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五輪真弓「蒼空-TODAY」(1977)

なぜ五輪真弓がこのnoteに…と思われた方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。
本作は彼女の6枚目のアルバムです。そして米国LAでの録音。私の大好きなラリー・カールトン、リー・リトナー、ハーヴィー・メイソン、ジム・ケルトナー、ウェルトン・フェルダー等々が参加しております。そう、このアルバムはかなりAOR指数の高いアルバムなんです。

最近、よっしーさんが彼女のファーストを採り上げておられて、そういえばこの「蒼空」をいずれ記事にしなければ…と思っていたことを思い出しました。

五輪真弓はデビュー当時から海外ミュージシャンとのコラボを実現させるほどの天才シンガーとして売り出されました。
「恋人よ」のイメージが強烈過ぎて、知らない方が多すぎるので、ここで彼女の凄い経歴を披露しておくと、1972年のデビューアルバムでいきなり米国録音を敢行、しかもキャロル・キングやチャールズ・ラーキーが参加と破格の扱い。セカンド、サードも米国録音。特にサードはザ・セクションに加えてラリー・カールトンが初参加。4枚目では自分が購入した八王子の山奥の物件をスタジオにして、そこで収録(細野晴臣や鈴木茂が参加)。このアルバムを気に入ったフランスのCBSが五輪真弓をフランスでデビューさせるために、5枚目はフランス録音!そしてこの6枚目で再び渡米して、一流ミュージシャンをバックに70年代五輪真弓サウンドを総括するような傑作アルバムを発表します。

本作は、アレンジャーとして著名なデヴィッド・キャンベルがプロデュースとアレンジを務めた関係で、かなり洋楽志向なアルバムに仕上がってます。五輪真弓自身、インタビューで「すべてをデヴィッドに任せ、自分は歌うだけ」と語っているように、ミュージシャンのセレクトも恐らくデヴィッドが行ったものと思われます。またラリー・カールトンは、彼女とのレコ―ディングは楽しかったと語っており、335(ギター)をプレゼントしたなんてエピソードも残っております(あのラリー・カールトンは五輪真弓のバックバンドギタリストとして来日されたこともありましたね)。

そのラリー・カールトン(と思しき)ギターが聞ける素晴らしい楽曲がオープニングの①「東京」。
最近少しだけ秋めいてきましたが、そんな爽やかな秋空の下、聴いてみたい1曲。海外の著名なミュージシャンとの交流、米国やフランスでのレコ―ディングといったグローバルな活動をデビュー時から行っていた彼女が、しばらく見ていなかった日本=東京の街並みに思いを馳せて作った楽曲です。イントロからグルーヴィーなベース&スウィートなラリーのギター。ハーヴィー・メイソンの抑え気味なドラムもいいですね。これら超一流のミュージシャンの演奏に負けず劣らず五輪真弓の伸びやかななヴォーカルが堪能できる名曲です。

暗いイメージのある五輪真弓ですが、本作は比較的明るい楽曲が多いのも特徴的。2曲目はタイトルからして「陽」的な②「ミスター・ハピネス」。こちらもウェルトン・フェルダーのファンキーなベースとリー・リトナーのギターが素晴らしい。もうイントロのこのアンサンブルだけでも聴く価値ありです。明るく五輪真弓が歌い飛ばしてます。そしてここでの(多分)リーのギターソロも絶品。洒落たAORですね。

初期フォーキーな彼女をそのまま継承しているような③「角砂糖」。微妙な恋人との関係を角砂糖を通して描写している歌詞が味わい深いです。デヴィッド・キャンベルのオーケストラアレンジも素晴らしく、より一層に歌詞の世界観に引き込まれてしまいます。

本作中一番ジャージーな⑤「星のきらめく夜は」。
ウッドベースはボブ・マグナソン。タイトル通り、月明かりの夜にじっくり聴いていたい1曲。ピアノとベースのみをバックに淡々と歌ってますが、最後の方でシンセが加わってきて盛り上がっていきます。こちらもデヴィッド・キャンベルのアレンジが冴え渡っております。(アップした音源、最後の最後で音が切れているようです)

今回、皆様に一番聴いて欲しかった楽曲が⑨「ゲーム」。五輪真弓はこんな楽曲もやっていたのか…と思われるのではないでしょうか。超ファンク・ナンバーのこの曲、ラリー・カールトンがギターを弾きまくっております。そしてアップした驚愕の映像、こんな映像があったんですね。恐らくこちらは1977年秋ごろの映像と思われます(ミュージックフェア出演時のものらしい)。セカンド収録の「煙草のけむり」(これも秀逸)の次、1分20秒過ぎからが「ゲーム」です。バックのミュージシャン、分かりましたか?ラリー・カールトンの右は(恐らく)マイク・ポーカロ(B)、キーボードはラリーの盟友のグレッグ・マティソン、ドラムはウィリー・オーネラス。凄いカルテットですね。ラリーが実に楽しそう。間奏でのギターソロも凄いですが、エンディングでは我慢出来ずに立ち上がってソロを弾きまくってます。そして怪しげな容姿の五輪真弓。迫力あるヴォーカル、決してバックの演奏に負けておりません。

こんな素晴らしいアルバムですが、商業的なヒットには結びつきませんでした。彼女にとって、それは結構大きなダメージだったらしく、大衆音楽を大いに意識されたようです。そして発表されたのが歌謡曲志向の「さよならだけは言わないで」。これが見事にヒットを記録し、1980年の「恋人よ」へのビッグヒットに繋がっていきます。そういった意味ではこの「蒼空」が、初期集大成のアルバムと言えるかもしれませんね。

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