレーズも飛び出すグルーヴ感ある⑥「Freedom」。
この曲からB面ですが、この曲はご紹介した①~④とはちょっと違ったグルーヴを感じる楽曲。実はグルーヴ感あるリズムを奏でるリズム隊。ドラムはエド・グリーン、ベースはチャック・レイニー!テレンス・ボイラン系のアルバムにこのリズム隊って、ちょっと違和感ありますが、やっぱりグルーヴィーなAORに仕上がってますね。サックスはアーニー・ワッツ。コーラスはトム・ケリー。
最後にご紹介するのは⑧「Whatever Happened」。
かなりフォーキーでアコースティックなAOR。これも堪らなく好きなんですよね。
爽やかなコーラスはトム・ケリー。ここでは本作では珍しくアコギが印象的に使われてますね。ギターのクレジットはスティーヴ・ルカサーになっているのですが、ルークはこんな美しいアコギプレイをするのかな…。ベースはスコット・エドワーズ。これもまた意外なミュージシャンが参加してますね。
それにしてもどんだけ凄いミュージシャンが参加しているんだ!って感じですよね。しかも有名ミュージシャン達が数曲だけ参加…、なんて贅沢な作りなんだと思ってしまいます。しかも楽曲もすべて素晴らしい。全曲通じてフェンダーローズが心地いいですよね。コレ、ジェイ・ワインディングのプレイですが、彼はアレンジャーにもクレジットされてますし、やっぱりキーは彼かなとも感じました。
これほど素晴らしい楽曲・アルバムを残しているにもかかわらず、彼がセカンドアルバムを出したというニュースを聞いたことがないし、ましてや現在彼が何をしているか、全く分からないというのもちょっとミステリアスです。どなたか情報があれば教えて欲しいくらいです。これだけ贅を尽くしたにも関わらず全く売れず、デイン自身が凝りてしまったのでしょうか。
地味なアルバムですが、ちょっとジャージーなAORの名盤なので、機会があれば是非お勧めの1枚です。