Jim Capaldi「Oh How We Danced」(1972)
気付けばもう3月も終わり…。今期もあっという間でした。油断していると歳のせいか(笑)、期の変わり目に気付かないくらいに時が流れてしまっているので、意図的に節目を感じないと気持ちの入れ替えが出来ませんね(苦笑)。
さて、今回のポストは前回のFreeからの流れを汲むものです。その意図に気付いた方はなかなかのマニアな方…。
今回の主役のジム・キャパルディですが、80年代洋楽をリアルタイムに過ごした私としては、1983年にスティーヴ・ウィンウッドのシンセが素敵だった「That’s Love」のヒットで有名だった方…という印象が強いのですが、もちろん彼はトラフィックのドラマーだった人物。
デイヴ・メイスンが抜けて、スティーヴ・ウィンウッド、クリス・ウッド、ジム・キャパルディの3人体制となったトラフィックですが、1971年に発表した彼等の5枚目のアルバム「The Low Spark of High Heeled Boys」からは、ジムはドラムからヴォーカル、曲作りに専念します(恐らくそれが本作制作の発端となったと思われます)。そしてこの後のツアーから、彼等は米国アラバマ州のマッスル・ショールズのスタジオメンバーとライヴ活動を共にするようになります。そしてこのツアー後、スティーヴが体調不良で静養している間、ジムは自身初のソロアルバムである本作を制作します。
前置きが長くなりましたが、本作参加のミュージシャンは、前述のマッスル・ショールズのメンバーにトラフィック陣、そしてあのポール・コゾフ!
なぜかポールが5曲に参加しているんですよね(ということでFree繋がりなんです)。
まずはファーストシングルの①「Eve」、これがいいんですよ~。
最初から引き込まれる美メロディ…、もちろんジムの自作曲。このヴォーカルは一瞬、同じジムのジム・クロウチを彷彿させる朴訥としたもの。
バックはマッスル・ショールズのジミー・ジョンソン(G)、デヴィッド・フッド(B)、バリー・ベケット(Key)、ロジャー・ホーキンス(Ds)…、そしてオルガンにはスティーヴ・ウィンウッドという布陣。マッスル・ショールズなスワンプな演奏にキャッチーなメロディ、いいですよね。
ちょっとソウルフルなバラードの②「Big Thirst」。
この曲はジムとデイヴ・メイスンの共作。ここではマッスル・ショールズ+ポール・コゾフがギター、デイヴ・メイスンがハーモニカで参加。女性バックコーラスはサニー・レスリー。マッスル・ショールズのコクのある演奏もいいですが、ここではやっぱりSSWとしてのジムの力量が感じられます。素敵な楽曲ですよね。
こってりしたR&Bナンバーの③「Love Is All You Can Try」。
完全にマッスル・ショールズ・サウンドですね。きっとこうしたサウンドをジムはやりたかったんでしょうね。UKスワンプというよりも、本場のスワンプそのものという感じです。
⑥「Open Your Heart」は、私の一番のお気に入りのナンバーです。
印象的なピアノはジム自身のプレイ。この曲は当時のトラフィックのメンバーがバックアップしてます。スティーヴはオルガンのみならずコーラスでも参加。他メンバーはクリス・ウッド(Sax)、リック・グレッチ(B)、ジム・ゴードン(Ds)、リーバップ・クワク・バー(Per)。
エンディングにかけてのコーラスと手拍子。ジムもスティーヴも実にソウルフル、そしてこれに絡むリーバップ・クワク・バーのパーカッションが実に熱い。自然と体が動いてしまうようなグルーヴィーな演奏です。
ポール・コゾフのギターが冴える⑦「How Much Can a Man Really Take?」。
この曲のバックはマッスル・ショールズではありません。ここでの聴き所は何といってもポール・コゾフのギターとクリス・ウッドのフルートの絡み。このフルートが不思議な雰囲気を醸し出してますね。そしてジムのヴォーカルはかなりソウルフル…。
エンディングにかけてのスリリングな演奏…、コゾフらしいフレージングのギターソロ!!こういう曲こそUKスワンプという気がします。
アルバム・タイトル・トラックの⑧「Oh How We Danced」はスタンダードナンバーのカバーです。
原曲は1946年にアル・ジョンソンがヒットさせた「Anniversary Song」という楽曲。これを原曲とは全く違う解釈で、実にスリリングにカバーしてます。これがカッコいいんですよね。途中のギターソロはポール・コゾフ。これもまた実にグルーヴィーな演奏です。
本作発表後、スティーヴの回復もあり、トラフィックは再始動。ここでのマッスル・ショールズとの共演の発展形として、同スタジオメンバーのロジャー・ホーキンスとデヴィッド・フッドのリズム隊と組み、トラフィックは1973年2月に「Shoot Out at the Fantasy Factory」を発表します。こちらも機会あればじっくり聴いてみたいと思ってます。