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Emotions「Rejoice」(1977)
心地よい日曜日の午後、こんな一枚は如何でしょう。
エモーションズは「Best of My Love」の強烈なイメージがあるためか、一発屋のイメージが付きまとっているようです。正直私もその1曲しか知らず、このアルバムにも大きな期待はしていなかったのですが、実際に聴いてみるとかなりいいですね。レオン・ウェアやフィニス・ヘンダーソン、スティーヴィー・ウッズ等に代表されるアーバン・ソウルとまではいかないまでも、かなりAOR的要素も漂う好盤です。
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エモーションズはハッチソン3姉妹からなるコーラスグループで、もともとはメンフィス・ソウルの名門、スタックス・ヴォルト・レーベルより1969年にデビューを果たします。しかし商業的な成功は納めることが出来ずに70年代前半を過ごします。
そんなときに助け船を出したのが、EW&Fのモーリス・ホワイトでした。1976年にモーリスの下で制作されたのがアルバム「Flowers」。そしてその勢いに乗って本作が制作されたのでした。
参加メンバーはモーリスのほか、Al Mckay(Guitar)、Fred White(Drums)、Verdine White(Bass)等が参加。アレンジはTom Tom 84。EW&Fに通じるサウンドというのはよく理解出来ますね。
エモーションズといえば①「Best of My Love」でしょう。アル・マッケイとモーリスの共作。後にEW&Fはデヴィッド・フォスター等と共作した「September」が大ヒットしましたが、その曲調はどことなく「Best of My Love」に似ています。ディスコソウルがAORに近づいた瞬間です。
タイトなリズム隊にトム・トム・84の軽快なホーンが素晴らしい。今聴いても全く色褪せてない名曲ですね。
②「A Feeling Is」はメンバーのシーラ作曲のもの。
これがまたシャッフル系ミディアムバラードで実にいい。バックのしっかりタメのある演奏、エモーションズの織り成すようなコーラス。しっとりくるホーン。この時代ならではのアレンジかもしれません。
①②で満足していたら③「A Long Way to Go」はいきなりフィリーソウル系のイントロが・・・。
エモーションズってディスコソウルという先入観があったのですが、それは違いますね。ギャンブル・アンド・ハフ辺りの楽曲かと思ったらバリー・マンとシンシア・ウェルの楽曲でした。これも私の好みですね。
なんともヴォーカルが愛らしい⑤「Love's What's Happenin'」もメンバーのシーラ作曲。
アレンジからしてEW&F的な楽曲ですね。サビのスリリングな展開はなかなかのもの。このアルバムのなかでも秀逸な1曲です。
アルバム中一番メロウな⑦「Don't Ask My Neighbors」も人気の1曲。この曲は①と同様にシングルカットされR&Bチャートで最高7位を記録してます。
作者はSkip Scarborough。EW&Fの「Can't Hide Love」の作曲者として有名な方で、後にアニタ・ベイカーの「Giving You The Best That I Got」で作曲者としてグラミー賞を受賞します。ただ残念ながら2003年に58歳の若さで亡くなられているようです。
メロウですね~。やはりこのアルバム、AORの香りが漂います。アップテンポな曲に隠されがちですが、後のアーバンソウルの原型を成すものかもしれません。
尚、モーリスとのコラボはこの後発表される「Sunbeam」を含めて「3部作」と称されているようです。80年代に入るとEW&Fの人気にも陰りが出始め、それとともにエモーションズも商業的な人気は下降線を辿っていくこととなります。