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Dane Donohue「L.A.Rainbow」(2024)

ついにデイン・ドナヒューの新作が46年振りに発表されました。
まさかデインの新作が聴けるとは…、しかもそのサウンドはあの往年の「Dane Donohue」そのもの。嬉しい限りです。

ところでどれだけの方がデイン・ドナヒューをご存じでしょうか。
デインの味わい深さは、ちょっとJ.D.サウザーに通じるものがあります。
デインは1978年に「Dane Donohue」でレコードデビューした方。そのサウンドは哀愁漂うAORサウンドで、後に日本で(少しだけ)話題になったアーチストです。ただ、当時は全く商業的に成功を収めることが出来ず、結局デインは故郷のオハイオに戻ったようです。地道に音楽活動は続けていたようですが、(レココレの記事によると)2016年に詐欺事件の片棒を担がされ、4年間収監されてしまったとのこと。
服役後、音楽活動を再開。折しも世界的にヨットロックブームが到来しており、デインはペイジ99のジョン・ニクソンのポッドキャスト・プログラムにゲスト出演。それをキッカケに、ジョンとの交流が深まり、昨年ペイジ99の「Sunrise On The Water」のリワークにヴォーカルとして参加。デインはジョンなら自身の作品のプロデュースを任せられると確信し、本作発表に至ったもの。

ちなみに私自身はペイジ99の存在も知らなかったので、まだまだアンテナが低いと猛省(ペイジ99も実際聴くと、かなりいいんですよね)。

本作のレコ―ディングメンバーは恐らくペイジ99のメンバーが中心と思いますが、ノルウェーが誇るAORの旗手、オーレ・ブールドもギターとキーボードで参加しております。そのオーレのリードギターが光る①「High Life Dream」。ジェイ・グレイドンばりのギターソロを聴かせてくれます。
イントロから46年振りの新譜発表を祝うような厳かなオーケストラアレンジ。楽曲自体は80年代風なちょっとポップなAORという感じですね。ああ~、デインの歌声、変わっておりません。

恐らく一番ファーストに近いサウンドがアルバムタイトルトラックの⑥「L.A.Rainbow」じゃないでしょうか。
イントロの渋いギターと泣かせるメロディ、哀愁味を帯びたデインのヴォーカル…、ファーストの世界観そのもの。サビでのコーラス、適度にAORな風が心地いい。
そしてこの曲の聴き所はもう少し後、エンディングにあります。このスリリングな展開はファースト収録の「Casablanca」そのもの。多分デインもジョンもその点、多少は意識されていたんじゃないかなあと感じました。
本作では①⑥が必聴な楽曲ですね…。
(SpotifyのURLを貼っておきますが、うまく聴けますでしょうか?)

かなりクールな②「Lonely Day In Paradise」。
微妙にシャッフルしているジャージーなAOR。現代風なサウンドのなかにも、どこかノスタルジックなグルーヴを感じさせます。スティーリー・ダンを分かりやすくしたようなサウンドといえばいいでしょうか。こういうサウンドも大好きです。

こちらもファーストに近いサウンドの⑦「Own This Heartache」。
ちょっとフォーキーであり、カントリー風味が効いてます。スティール・ギターが隠し味になってますね。こちらも日本人好みの、ちょっと哀愁漂うメロディが美しいですね。

9曲目はボートラなので、本作のエンディングはジャージーな⑧「Let It Go」。エンディングに相応しい味わい深いバラードです。トランペットのソロ、そしてジャージーなギターが美しい。各楽器が出しゃばらず、デインの歌声を引き出すような演奏で、素晴らしいアレンジです。

YouTubeには今のデインの演奏映像はない…と思っていたら、ちょっと変わった映像がありました。
ファーストに収録されていたバラード「Where Will You Go」を、デインが民間のオーケストラとコラボしているものです。恐らくこの歌っている方が、あのデイン・ドナヒューだと理解している閲覧者は極めて少ないものと思われます(視聴回数が低いので)。でも意外といいと思いませんか?この曲の持つ味わい深さがよく理解出来ます。

デインはこうした地道な活動を、恐らく地元でされているんでしょうね。ちょっと嬉しくなります。


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