Stephen Stills「Stephen Stills」(1970)
CSN&Yのメンバーのソロ作では最もよく聴くのがスティーヴン・スティルスです。その彼のファーストソロアルバム。1曲目の「Love The One You're With」があまりに素晴らしく、「このアルバムはこれを聴けばいい」と思い込んでいましたが、もちろんそれ以外の曲も素晴らしいですね。
当時のピープルズ・ツリーが楽しめる1枚。参加ミュージシャンはエリック・クラプトンにジミ・ヘンドリックス、リンゴ・スター、ダラス・テイラー、ブッカー・T・ジョーンズ。デヴィッド・クロスビーにグラハム・ナッシュ、ジョン・セバスチャン、プリシラ・ジョーンズ、リタ・クーリッジ等のコーラス隊。
このアルバムのベーストラックは1970年前半にロンドンで収録され、同年7月、CSN&Yの「Deja Vu」ツアーが終了すると共に、コーラス隊とLAで最終的にアルバムを仕上げました。
ところが9月にスティーヴンにとってはショッキングな訃報が届きます。ジミ・ヘンドリックスの訃報です・・・。そしてのその4日後、この意味不明なキリンと写ったジャケットを撮ります。スティーヴンとジミは音楽性は違えど、お互い似たもの同士と思っていたのかもしれません。ですからこのジャケットのスティーヴン、当然ながら悲しみを相当引きずっているものと想像されます。
そのジミが参加した楽曲が④「Old Times Good Times」。
ちょっとR&B的なアグレッシヴなロックです。中盤からスティーヴンのヴォーカルにジミのギターが絡み付いてきます。そしてオルガンがフューチャーされてきますが、このオルガンはスティーヴン自身によるもの。
ジミのギターソロも晩年の創造性豊かなプレイが聴けます。エンディングでのベース&パーカッションが非常にスリリングで、手に汗握る思いですね。
さて先にジミが参加した楽曲をご紹介しましたが、このアルバム、やはり冒頭の①「Love the One You're With」が圧巻です。厚みのあるアコギと分厚いコーラス隊。ドラムレス、かつコード進行も単純な楽曲なのに圧倒的な存在感。スゴイ楽曲です。
最近BOSEのスピーカー(といっても卓上型の小さいやつ)で本作を聴いてよく分かったのですが、後ろでスティール・ドラムがガンガンに鳴っていたんですね。このふくよかな感じはこのスティール・ドラムの効果かもしれません。スティーヴン自身のプレイであり、彼の非凡な才能とセンスを感じさせます。
ついでに1974年のCSN&Yで演奏している「Love the One You're With」もアップしておきます。これがまためっちゃカッコいいんですよ。
ニール・ヤングがいないなあと思ったら、やたらと目立つハモンドオルガンを弾いておりました(笑)。
クラプトンが参加しているのは⑤「Go Back Home」。
クラプトンが参加するに相応しいブルージーなナンバーです。ここではスティーヴンも熱のこもったギターソロを披露しています。クラプトンも熱いプレイですね。楽曲もリズムが倍テンポになっていったり、かっこいいナンバーです。
⑧「Black Queen」は以前から演奏されていたナンバー。スティーヴンのアコースティックギターのプレイが堪能出来ます。彼のギタープレイは非常に心に迫ってくるものを感じますね。
ここでの演奏は彼のソロプレイが収録されてますが、YouTubeにはバンド演奏のものがアップされてました。
同じ楽曲とは思えないアレンジです(こっちが最初のヴァージョン??)。
⑨「Cherokee」もいいですね~。適度にサイケ感覚もあったりして。イントロから絡んでくるフルートが何ともいい味を醸し出してます。かっこいいプラス、ワウワウの利いたギター、渋いサックス。どれも当時の斬新なロック感覚を感じさせます。
ちなみにこの曲、変拍子が用いられてます。何度も申し上げますが、スティーヴンのセンスは冴え亘っていますね~。
リンゴ・スターがドラムで参加している⑩「We Are Not Helpless」。組曲風なところが当時の楽曲らしい。エンディングに相応しい。リズムチェンジしてアップテンポになるところなんか、かっこいいです。
こうして通して聴いてみると、スティーヴン・スティルス・ワールド全開で、じっくり堪能できる1枚です。スティーヴンのヴォーカルがもっとソウルフルだと、かなりパワフルなんですけどね。
スティーヴンはかなり変人との話も聞きますが、そんな人間がモンキーズに加入していたら、一体どうなっていたのでしょう。違和感ありありだと思うのですが・・・(笑)。