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Beach Boys「Sunflower」(1970)

1970年というと、もう既にビーチボーイズは過去のバンドであって、ブライアン・ウィルソンも精神的に病んでしまって、一体どうなってしまうのか…という状態だったのではないでしょうか。そんな時代における本作ですが、ここではブライアンの弟、デニスや、ブルース・ジョンストンがソングライティング面で大いに貢献しております。

デニスはかなりソウルフルに、ブルースはポップスに、その方向性は違うのですが、本作ではビーチボーイズの今後の可能性を大いに感じさせる内容になっております。

リプリーズ移籍後の初のアルバム。前作「20/20」は1969年発表ですから、70年代最初の1枚というわけです。本作はとにかく①~③があまりにも素晴らしいのです。ビーチボーイズの数あるアルバムの中でも、本作の最初3曲の素晴らしさは群を抜くかもしれません。

1曲目のデニス作①「Slip on Through」から従来のビーチボーイズとは違うサウンド。イントロからやたらとソウルフル。サビのコーラスはビーチボーイズらしいですが、まさに新しいビーチボーイズ。デニスのリードヴォーカルもなかなかカッコいい。曲調はソウルフルなんですが、コーラスや楽器のアレンジがかなり凝っている印象。このアルバムが只者ではない予感…。

ブライアンの創造性はまだまだ劣っていないことがよく分かる②「This Whole World」。リードヴォーカルはカール・ウィルソン。極上のコーラスとカールのヴォーカルが素晴らしい。この曲、僅か1分56秒。なんでこんなに短いんだろう。まだまだこの夢のような至福の時間が続けばいいのに…と思ってしまうくらいの名曲。ブライアンもお気に入りナンバーなのか、1995年のソロアルバム「I Just Wasn't Made for These Times」でセルフカバーしておりました。

そしてもう1曲のブライアンが書いた名曲が③「Add Some Music to Your Day」。ブライアン、マイク・ラブ、そしてブライアンの友人だったジョー・ノットの3人の共作。曲自体はどことなく、往年のフォークミュージック、ママス&パパスがやりそうな曲。それをビーチボーイズの素晴らし過ぎるコーラスが曲を優しく包み込むように奏でられます。山下達郎さんがアマチュア時代に制作したアルバムのタイトルも「Add Some Music to Your Day」でしたね。
「Sunflower」は基本的には演奏はセッションミュージシャンが演奏しておりますが、この曲は6人で演奏しております。そしてリードヴォーカルはなんとマイク・ラヴ→ブルース・ジョンストン→デニス・ウィルソン→ブライアン・ウィルソン→アル・ジャーディン→カール・ウィルソンと歌い継がれております。ビーチボーイズとしても自信作だったんでしょうね。私も大好きな1曲です。

本作ではブルース・ジョンストンが素晴らしい2曲を楽曲提供してますが、その内の1曲が⑤「Deirdre」です。ブルースとブライアンの共作ですが、完全にブルースの世界ですね。第一線級のポップスかと思います。ホーンが効果的に使われてますね。ブルースも自身のソロアルバムでカバーしておりました。ここではベースはジョー・オズボーン、ドラムはジョン・ゲラン、ピアノはラリー・ネクテル。

そしてもう1曲のブルースの作品が⑦「Tears in the Morning」。
こちらはブルース単独作品。途中で聞こえるエレクトリックハープシコードもブルースの演奏です。イントロからエンディングまで、この曲も結構凝ってますね。恐らくアレンジもブルースが中心になって練られていったのではないでしょうか。うまく撥ねるようなワルツですが、ここでのドラムも結構好きです。こちらはハル・ブレインの仕事ですね。

デニスが書いた名曲もご紹介しておきます。それが⑨「Forever」。
デニスってこんな曲も書けるのかあ…とビックリしてしまいます。曲調はブライアンの作風にそっくり。恐らくここではブライアンがアレンジに相当協力したと思われます。この曲でもそうですが、ビーチボーイズってどんな曲でもコーラスが素晴らしいですよね。特にここでは野生児のデニスを、ブライアンとカール、マイクが優しくサポートしております(この曲ではアルは不参加のようです)。

どうでしたか?素晴らしい楽曲たちですよね。
ビーチボーイズの70年代最初の1枚は、渾身の1枚だったのですが、商業的には全く売れず、このアルバムの評価は後々高くなっていくのでした。


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